プロローグ 3
オウムは少女の腕の中で、フギィ〜と情けない鳴き声を出しながら、少女に体を擦り寄せている。
「マネオウムだったのか。」リューシャは驚きの声を漏らし、少女に興味深そうに近づいた。
「あっ、あの!ありがとうございました!」少女は恐縮しながら、礼を言った。
「ちょっとあなた、どういうつもりですか!魔獣がオウムを狙っているうちに逃げるのがセオリーのはず。そんな鳥を庇って全滅するかも知れないところだったじゃない!」
アイシャが目を吊り上げて、少女に食ってかかる。
「まぁまぁ、アイシャ。こうして倒せたんだから、怒らなくてもいいじゃないか。」リューシャは優しい口調でアイシャをなだめた。
「リューシャ様も同じことを言わないでください!あんな危険なやり方は、実戦経験のない者には無茶ですよ。」アイシャは、リューシャにも厳しい言葉をかけた。
ぎく…こっちに矛先が移ってしまったみたいだ。
「あのあの、えと、ほんとにすみませんでした!誰か呼んできます!」
少女はそう言って馬に飛び乗り、野営地の方に走り去っていった。
あ、逃げたな。
リューシャは倒した魔獣のそばに腰を下ろし、ぼんやりと少女が去っていった方角を眺めた。
その少女はマネオウムという珍しい魔法生物を飼っており、リューシャはその多少驚いた。
また彼女の外見も、特にあのきれいな瞳が、リューシャの心に残っていた。
「いや〜、でもまぁこれで応援も来てくれるし、魔獣を持って帰るついでに薪集めも手伝ってもらおうよ。結果オーライ、薪集めの手間が減ってよかったよかった。」リューシャは一息ついて、アイシャに向かって言った。
「リューシャ様、もう成人なのですから、こんな危険なことは今後絶対になさらないでくださいね。守姉としての私の立場がありません。」リューシャの姉であるアイシャは、心配そうに言った。
「わかったよ、アイシャ。自分の役割を理解せよ。だよね、父さん風にいうと。」リューシャは軽く笑って、アイシャをなだめた。
アイシャは苦笑しながら、リューシャの頭を撫でた。「あなたはいつもそうね。でも、本当に気をつけてね。」
「ありがとう、姉ちゃん。」
ゲラダの民にとって男子は貴重な存在であり、生まれる子供の四人に一人しかいない。
そのため、男子には年長の姉が「守姉」としてつくことになっていた。
守姉は、弟を危険から守り、保護することが使命だった。
リューシャのファミリーは男子に恵まれず、男子はリューシャだけだった。
リューシャは、家族に愛され、守られ育った。彼も家族が大好きで、できることなら、家族みんなでのんびり平和に暮らしていきたいと願っていた。
「そういえば、僕も成人することだし、アイシャも守姉を辞めてお嫁に行ってもいいんだよね?」リューシャが尋ねた。
アイシャは、長いバフ色髪を揺らし振り返る。首筋のきれいな黄褐色の肌を見せると、やはり健康で大人な魅力が感じられる。
アイシャはコクンと首をかしげながらながら、微笑んで答えた。「そうですね。でも、リューシャ様は、私がいなくなるのが寂しいでしょ?」
リューシャは、うなずきながら、瞳を逸らした。「うーん、アイシャには幸せになってほしいかな。でも、アイシャがいなくなるのは寂しい。」
「寂しいなら、しょうがありませんよ。それに、私がいなくなったら、リューシャ様は何もできなくなるでしょう?」
アイシャは、えへんと胸を張り、誇らしげに微笑んだ。
リューシャは、苦笑を浮かべながら、「いやぁ、そこまでは言ってないかなぁ…」とつぶやいた。
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