再会 ②
「チキばあはこの街の最長老でな、とにかく噂話が大好きだから、そりゃもう古今東西のあらゆる噂を知っているとも言われている。」
タツが説明する。
「噂ってことは、本当の話かどうかは分からないってことですか?」
リューシャが尋ねる。
「たしかに。話の真偽まではわからないけど、全くの嘘ということもないんじゃないかな。」
ミリアは指を立て、ウインクして見せる。
「それから、これはあまりお勧めではないのだけど、グレイハンド、別名大罪の魔女と呼ばれている人がいてね、知識量ではチキばあを上回るといわれているね。特に魔法関連の知識なら彼女を上回る人は過去にもいないだろうとさえも言われている。ただ…」
タツが渋い顔をする。
「ただ?」
「ただ、かなり正確に難があってね。…うん、やっぱり今の話は忘れて。彼女にかかわった人は大体不幸になってるから。」
「それってもしかして、病気の治療を頼んだら法外な報酬を要求されるとか?」
マルカリスが尋ねる。
「まさにそんな感じだよ。」
タツが大きくうなずく。
リューシャら三人は、顔を見合わせる。
大罪の魔女はおそらく、ブーイとヌンガロを苦しめているあの魔女のことに違いない。
その後も、スープを食べながらいろいろな話をした。
サミの昔の話や、この町での商売の話、他愛無い話で盛り上がっていると、家族の暖かさを思い出す。
リューシャはふと、自分の家族とはもうこうやっ夕食を囲むこともないのだという事実に思い至り、涙が出そうになってしまう。
これまで旅の間中張りつめていた緊張がゆるんだからか、その日の夜は久しぶりにぐっすりと眠ることができた。
リューシャが目覚めた時にも、サミはまだぐっすり眠っていた。
サミにもつらい旅につき合わせてしまったな、などと思う。
リューシャは寝息を立てるサミとマルカリスを起こさぬよう、静かに寝床を出る。
昨夜食事をした居間に出ると、タツもミリアもすでに起きて朝の支度をしている。
「おはようございます。すみません、お世話になってばかりで。何かお手伝いできませんか?」
リューシャが尋ねる。
「あら、おはよう~。いいのよ、まだ寝てても。」
ミリアが言う。
「いえ、ずいぶんぐっすり寝ましたから。」
リューシャが答える。
「じゃあせっかくだ、こちらで一緒に朝食を食べよう。」
タツが誘う。テーブルには、すでにおいしそうな 朝食が並べられていた。
色とりどりの野菜や木の実、果実、そして肉。
「そういえば気になってたんですけど、樹の上でで威喝しているのにこんなにいろんな食材どこで手に入れるんですか?」
リューシャが昨夜から気になっていた疑問を口にする。
「それはね、すべてこの樹からの恵みさ。この樹の葉は多種多様な野菜になり、多種多様な実をつける。だから僕らヒト以外にも、様々な動物が住んでいるのさ。この肉はドングリ鳥といって、木の実を食べて育つ飛べない鳥の肉で、家畜として育てていたりする。」
タツは肉を一切れつまみ、リューシャに見せてパクっと食べる。
「この樹は本当にすごいよ。みんなこの樹に生かされてるんだ。水だって何時でも好きなだけ飲める。そこら中に生えてるツル状の茎を切ると中から水が出てくるんだ。」
「すごいですね、危険の多い草原で遊牧をやるのが馬鹿らしくなっちゃいますね。」
リューシャは言って、肩をすくめる。
「それがそうでもないのさ、アナチュ・アナの住民には遊牧民にあこがれを持っている人も多いんだ。最初は驚いたけどね。なんで草原を駆け回る自由を捨ててこんなところに来たんだってさ。」
タツは言って、リューシャのように肩をすくめた。
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