歴戦の猛者 ⑦
※残虐な表現がありますので、苦手な方はご注意下さい。
盾のデフネ、剣のアズラ、そしてユスフの3人は、魔獣を取り囲み一斉に攻撃を仕掛ける。
デフネの攻撃には棍棒で対応し、アズラの攻撃には棍棒を持っていない左腕で対応する。
しかし、三方向目のユスフからの攻撃に対応することはできなかった。
ユスフはうおおお!と叫びながら、大上段からの重い一撃を与える。
攻撃はしっかりと、魔獣の肩口にヒットした。
プシューと血しぶきをあげ魔人は苦しそうに顔を歪め、飛び退いて距離をとった。
かなり効果的な一撃になったはずだ。
ユスフたちは、魔獣が怯んでいる隙を見逃さず、もう一度3人で一斉に攻撃を仕掛ける。
魔人は斬りつけられた肩を手で押さえ、膝を地面についている。
シューと音がして、魔獣が手で押さえた傷のあたりから、白い蒸気のようなものが立ち上がる。
魔獣が傷口から手を離すと、傷がゆっくりと塞がっているではないか。
「な、なにぃ!そんなばかな!」
盾のデフネが驚き、叫ぶ。
なんて無茶苦茶な奴だ…
ユスフは心の中で舌打ちする。
「止まるな!どちらにしろ今がチャンスだ!」
ユスフは二人を鼓舞して、突撃を続けた。
あの俊敏さにパワー、そして魔法の力。まさに絶望的な状況だ。
しかし、まだあまり時間は稼げていない。
魔獣の素早さであれば、簡単にリューシャに追いついてしまうだろう。
こちらの攻撃はほとんど効かないうえに、傷付けても回復されてしまう。
そんな相手からリューシャを守るためには、もう方法を選ぶ余裕などない。
「いくぞ!」
叫びながら、3人は魔獣に斬りかかる。
先程は三方から取り囲めていたが、今回は正面からだ。
それに、魔獣は同じパターンの攻撃にすぐに対応してくる。
まず、デフネを棍棒で盾ごと叩き潰す。
そして、流れるように体を捻り、アズラを蹴りで吹き飛ばした。
蹴り出した足を戻しながら体を回転させ、棍棒をユスフに向かって振り抜く。
棍棒がユスフに直撃する、そう思った瞬間、デフネが身を挺して棍棒の犠牲となった。
最初の一撃を、盾を壊されながらもギリギリで耐え抜いたのだ。
「デフネ!」
ユスフは妻が作ったチャンスを無駄にしない。
大きく飛び上がり、魔獣の頭に向かって大剣を突き出す。
回復されるなら一撃で殺すしかない。そう考えての急所狙いである。
両腕での対応が間に合わないと察した魔獣は、その大きな牙で剣を受けようと、大きく口を広げた。
ユスフはそのまま剣を構え、大きく開いた魔獣頭に向かって突っ込んでいく。
このままでは牙にやられてしまうのは明らかだった。
ユスフはなんと、シャクに流していた魔力を止め、魔力で創っていた剣を消し去った。
諦めたのか、と驚いたのだろうか。
剣の攻撃が来ると予想していた魔獣は、不意をつかれそのままユスフにかぶりつく。
魔獣はユスフの上半身を丸ごと飲み込んだ。
一拍置いて、魔獣の後頭部からユスフの剣がぶすっと突き出る。
さらに、バーンという爆発が魔獣の首元で起き、頭が吹き飛ばされた。
ユスフはごく僅かな可能性にかけ、飲み込まれた後の最後の一瞬で、魔獣を倒したのだ。
後は頼んだぞ、リューシャ。
五人の人間の死体と、一体の魔獣の死体。
その様子を木の影から見ていた一羽のオウムが、空に飛び立った。
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