旅立ち ①
リューシャは、サミとアイシャとともにルジャの大森林を抜けた。
ここまで追ってきていないということは、父が魔獣を倒したか、魔獣がこちらへの関心を失ったかということだろう。
リューシャたちは、ひとまず安堵とともに息を落ち着ける。
一目散に逃げてきたため、3人とも息が上がっている。
「もう大丈夫かな。」
サミが聞く。
「分からない。早く、他のファミリー達にも伝えに行こう。」
リューシャの提案に、アイシャも同意する。
「そうですね、もしかしたら救出隊を編成してくれるかもしれません。怪我で動けなくなっているということもあり得ますし。」
3人は休憩もそこそこに、捜索隊の野営地に急行する。
野営地には、すでに多くのファミリーが集まっており、帰還の準備をしていた。
リューシャたちは、すぐに捜索隊の責任者を探しだし、事情を伝える。
「お願いです!救出隊を出して下さい!」
リューシャらは懇願する。
「いや、そんな危険な魔獣ならなおさら、もし生きていたら捜索隊まで全滅しかねないじゃないか。」
彼の言うことも一理あった。
彼は捜索隊全体の責任者であり、特定のファミリーに肩入れして被害を広げては責任問題である。
「こうなったらキャムの報告を待つしかないね。」
リューシャはそう呟き、大森林の方角の空に目をやる。
ちょうどその時、視線の先にこちらに向かって羽ばたくオウムの姿があった。
キャムである。
キャムはサミを見つけると、高度を下げそのままサミの腕にとまる。
キャムは両脚に1本ずつ、枝を掴んでいた。
「サミ、これはどういう意味だろう。キャムが間違えたのか?」
敵を倒したら1本だけ枝を持って帰る、そういう合図だったはずだ。
父は勝ったのだ、それを間違えて二本持ってきてしまったに互いない。
リューシャは気持ちが昂る。
「ううん、多分違うと思う。キャムは合図はきちんと守るから。…これは、相討ちのサイン。」
「そ、そんな…」
リューシャの気持ちの昂りは、一瞬にして消え失せる。
まさか、そんな…
相討ちの報告が入ったことで、責任者は救出隊の編成を許可してくれた。
もしかしたら、まだ息がある人がいるかもしれないからだ。
リューシャ、サミ、アイシャも、救出隊に加わることになった。
どうか、生きていて。3人は祈るような気持ちで、大森林の中救出隊を先導する。
やがて、一行はあの魔獣の出た崖にたどり着く。
「ひゃっ!」
サミが叫び、口を覆う。
リューシャは、あまりの惨劇に言葉を失った。
どうして…
リューシャの目からは、止めどなく涙が溢れ出る。
父も、デフネさんも、エブラさんも、ネヒルさんも、アズラさんも、皆リューシャ、サミ、アイシャを生かすため、その命を失った。
5人の命に値するほど、自分たちの命に価値はあるのだろうか。
父は最後に、リューシャに対して家族を託した。
その言葉の意味を、重みを、今は受け止めきれない。
今のリューシャは、弱く、脆く、幼過ぎたのだ。
今はただ、父親の死を嘆く子供でしかない。
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次話もお楽しみに!




