樹上都市アナチュ・アナ ③
樹の上の街は、それが樹の上とは思えないほどきちんとした造りであった。
網の目のように張り巡らされた枝に板を敷いた道があり、太い枝に沿って木造の家屋が立ち並ぶ。
開け放たれた木窓からは、オレンジ色の柔らかい光が漏れ出ていた。
「綺麗〜!って私、旅に出てからこんなことばかり言ってるかも。」
サミが感嘆の声を上げる。
「樹の上にこんな街ができているなんて。草原で家畜の世話をしてるだけだと、決して知り得なかっただろうな」
「ほんとにまだまだ知らないことばかり、魔法のことだってきっとそうなんだろうな。」
「そうだな、マルカリスが魔法を学べるところも探しに行かなきゃ。」
「うん!でもまずはサミさんのお父さんたちだね。さっきの説明じゃあ何も分からなかったけど。」
リューシャはあたりを見渡す。
通行人もちらほらいるが、ゲラダ族らしき外見のものはいない。
「とりあえず聞き込みしてみようよ、案内してくれるかもしれないし。」
「おい、オメェらなにもんだぁ〜?」
「えぇ、僕たちですか!?」
柄の悪そうな男が二人、突然声をかけてきた。
「たりめーだよっ!他に誰がいんだ!」
青っぽい髪の毛の方が、睨みをきかせながらズイっと言い寄ってくる。
「そうだそうだ!オメェらみねぇ顔だな!」
もう一人の黄色い髪色の方も、同様にズイっと踏み出してきた。
「みないも何も、今来たばかりだし…」
「おうおう!商人か?ここを通りたけりゃ有り金全部置いていきな!通行料ってやつだ!」
青いほうが喚く。ケンケンという感じだ。
「そうだそうだ!取り引きってやつだ!」
黄色も続く。こちらはキャンキャンという感じである。
「無茶苦茶言うなぁ、ここではみんなそういうやり方でやってるのか?」
「な訳ないでしょ、こいつら、私たちの足元見て脅してきてるんだよ!」
マルカリスがプリプリ怒っている。
「なんだよあんちゃん、可愛い女の子連れてるじゃねぇか!」
青色がマルカリスに目を移す。
「可愛いじゃねえかこのやろうふふっ」
黄色い方は途中で気持ち悪く笑っている。
青色から喋らなきゃいけない決まりでもあるのだろうか。
マルカリスはリューシャの後ろにそっと隠れた。
「お兄ちゃん、こんな奴ら無視して早く行こう。」
「うーん、でもそんなに悪い人らには見えないんだよなぁ。」
「いやいや、お人好しにも程があるよ。」
「うーん、足元といえば、彼らの足元見てみなよ。」
マルカリスが視線を下げる。
二人組の脚はプルプル小刻みに震えていた。
「え〜〜」
「ねぇ、君たち、いつもこんなことしてるわけじゃないんでしょ、訳があるなら話してみなよ。」
「うるせぇ!えーい!こうなったら実力行使だ!ちょっとつらかせ!」
「ついてこい!」
二人はそのまま、路地裏の方へ歩いていく。
このまま走り出せば簡単に逃げられそうだ。
驚くほど隙だらけの二人がなんとなく気になってしまい、リューシャはついていくことにした。
「ちょっとお兄ちゃん!」
「リューシャくん!」
「二人はそこで待っててもいいよ。」
「もー、あたしもいくー!」
「わ、私も!」
結局3人は、謎の二人組について路地裏に入っていった。
「ねぇ、僕はリューシャって言うだけど、君たちは?」
「あぁ!?俺はブーイだよ!キジ族だ!」
青色が答える。
「俺は弟のヌンガロだよ!」
黄色も続いて答えた。
「うん、ブーイとヌンガロ、よろしく!」
「よ、ヨロシクじゃねぇ!実力行使で金をぶんどってやる!」
「そうだそうだ!俺たちは去年のサイファで結構いいところまで行ったんだぞ!」
「サイファ?」
「サイファってのはこの街の伝統的な格闘技だとその大会だ。分かったか!」
「分かったか!」
やはりいい人なんだ。とても素直に答えてくれる。
「ええい!いくぞ、ヌンガロ!」
「おう!」
二人は腰を落とし両腕を広げ、うおおと叫びながらリューシャに突進し始めた。
「うわっ、いきなりじゃないか!」
リューシャはびっくりして体を固くする。
「リューシャくん!」
サミが叫ぶ。
ぽすっ!
ぽすっ!
「…ぽすっ?」
リューシャは二人に思いっきりぶつかられたはずなのに、まったくもってびくともしなかった。
「こ、こいつ!?えい!!」
ブーイが張り手を繰り出す。
ぽすっ!
やはりリューシャはびくともしない。
「えい!」
リューシャもブーイに張り手を繰り出してみる。
「うわぁああ!」
ブーイは後ろにコロコロと転がっていった。
「よ、弱ぁ!」
マルカリスは驚き、つい声に出してしまった。
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