歴戦の猛者 ①
グレーターヌーが移動してきた北東の方角には、ルジャの大森林が広がっている。
グレーターヌーはそこで一年間を過ごし、春になったら西方にある別の場所に移動し、またそこで一年を過ごす。
今回の任務は、そのルジャの大森林の手前、まばらに木が生えた境界のエリアまでを探索することにある。
リューシャたちファミリーは、片道3日、往復6日分の食料と旅道具を揃えた。
今回の探索作戦は大規模なものになり、6つある各トゥループがそれぞれエースファミリーを駆り出し、そのほかにも運搬補給を担うファミリーも随行することになっていた。
一行は北東に進路を取り、草原を駆け抜ける。
周囲に注意を向けながらの進行は、案外体力を使うものだった。
サミはマネオウムのキャムを連れてきていた。
上空からの警戒も可能で、緊急時には伝書バトとしても使える、便利な動物だ。
一日目、特別な異変はなく、一行は静かな夜を迎えた。
二日目、一行は古代文明の都市跡を発見した。
がれきと、砂に埋もれた建築物の残骸。しかしそれだけでも、古代文明の技術力の高さをうかがわせるものであった。
「何かあるかもしれん。ちゃちゃっと見て回るか。リューシャ、サミ、お前たちは後方の警戒を頼む。アイシャもリューシャのサポートで入ってくれ。」
父は簡潔に指示を出し、前を進み始める。
先頭を行くのは、体の大きなデフネで、その後ろをエブラ、父、ネヒル、アズラと続いていく。
これは、父が探索をするときの基本的な陣形だ。
イヌワシの姿になって上空を旋回するキャムは、今のところ特に異常を見つけた様子はない。
ただ、廃墟は隠れる場所が多く、上空からの索敵は難しいだろうから、あまりあてにはならないかもしれない。
やがて一行は、広場があったと思われる場所に行きついた。
周囲には、何の目的で作ったのかは定かではないが、グネグネと曲がった細長い構造物がある。
なにかの道にするためだろうか。いたるところで朽ち果て、崩れており、元の形は定かではない。
ほかにも、丸い箱がいくつも取り付けられた円形の構造物がある。
もとは立っていたのだろう。土台の部分からボキッと折れた様子だ。
これが立っていたとしたらずいぶんな高さだ。
広場の中央には、今となっては何があったのかよくわからない状態になった、ぐにゃぐにゃした何かがある。
その下は石碑のようになっており、「LUCKY LAND」と刻まれているが、古代文字はリューシャにはわからなかった。
そのほかにも、いくつもの廃墟になった建物が周囲を囲んでいる。
「何か、来る。」
周囲への感覚がとりわけ鋭敏なエブラが、小さく声を発する。
「感じるか、エブラ。」
父が確認する。こくりとエブラがうなずく。
ピィーウ!!
上空のキャムが一声鳴いた。
それと同時に、奥の廃墟からぞろぞろと10体ほどの黒い影が姿を現す。
1メートルほどの犬型の魔獣、イビルドッグだ。
グルルルルとうなりながら、ゆっくりと近づいてくる。
口からはだらだらとよだれを垂らしており、相当植えているようだ。
「リューシャ!一体一体は大したことないが数が多い!やつらどこまでも追ってくるから撤退はなしだ。何体か頼めるか。」
「もちろんだよ。父さん。」
今回も読んで下さりありがとうございます!
皆さんの応援が執筆の励みになりますので、少しでもいいな、続きが気になると思った方は是非ブックマーク、高評価お願いいたしますm(__)m
次話もお楽しみに!