歴戦の猛者 ⑤
冷静な判断としては、父が時間を稼いでいる間にリューシャが逃げることが最善であるということは、リューシャも分かっていた。
もし、もしもだが父が負けてしまった場合、ヤツは次にリューシャらを狙うだろう。
そうなった時、父たちの犠牲は全くもって無駄になってしまう。
頭では理解できても、踏ん切れない。
横にいるサミは、ぶるぶると震えながら、顔を足の間に埋め、泣いているようだ。
アイシャは顔を真っ青にして、ペタンと座り込んでいる。
自分が何をすべきか理解しろ、状況に適応しろ、父は常々そう言っていた。
自分は今何をすべきか、リューシャは考える。
生きるために最善の選択、家族を守るために最善の選択、それは何か。
トゥループの野営地には、まだ小さい妹たちも残してきている。
マルカリス以外は、まだまだ手のかかる子供ばかりだ。
エズラさんの双子はまだ2歳になったばかりで、育ち盛りだ。
ファミリーの核はリーダーの男だ。
リーダーがいなくなったファミリーは、散り散りに別のファミリーに吸収され、二度とファミリーに戻ることは出来ない。
父かリューシャさえ生きていれば、ファミリーは一つの運命共同体としてやっていけるのだ。
親も家族もいない子供たちが、別のファミリーに入ってどんな扱いを受けるのか…
リューシャは、頭では理解していた。
自分が魔獣と戦いに行ったところで、父たちの足手まといになってしまう。
父のファミリーは、5人で完璧な連携を作って戦う。
そしてそれが最も強く、最も勝つ確率の高い方法である。
リューシャが横から入っていったところで、それは父たちの連携を崩すことにしかならず、むしろ勝てる確率が落ちる。
リューシャの心としては、戦うことのデメリットが大きかろうと、自分も家族のために戦いたかった。
父が勝つことを信じる。自分にはそれしかできないのが悔しい。
自分に力があれば、家族を守ることができる。
自分に経験があれば、自分に能力があれば、家族を守るその策を思いつくかもしれない。
それが出来ないことが悔しくてたまらない。
リューシャは溢れる涙を拭い、震える膝に力を入れて立ち上がり、サミとアイシャに向き直る。
「逃げよう、サミ、アイシャ!お父さんのために、待っている家族のために。」
リューシャが言うと、二人も意を決したように肯く。
「サミ、キャムを戦場の連絡役に置いていけないかな。もし勝ったとしても、怪我とかして動けないかもしれない。」
マネオウムはかなり知能の違い生き物だ。
簡単な指示なら言葉なら理解できる。
もし魔獣が死んだら、枝を一本持ち帰る。これを合図にすることにした。
よし、行こう。
リューシャは二人を先導し、大森林を元来た方に向かって一直線に駆け出す。
後ろは振り返らない。
父なら絶対に勝つ。リューシャはそう信じていた。
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次話もお楽しみに!




