歴戦の猛者 ⑥
※多少残虐な表現がありますので、苦手な方はご注意下さい。
リューシャの父ユスフは、リューシャたちが森の方に逃げていくのを確認し、前に立ち塞がる魔獣に向き合う。
ユスフは心の中でほっとひとまず一安心する。
リューシャたちは無事に逃げたか。
これで心置きなく奴と戦うことができる。
魔獣ははっきり言って未知の強さだ。
やり合わず、立ち去ってくれればそれが一番だが、そう上手くはいかないだろう。
自分達5人の命を盾にして幾分かの時間を稼ぐ、その間にリューシャが逃げてくれれば御の字といったところだ。
そしてそれが父ユスフの願いでもある。
どこからやってきたのか分からないが、この魔獣がジャイアントヌーを縄張りから追い出したのは間違いなさそうだ。
そう考えると、ジャイアントヌーの大移動も、この森の静けさも、すべて納得がいく。
精神に作用する魔法の力を持つ咆哮、手に持った骨の棍棒。
魔法や武器を使いこなすということは、それくらいの知性を持つということになる、
知性を持つ魔獣は実に厄介だ。
まずはとにかく距離を保ち、様子を見る。
そしてできるだけ長距離攻撃で、時間を稼ぐ。
盾のデフネ、鍵爪のエブラ、剣のアズラ、弓のネヒル、それぞれと目配せし、合図を送り合う。
ファミリーのメンバーも作戦を理解しているようだ。
こちらからは攻撃を仕掛けず、防御の姿勢を保ちながらゆっくりと後退する。
魔獣が近づいてきたら、ユスフの魔法攻撃とネヒルの弓攻撃で牽制を与えていく。
牽制のための攻撃は、魔獣に対してほとんど効果が無さそうで、ダメージを与えられている様子はない。
魔獣ら攻撃がうざったそうに顔をしかめ、こちらを睨みつけてくる。
そしてその巨躯をぐっと屈め、魔獣はぴょんと飛び上がる。一気にユスフたちの上空に飛び上がり、落下の勢いと共に攻撃を仕掛けてきた。
上空にいる敵に対しての遠距離攻撃は、非常に当たりにくい。
ユスフたちは攻撃をやめ、回避に専念する。
魔獣はそのままユスフたちを飛び越え、背後に回った。
そのままくるりと振り返りながら、その棍棒をネヒルに向かって思いっきり振り抜く。
ゴオゥン!と嫌な音がしてネヒルは吹き飛び、木の幹に叩きつけられ、そのまま血と肉の塊になってしまった。
「ネヒル!」
一瞬にして妻の命が奪われたことに、ユスフは大きなショックを受ける。
後衛から敵を倒しに行くという作戦なのか、それとも単なる偶然なのか。
とにかく状況はかなり悪い。
一撃で抹殺されたのでは、時間を稼ぐということすらできない。
距離を取るにしても、あの跳躍で一気に距離が詰められることが分かった。
しかし、接近戦に持ち込んでも、おそらく棍棒で一人ずつ順番に倒されていくだけだろう。
どうする?
このままでは全滅してすぐにリューシャたちに追い付かれてしまう。
「展開して取り囲め!」
ユスフは指示を出す。
4人は一斉に動きだし、魔獣を取り囲むように展開する。
最も機動力が高く、魔獣の背後に回り込もうとしたエブラを、魔獣の棍棒が捉えた。
エブラは軽々と吹き飛ばされ、宙を舞う。体は崖に思いっきり叩きつけられ、ぐにゃりと異常な角度に曲がったまま、ぐったりと倒れ込んだ。
くそぅ!
ユスフは唇を千切れんばかりに噛み締める。
盾のデフネ、剣のアズラ、そしてユスフは三方をから魔獣を取り囲んだ。
エブラの命が稼いだ貴重な時間のお陰で、形成としてはユスフらが有利である。
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