地下生活者 ①
途方に暮れたリューシャたちは、一度塚の近くから離れる。
「なんなんすかあのおじさん!酒酒って、全然話にならんよぉ!」
マルカリスが憤慨している。
「まあ落ち着けって、あれがモグラ族のルールなんだろう。こっちが教えてもらう側なんだから、彼らのルールに従うしかないさ。」
「じゃあお兄ちゃんは諦めるっていうの?」
「うーん、方法は二つだね、彼らに教えてもらうのをあきらめて、自力で新たな手掛かりを探しに行く方法か、酒を用意するか。」
「そんなのあきらめるしかないじゃん!うちでとれる馬乳酒だって、熟成したりとか、専用の道具も時間も何もないよ?」
「まあ普通に考えたらそうだよな。でも、」
「でも?」
サミが尋ねる。
「酒をすぐに入手する方法は、ないわけではない。かなり危険だけど。」
「それは?」
「それは、酒を盗む!」
「盗む?どこから?こんな草原のどこにそんな…あっ!」
サミは気づいたようだ。
「そう、数日前に見つけた、ドグエラの奴らからいただく。」
「おぉー!お兄ちゃんにしては大胆な作戦!わくわくするー!」
マルカリスが露骨にテンションを上げているが、リューシャは無視する。
「まだやると決めたわけじゃない。ばれたら間違いなく殺されるだろうから…」
「そ、そうだよね。」
サミが神妙にうなずく。
「だから、まずは下調べだな。奴らも西に向かって移動していたから、そんなに離れてはいないと思う。」
三人は南へ向けて馬を走らせる。
ほどなく、遠くの方に遊牧民族の影が見えた。
「やっぱり、同じ方向に移動してたんだ。もうちょっと近づいてみるか。」
三人は馬を降り、背の高い草に隠れながら接近を試みる。
やがて見えてきた彼らの容貌は、ゲラダの民にそっくりな背格好ではあったが、オリーブ色のたてがみを生やしており、ゲラダのような胸の紋はなかった。
間違いない、ゲラダとは敵対関係にある遊牧民族のうちの一つ、ドグエラ族である。
草原の遊牧民族は3つに分かれている。草原地帯をざっくり円形だとすると、北西側の三分の一をゲラダ、北東側の三分の一をテウト族、南側の三分の一をこのドグエラ族が支配していた。
そのため、南側に陣取るドグエラ族がここまで来ているのはやはりおかしい。
「数は…百もいなそうだな、思ったよりだいぶ数が少ない。トゥループ一つでももっといてもおかしくない…家畜もつれてきているから探索隊や侵攻部隊だけが来ているという線も薄い…」
「となると、迷い込んじゃったのかな?」
サミの疑問ももっともだ。ただ、なにか引っかかる。
「うーん。でも数が少ないのはこっちにとってはありがたい話だよね。」
マルカリスが口をはさむ。
「まあそうだな。ドグエラがここにいる理由はいったん置いておこう。もっと大群だったら、今すぐにでもファミリーに戻って知らせる必要もあっただろうけど。」
「よし!じゃあ決定!盗みに行くぞ!」
マルカリスが待ちきれないといわんばかりに飛び出そうとする。
「ちょっ!ばか!正面から盗みに行く泥棒がいるか?」
リューシャは慌ててマルカリスを取り押さえる。
「サミ、こいつを引っ張って馬のところに戻っといてくれ、僕はもうちょっと偵察するよ。」
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