街のはみ出し者たち ①
11階層に降り立つ。
そこは、屋台が立ち並び、多くの人でにぎわっている。
屋台は11階層の外周部分に沿って並んでいるようだ。
屋台の商売人は皆威勢よく声を上げ、食べ物やおもちゃなどを盛んに売ろうとしている。
屋台を物色する人込みをかき分け、先を進むと、これまで見た建物より一回り大きめの建物に行きついた。
そこで屋台の並びが途切れ、11階層の幹側の部分が見渡せる。
11階層は中央に向かって下っていくようになっており、ちょうどすり鉢を半分に割ったような形状をしていることが分かった。
中央部分は開けており、階段状になっている部分はコロシアムの客席であろう。
「兄貴!ここで参加登録をします。」
ブーイがリューシャの方を振り返る。
「ああ、わかった。」
リューシャはうなずく。
建物の中に入ると、大勢の男たちが列を作って並んでいた。
体が大きく、見るからに屈強そうな男たちだ。
「え、これみんな出場するの?」
リューシャが尋ねる。
「アナチュ・アナ中の力自慢が参加するからな。巨額の賞金、名誉、そして何より女の子にモテるんだなぁ、にひひ。」
言って、ヌンガロはニタニタ笑っている。
「というか、サイファってそもそもどんな競技なんだよ。」
リューシャは未だに聞けていなかった疑問をやっと口にする。
「あ、すんません。言い忘れてました!といってもルールは単純、魔法、打撃禁止の取っ組み合い大会です!足以外の部分を地面につけたら負けってルールです!」
ブーイが説明する。
「ああ、そういうの、ゲラダにもあったなぁ。子供の頃いつも姉のアイシャにぶん投げられてたっけ。」
「あ、兄貴をぶん投げるアネさんですか…魔獣が何かですかね。」
ヌンガロが顔を引き攣らせている。
「まさか、優しい姉だよ。」
「恐ろしい…」
そんな話しをしていると、リューシャの番が回ってきた。
手続きはブーイとヌンガロがサクサク済ませてくれ、すぐに終わる。
「ほいじゃ、今度はチキばあのところにでも行きますか。」
ブーイは言って、建物から出る。
また来た道を戻っていると、屋台の一角に人だかりが出来ているのを見つけた。
「なんだろう、ちょっと見てみよう。」
リューシャは人だかりに歩み寄る。
「さあさあ、買った買った!飲むだけでパワーが飛躍的にアップするスーパージュースだよ!これであなたもサイファで優勝さねー!」
人だかりの中央で、女が怪しげなものを売っている。
「げ、グレイハンド…」
ブーイが息を潜める。
「あれが、言っていた魔女か。というかあんなのルール違反じゃないのか?」
「魔法は禁止ですが、魔法薬の使用はグレーゾーンというか…使用がバレても明確に禁止になるのは次回以降ということになるでしょうから、今はまだなんとも。」
ヌンガロが言う。
「おう、ブーイとヌンガロやんか。治療費はどうするか決めたんか?」
グレイハンドがブーイ達を見つけ、こちらにつかつかと歩み寄ってくる。高名な魔法使いという割には若く見える。
ブーイとヌンガロは口を噛み締め、俯いている。
「なんや、まだ決めとらんの?別にええけど、あのババアもう死ぬでな、はよしい。」
「あんな大金、すぐには払えない。」
ブーイが絞り出すように言う。
「大金て、そりゃそうやろ。命の対価なんやから。」
「兄貴が、絶対にサイファで優勝してくれるんで!」
ヌンガロが叫ぶ。グレイハンドがこちらを向いて目を細めた。
「ふーん、この兄ちゃんが?ギャンブルやね、うちそう言うん大好きよ。じゃあ兄ちゃん、パワードリンク買ってく?」
「そんな卑怯なものには頼らないよ。」
リューシャはそっけなくあしらう。
「卑怯なんて人聞きの悪い。ルール違反じゃないんやし、ルールの穴は稼ぎ場所ってね。」
この人には何を言っても無駄な気がした。
「あなた、すごい魔法使いなんでしょ?」
マルカリスが尋ねる。
「そんな風に言ってくれる人がおるん?嬉しいわぁ。」
「なんで魔法を人のために使わないの?」
マルカリスの目は真剣だった。
「魔法は誰のためのものでもない、ただこの世界に存在するだけ。お嬢ちゃん、面白いこと言うのね。」
そう言って、グレイハンドはまた魔法薬の販売に戻っていった。
「なんだがあいつのことが許せないって気持ちになってきた。絶対優勝して、あいつから解放してやる。」
リューシャはいつになくやる気に満ちていた。
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