歴戦の猛者 ④
洞窟の入り口の高さは大人2〜3人分はありそうだ。
自然にできたような穴ではなさそうで、掘り起こしたような跡があった。
これだけの大きさの洞窟を掘る、そんなパワーを持つとなると、かなりの大型で強力なものであると推測される。
かなり危険な魔獣のねぐらである可能性が高く、もしかしたらすぐ近くにいるかもしれない。
一行はみな同じように考え、馬を引き返すことにした。
リューシャも同様に馬をUターンさせようと、手綱を引く。
しかしその時、馬がもたつき、苛立ったのか、ヒヒーンと一声鳴いてしまった。
「まずい、走れ!」
父が叫ぶ。
リューシャの視界の端に、洞窟の中から巨大な魔獣が姿を現わすのが見えた。
魔獣は、縄張りを犯す侵入者に怒りをあらわにしている。
魔獣は大きく、背丈はリューシャの倍は軽くあり、その腕は人間の胴体よりも太い。
肌はウロコで覆われており、後頭部から背中にかけてはタテガミのような、赤い毛並みに覆われている。
巨大な牙を剥き出しにし、手には大きな骨を棍棒のようにして持っている。
ウロコに覆われた巨大なクマという雰囲気だ。
「まずい!やつは相当強い。今まで相手したか中でもダントツに一番だ!全力で撤退しろ!」
父が叫ぶ。
リューシャらが馬を促し、走り出すのを見て、魔獣はゴオオオと威嚇の咆哮を上げる。
リューシャはぞわっと背筋が凍るような感覚がして、体が震えて止まらない。
馬は恐怖に暴れ始め、制御が効かなくなってしまった。
リューシャは暴れる馬から振り落とされ、地面にへたり込んでしまった。
おそらく魔獣の咆哮は、精神に作用する魔法効果が乗っていたのだろう。
父たちはすでに馬から降り陣形を整え、戦う態勢に入っていた。
この恐怖の中で彼らが立っている。そのことがとても強く心の支えになった。
リューシャはゆっくりと立ち上がる。
震える膝に力を入れ、前に向き直った。
「アイシャ、立てるか!?リューシャとサミを連れてここから逃げろ!」
父がアイシャに叫ぶ。
父は魔獣と戦ってリューシャらが逃げる時間を稼ぐつもりではないか。
それはだめだ。自分のために家族を犠牲にするなんて。
「父さん駄目だ!俺も戦う!」
リューシャは必死の思いで叫んだ。
「黙れ小僧!俺は今までの経験全てを動員してこの結論に至ってんだ!誰かが生き残るなら、誰が生き残るべきか、わかるだろう。リューシャ、お前には未来がある!家族のことはお前が守るんだよ!」
「リューシャ様、こっちへ!」
アイシャはリューシャを引っ張って森の中を走る。
アイシャ、サミ、リューシャはやっとの思いで、魔獣から少し離れた大きな木の影に避難した。
逃げてどうするんだ!?
戦わなきゃいけな。父さんと一緒にヤツと戦って、全員で一緒に帰らなきゃ。
リューシャはそう思うが、体が一切動かない。
一度あの圧から離れると、あの戦場に戻ることを体が全力で拒否しているようだ。
自分の中の闘志や魔力を凍結され、完全に機能を停止した、リューシャはそう感じる。
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