サイファ ④
リューシャは決勝トーナメントに進んだ。
ここからは、8グループの勝者たちが一対一で戦う形式である。
一回戦、リューシャは第8グループの勝者と戦う。
相手はとても小さな老人で、名をカイデといった。
あまりにもか弱く見え、思いっきり戦うのが申し訳なく感じられた。
しかし、これでも激戦を制してここに立っているはずであり、油断はできない。
「はじめ!」
号令とともに、二人は相対する。
相手は線の細い老人。ならば間違いなく力ではなく技で勝ち上がってきているはずだ。
であるなら、迂闊に飛び込むのは愚策である。
昔、父に言われたことがある。
「小さな力でも強大なものを倒すことができる。コツは相手の力を利用することだ。」と。
サイファは相手の体勢を崩すところが肝だ。
動けば技に絡みとられる。
二人はジリジリと睨み合いながら、微動だにしない。
歓声に沸いていた観客たちも、二人の様子に静まり返る。
どれくらいの時間が過ぎただろうか。
老人は無表情で構えたまま動かない。
「いい加減動きやがれ!やる気あんのか!」
痺れを切らした観客の一人が叫び、手に持っていたゴミをコロシアムに投げ入れる。
リューシャの視線がチラリとそちらに逸れた一瞬、カイデは動いた。
「な、消えた!?」
リューシャが視線を戻すと、いるはずのカイデが消えている。
ドスっという腰への衝撃とともに、リューシャの左腕が掴まれ、引っ張られる。
完全に背負い投げの形が決まりかけていた。
目を逸らした一瞬の間にリューシャの死角に入られ、投げ技をかけていたのだ。
まずい!
リューシャは咄嗟に体を捻り、腰をずらすことで回避する。
カイデは背負い投げが回避されたと見るや、すぐに体勢を切り替える。
今度は、掴んだままのリューシャの腕を捻り上げ、体勢を崩しにかかる。
させないぞ!
リューシャは腕を掴んでいるカイデの手を取り、腰をいれて投げ返す体勢を取る。
カイデは即座に手を離し、一度距離をとった。
しかし、リューシャはそこまで読んでいたとばかりに距離を詰め、カイデの胸に張り手を一発叩き込んだ。
カイデは軽々しく宙を舞い、尻もちをつく。
「いてて、これは一本取られたわい。」
一気に歓声が湧く。
リューシャは天に向かって拳を突き上げ、勝利を示した。
動くまでは長かったが、動いてからは一瞬だった。
「いい動きじゃった。おぬし、意外と力押しではないんじゃな。」
「うちの師匠、意外と技巧派だったんで。」
リューシャはニカっと笑い、老人と握手する。
そして、リューシャの師匠、父親のことを想う。
カイデは尻をさすりながら、とぼとぼと退場して行った。
リューシャは二回戦、準決勝に勝ち進む。
準決勝の相手は、トルネルという不気味な男だ。
控室に帰ると、ブーイとヌンガロが待っていた。
「兄貴!探したんすよ!」
ブーイが手を振って呼びかける。
「兄貴、サクサク先に進んじゃうんすから。準決勝進出おめでとうございます!」
ヌンガロも話しかけてくる。
「ありがとう。ここまで来るとなかなか強いね。」
「そうっすか?圧勝に見えましたけど?」
「そう見えたか?」
「ええ、でも次はやばいっす。対戦した奴らが何人も治療所送りになってて。」
「多分奴の爪が怪しいって話っす。何か毒とか塗ってんじゃないかって。」
「それってルール違反じゃないのか?」
リューシャの問いに、二人は押し黙る。
「おいおい、この競技そのあたりのルールガバガバじゃないか!」
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