地下生活者 ⑥
「ささ!こちらへどうぞ!」
ドゴモの案内に従って、バザールの中を抜けていく。
途中、通り過ぎるリューシャらを見つけたヒミズ族のおじさん達が、何度もドゴモに声をかけてなかなか先に進めない。
リューシャらの姿が珍しいのもあるが、客人イコール珍しいお酒という発想があるのが大きそうだ。
「おいドゴモじゃねぇか!御客人担当なんて運がいいな!後で俺にも酒回してくれよ!」
「そんなもん全部姉さん次第だ馬鹿野郎!」
こんな具合に、呼び止められては振り払いを続け、なんとか先に進む。
バザールを抜けると、広場の奥の方にひときわ大きな通路があった。
リューシャでも余裕で通れる高さと、何人もの人が同時にすれ違える広さがある。
それほどの大きさを必要とする者はいなそうだから、これは単純に姉さんとやらの力を示しているのかもしれない。
そのまま通路を進んでいくと、木でできた扉に突き当たった。
これまで見てきた通路の中で、扉をつけているものはなかったので、かなり特別なことなのだろう。
扉の前でドゴモが立ち止まる。
「姉さん!ゲラダの御客人を連れてまいりました!」
声を張り上げる。
「入れ」
中から別の男の声が聞こえ、ゆっくりと木の扉が開く。
リューシャははやる気持ちを抑えて、部屋の中に足を踏み入れた。
そこはまさに女王の部屋という感じで、内装は豪華絢爛、戸棚に並べられた調度品はどれも見たことのないような珍しい品々ばかりであった。
部屋の中央には、趣向を凝らしたテーブルが置いてあり、その奥に置かれたふわふわとして座り心地の良さそうな椅子の上に、姉さんと思しき女性が座っている。
その姿を見たリューシャの驚きは、かなりのものだった。
というのも、これまで出会ったヒミズ族を基準に似たような姿を想像していたからである。
姉さんらしき女性は、スラリと長身の麗人であり、思わずその美しさに息を飲んでしまった。
座っていて正確なところは分からないが、身長はリューシャよりも高いのではないだろうか。
つるりと滑らかな褐色の肌に、細くしなやかな四肢が伸びていた。
椅子の肘掛けにもたれかけ、優雅にこちらを見つめる。
「お初じゃな、ゲラダの御客人殿。」
どこか突き放すようなその声に、リューシャの背筋が自然と伸びる。
「はじめまして。リューシャと言います。」
「サミです。」
「マルカリスよ」
それぞれが堅くなりなが、名を名乗る。
この人の前ではつい緊張してしまう、そんなオーラがあった。
ふと足元を見ると、おじさんヒミズ族が一人、うずくまって脚置きになっている。
そしてもう一人のおじさんが、せかせかと脚のマッサージをしているではないか。
こ、これは…
リューシャは踏まれたい!と言っていたドゴモの言葉を思い出した。
やれやれ。
「うむ、よく来たな。我はターリマじゃ。この部族の長として務めている。」
「こちらが御客人様より頂いた酒でございます!」
ドゴモはリューシャが持ってきた馬乳酒を献上する。
「うむ、頂こうか。」
ターリマが言うと、ドゴモは小さな碗に酒を注ぎはじめる。
碗を受取、ターリマは一気に飲み干した。
「ほう」
ターリマ舌をぺろりと出し、唇を舐める。
一瞬、リューシャはターリマの目の色が変わったような気がした。
「ゲラダの少年、この酒はどこで手に入れた?」
「え?」
「ふん、まぁ良い。お主らのことは歓待する。好きなだけ遊んでゆくが良い。」
ターリマはひらひらと手を振って、退出を促す。
まさか、盗んだ酒だと言うことがバレたか?
リューシャの顔が熱く火照る。
この人、間違いなく手強い…
後ろで扉が空いた。
リューシャは一礼して部屋を後にする。
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