街のはみ出し者たち ⑤
チキばあは細い目をさらに細くし、とうとうと語り始めた。
「神々は1万2千年の眠りから覚め、善と悪に分かれて戦い始めた。神々の戦いに巻き込まれた古代人類は、なすすべもなく文明を破壊されてしまった。それを見て不憫に思った善神は、その眷属を使わし人間を保護したと言われておる。」
この辺りの人たちが信じている、いわゆる「千神千魔譚」と言われる神話だ。
ふぁ〜とひと息ゆっくり吐き出し、またふぁ〜とゆっくり吸い込み、チキばあは続きを話し始める。
「その眷属たちのなかに、火のように紅く燃え上がるタテガミを蓄えた、『アルスナ』という名を持つ大猿がいた。アルスナは戦乱のなか、パピオという名の女を救い出し、保護した。そしてパピオとアルスナとの間に5人の男の子と一人の女の子が生まれた。女の子はゲラダと名付けられ、バフ色の髪の毛を持ち、胸には赤い斑紋を持っていた。」
その通りだ。そんなアルスナの姿にあやかって、ゲラダは火を崇めている。
眠たくなるような神話の話に、マルカリスはすでにうとうとし始めている。
そろそろ終わった頃だろうか?
一瞬沈黙が流れ、リューシャは期待する。
だが期待もむなしく、チキばあはまた話し始める。
「6人の子供たちは草原に散らばり、アルスナの寵愛は誰の元にあるのか、それぞれ勢力を作り争い始めた。争いは終わることなく、子孫のそのまた子孫まで続いている。そのうち、三つの民族は消えてしまい、現在に至る。それがお主らゲラダの物語よな?」
「はい、そうです。それで、僕が聞きたいのは魔法石を加工する魔法鍛治師のことなんですが。」
「魔法鍛治師…それは魔法の力で魔力の宿った素材を加工し、より強いアイテムを生み出す特殊な技能を持つ者。その技能は秘伝の技として一子相伝、限られたものにのみ受け継がれている。聞いたことがある。北の湖畔近くに小さな隠れ里があると。そこに魔法鍛治師の一族が住んでいるとも。」
「ほ、本当ですか!?」
リューシャは驚いた。まさか本当に情報がえられるとは。
「うむ。あくまで噂ではあるのじゃが。行くというなら止めはせんよ。若者なら無駄であっても旅をせねばな。わしの若い頃は外の世界を見ようとそれは何度も旅に出ては…」
チキばあが関係のない昔話をし始めたので、リューシャは聞いているフリだけしておく。
北の湖畔、そんな場所の話し、リューシャははじめて聞いた。
サミもマルカリスも、知らないというふうに首を振る。
チキばあの話しがひと段落したので、リューシャは質問を投げかける。
「北の湖畔というのはどこにあるんですか?行く方法はありますか?」
「もちろん知っているとも。とても遠いところさ。徒歩でひと月、馬でも10日以上はかかるじゃろうのう。もっと早く行く方法もあるが、タイミング次第じゃ。これはかなりスリリングでオススメじゃあ!若い頃を思い出すのぉ〜あれは、もう風になった気分じゃった。」
「それは一体?」
「うむ。それは、カニじゃ。」
「か、カニですか?」
「車輪ワタリガニ。同じところを往復している大型のカニじゃ。その背中はヒトが何人も乗れるほど広く、平らじゃ。ひと月で一往復するから、月に二度この辺りを通る。北の湖畔に行くなら満月から四日後くらいの日に通るやつにのるとええの。1日で北の湖畔まで運んでくれるわい。」
それはめちゃくちゃ便利だな。
半信半疑だったが、チキばあからはかなり貴重な情報を得られた。
リューシャはチキばあにお礼を言い、その場を離れた。
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