街のはみ出し者たち ③
リューシャが機嫌よく食事を楽しんでいると、奥のテーブルに座った大男が目についた。
大男は3人組のうちのひとりで、かなり粗野な見た目をしていた。
リューシャがその男を気になったのは、キョロキョロと周囲を見渡すその仕草が妙に思ったからだ。
男はその次の瞬間、自分の髪の毛を数本抜きほとんど食べ終わった自分の皿に放り込んだ。
いったいどういうことだ?リューシャは疑問に思う。
だがその行動の意図はすぐに分かった。
男は店員を呼び、怒鳴りつけ始めた。
それほど広いわけではない店内である。男の怒声は店内に響き渡る。
「おいおい、いったいどういうことだ!?ああ?料理の中にゴミが入ってるじゃねえか。こんなゴミを俺に食わせようってのか、この店は?」
「も、申し訳ございません!」
店員は勢いに押され、平謝りである。
「否を認めるんだな、だが俺はそんな謝罪じゃ納得できねえんだよ!こんなゴミで金を取ろうってのか?そのへんどうかって聞いてんだよ!」
ドン!と男は椅子を蹴りつける。
店員はすくみ上がり、なおも謝罪を続ける。
「謝る必要なんてないですよ。」
リューシャは思わず立ち上がり、店員に声をかける。
男の横暴な態度が、あまりにも醜かったからだ。
「ああ?おめえ誰だ?関係ねーならすっこんでろよ。」
男がリューシャの方を向き、凄んでくる。
「せっかく楽しく料理を味わっていたら、店内にゴミが入ってきたので文句の一つも言いたくなってさ。」
リューシャにとってはじめての料理屋、素晴らしい味に感動していたのに、この男の無礼に全てをぶち壊された気分だ。
皮肉の一つも言いたくなるだろう。
「ああ?どういう意味だ?」
男はリューシャをにらみつける。
「ちょ、リューシャさん、落ち着いてください。あいつ、この辺じゃ有名なワルですよ!」
ブーイがリューシャをたしなめるように、小声で教えてくる。
「あいつがどんな奴だとか、関係ない。それに、ワルってことは他でもこんなことやってるんだろ?余計許せるもんか。」
リューシャは男を指差して、男に言い放つ。
「あんた、自分の髪の毛を自分で料理に入れてたじゃないか。僕は見てたよ。」
男は大きく目を見開き、怒りに顔を真っ赤にしている。
「てめえテキトーなこと行ってんじゃねえぞこらぁ!」
男は叫び、リューシャに殴りかかってきた。
リューシャと男の体格差は大きく、喧嘩になったら勝負は明白だと、誰もが思った。
しかし、リューシャは男の攻撃をひらりとかわす。
「てんめえ!」
「店の人に迷惑だ、暴れるのはやめないか?代金を払っておとなしく帰るんだ。」
「ふざけるな、ぼけ!」
男は何度もリューシャに殴りかかってくる。
しかし、男の大振りな攻撃はリューシャにかすりもしない。
リューシャは懐からシャクを取り出し、小さく魔力を込める。
棒の先から短めの刃が伸び、短刀になる。
リューシャは男の攻撃を避けながら、隙を見て一気に距離を詰める。
そして、シャクに創り出した魔法の刃を男の首筋にあてがう。
男は、一気に死の淵に立たされた恐怖で体を硬直させる。
一瞬にして勝負が決した。
実力差は明らかだった。
草原で命のやりとりをし、旅を続けてきたリューシャに、街のちょっとしたワルが相手になるはずがなかったのだ。
「暴れるなって言ってるだろ。さっさと金置いて出て行けよ。」
リューシャは男の耳元で言う。
男の膝はガクガクと震え、今にも倒れ込みそうだ。
男は小さく頷き、金の入った袋をテーブルに置く。
リューシャはシャクを男から離し、刃を引っ込める。
「お、覚えてやがれ!」
男とその仲間たちは、バツが悪そうに店から出て行った。
「やれやれ、せっかくの美味しいご飯が冷めてしまうじゃないか。」
リューシャは席に戻る。
「リューシャくん、すごい!かっこよかったよ!」
サミが笑顔で迎えてくれる。
この笑顔、癒やしだ。
「やっぱり兄貴ってやべーな」
ブーイがため息混じりに言う。
「だなだな。」
ヌンガロも心底畏れ入ったと言うふうに頷いている。
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