旅立ち ②
家族の亡骸は丁寧に火葬され、その葬儀には多くのファミリーから参列者が訪れ、その死を悼んだ。
5人は、強大な魔獣による生態系の破壊から、世界を救った英雄のように語られている。
死者に対する一種の"配慮"なのだろうか。
どれほどの覚悟と勇気であの魔獣に挑んだのか、それを少しでも感じたリューシャには、そんな薄っぺらな英雄譚に冷ややかな気持ちになる。
リューシャら残されたファミリーは、彼らの遺灰を手にとり、丘の上から下に撒く。
その日は風が強い日だった。
遺灰は風に吹かれ大空に消えていく。
どこまでも続く草原の中、5人は風になった。
父たちが倒した魔獣の死体は、貴重な素材として回収された。
調査の結果、魔獣は過去に類を見ないほど高位の魔獣だったことが分かった。
グレーターヌーの大移動も、この魔獣によって引き起こされたものだと断定された。
リューシャはファミリーで最年長となり、自動的にファミリーのリーダーを引き継いだ。
とはいえ、リューシャ、サミ、アイシャ以外は全員がまだ未成年の小所帯のファミリーである。
こんな若いリーダーと成人だけで、これからどうやって生きていくのかさえ決まっていなかった。
葬儀に来ていた父の弟であるトークラムさんは、ありがたいことにリューシャのファミリーを自分のファミリーに受け入れることを提案してくれた。
さらに、トゥループの長老であり、サミの祖父でもあるチナーも、同様の提案をしてくれた。
彼らの提案は、今のリューシャにとっては願ってもないほどの好条件であった。
しかし、リューシャはその提案を断ることにした。
そして、逆にリューシャの方から叔父にあたるトークラムさんに提案をする。
「トークラムさん、僕には魔獣を売って得たかなりの大金と、父が蓄えていた財産があります。この中から一年分の迷惑料をお支払いするので、その間子供たちを預かってもらえませんか?」
「えぇっ、それはうちとしては大歓迎だけど、いいのかい、僕はタダでも君らをファミリーに受け入れると言っているんだよ?」
「はい、でもそれじゃダメなんです。ファミリーに入れてもらうのだと、父の、このファミリーがなくなってしまう。受け継いで続けていかなきゃいけない。」
「それは確かに納得できる。もう一ついいかな。君はさっき子どもたちを預かって欲しいと言っていたけど、君はどうするんだい。」
「僕は…行かなきゃ行けない所があるんです。」
リューシャは手に握った、エメラルド色に輝く小さな石を見つめる。
「それは、あの魔獣の胆石…君はまさか」
「はい、これは…父の形見のようなものです。魔獣の素材はあらかた処分しました。でもこれだけは自分で持っているべきだと思いました。」
「リューシャ君、君はそれについてどのくらい知っている?それだけではキラキラの宝石以上の価値はない。」
「分かってます。だから、探しに行くんです。この胆石の本当の力を引き出すことができる、魔法鍛治師を。」
「うーむ。君の言いたいことは分かった。でも本当にそんな鍛治師がいるかどうかも怪しいらしいじゃないか。うーん…よし、一年だぞ。一年の間に見つけられなければ、君はここに戻ってくる。いいね?」
「もちろんです!ありがとうございます!」
トークラムさんはリューシャを見つめ、ニコッと笑った。
「君は兄に似ているよ。」
「え、そうですか?」
「あぁ、頑張れよ、リューシャ!」
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