地下生活者 ⑨
リューシャはターリマの目を真っ直ぐに見据え、その心の内を探る。
真っ直ぐにリューシャを見返すその目には、冗談の色はない。
「条件?」
リューシャが尋ねると、ターリマはゆっくり頷く。
「まずは我らの民族との同盟、相互不可侵だな。それから、パミル草原を平定し、魔獣の侵略に対する防衛戦を張ること。もちろん我としても最大限の協力をする。」
「ま、待ってよ!ちょっと話しが大き過ぎやしないか?僕は別に民族を代表しているわけでもないし。」
「何を言うか。魔石を使うのであろう?ならばすなわち民族を束ねる力を得るに等しい。だからその前提で話しておる。出来ないなら出来るものにその石を渡せ。」
「石を誰かに渡すことだけは、それだけは出来ない。でもなぜそこまでの条件を出すのか、もっとちゃんと説明してくれませんか。」
はぁとターリマは深くため息を吐く。
「ここまで話してまだ分からんか。我の手に入れた情報によると、魔獣の動きは時間を経るにつれどんどん活発になっている。グレーターヌーの大移動もその影響のはずだ。」
「それだ、僕の父さんが倒した魔獣だ。」
「なるほど、納得がいくな。同じようなことが、東の遊牧民テウト族のなわばりのさらに東でも起きておる。そこは魔巣と呼ばれる魔獣の頻出地帯でな。これに押し出されてテウトが移動し、さらにドグエラ族もそれにつられて西へ移動している。」
「なんかすごい複雑だけど、要は活発になっている魔獣に対抗するために草原にいる民族で一致団結しろってこと?その旗を僕が振れと?」
「飲み込みが早くて助かる。そうじゃな、草原が魔獣の手に落ちれば我らの地下迷宮も長くはもたんじゃろうからの。やるか?」
リューシャは押し黙る。
まさかこれほど大きな話になるとは思ってもいなかった。
やるかと言われて簡単にやると言える話しではないはずだ。
だが、父さんが遺してくれたこの石の力を正しく使わねば、父に顔向け出来ない。
「出来るかどうかは分からないけど、この石の力ですべきことがあるのなら、僕はそれをやらなくちゃいけないんだと思う。その覚悟だけは持ってるよ。」
ターリマはニコリと笑った。
これまでで初めて見た暖かな表情だ。
「そうか、ならばもうコソ泥のようなマネはするな。上に立つものとして、正々堂々と突き進め。」
ターリマに小突かれ、リューシャはなんとなく自分が恥ずかしくなる。
「よし!じゃあこれで同盟成立じゃな!」
ターリマが腕を伸ばし、握手を求める。
リューシャが応えようと手を伸ばすと、その手をぐいっと引っ張られ、また抱きしめられた。
「うぐっ!くるしぃ〜」
ドン!
突然、物凄い勢いで扉が開いた。
「…おい。」
ドスの効いた低い声が入り口の方から聞こえる。
リューシャがゆっくりと振り返ると、サミがこちらを睨んでいる。
「サ、サミ!?」
サミのこんな重低音ボイスを聞いたことがなかったリューシャは驚き、おののく。
「おいてめえ、何してんだ!あ?あんま調子乗ってっと絞めるぞ、コラァ」
サミの顔を真っ赤で、目は完全に据わっており、手にはヒミズ族製の酒瓶が握られている。
これはもしかして、酔っ払っている?
「ちょ、違う!サミさんこれには理由があって…」
「なめてんじゃねーぞコラ!」
ドゴ!
サミはさけび、拳で壁を殴る。
殴られた壁が、ボロボロと崩れ去る。
「ひえっ!」
今回も読んで下さりありがとうございます!
皆さんの応援が執筆の励みになりますので、少しでもいいな、続きが気になると思った方は是非ブックマーク、高評価お願いいたしますm(__)m
次話もお楽しみに!




