パートナー ②
「さあ!どっからでもいいぞ!かかってこい!!」
叫んだ父は両手を広げ、リューシャらを迎える。
二対一なんて、こちらがかなり有利じゃないか、父が強いと言ってさすがに勝てちゃうだろう。
「よし、サミ行くぞ!」
「うん!」
うおおおお!
二人は勢いよく父に向かって走り出す。
「あ、ごめん!ちょっと待った!」
父が急に手を上げ、二人を止める。
「すまんすまん。忘れてたわ。ほらよ、訓練用のシャクだ。刃がないから怪我の心配が少ない。あぶねえ〜」
段取りが悪いなぁ。まったく。
そんなことをリューシャは思った。
「まぁ、ついでだから言うが今みたいに二人いっぺんに来ても倒せないぞ。試してみるか?」
父は眉を上げリューシャを見下ろす。
挑発だろうか。やってやろうじゃないか。
「いくぞ!」
うおおおお!
リューシャとサミは、シャクに魔力を流し、剣を作り出し、父めがけて走り出した。
リューシャが先に父に向かって剣を振り抜く。
ガン!
リューシャの剣はいとも簡単に、父の剣に跳ね返される。
「やぁ!」
父がリューシャの剣を弾いたそのタイミングで、サミは剣を突き出す。
良いタイミングのはずだ。
しかし、父はひょいと剣をかわし、くるりと回転しながらサミの背中に一発、流れでリューシャの横腹に一発叩き込む。
グエェ!
二人は訓練とは思えない思い一発に、咳き込む。
「言った通りだろう。リューシャ、なぜさっき教えたようにやらない。お前は後衛になってサポートに徹しろ。」
「う、でも…」
「サミが心配か?自分が守らなきゃとかそういう話か?」
父に心の中を見透かされ、リューシャは戸惑った。
確かにそうだ。
「あのな、リューシャ。サミ一人だけなら、確かにお前が前に出ることで守れるかも知れん。だが二人三人と増えたらどうだ。後衛にいるってのは、後ろでなにもしないんじゃなくて、全員を守れる場所だからそこにいるんだ。分かるな?」
「はい。」
リューシャは自分が甘かったと思った。
父の言う通りだ。
「もう一回!」
「おう!何度でもこい!」
サミが駆け出す。
リューシャは前に出ず、後ろからサポートに回ることにした。
「身体強化!」
サミに強化魔法をかける。
サミのスピードが一段速くなるのが分かった。
サミが父と剣で打ち合う。
父はまだまだ余裕そうだ。
「いいぞ!リューシャ!サミ!」
父が楽しそうに叫ぶ。
「リューシャ!サミと魔力を繋げろ、魔力を供給し続けることを忘れるな!」
リューシャは、父に言われた通り自分の魔力をサミに分け与える。
魔力のパイプをサミに繋ぎ、自分の魔力を送り込むイメージだ。
「はぅっ…、リューシャくん…のが…わたしの中に入ってく…るのぉっ!!す、すごいいい!ああん!」
な、なんだこれ、すごいやらしいな。
サミのシャクに流れる魔力量が増大し、剣の形が変化した。
先程まではごく単純な剣であったが、偃月型の槍のような形に変化したのだ。
サミは父に対してリーチの有利ができ、先程までより有利に戦っているように感じる。
すごい、戦い方を考えるだけで、先程まで手も足も出なかった相手と互角以上に戦っているではないか。
「お前ら筋がいいなぁ!息ぴったりじゃねえか!リューシャ、タイミングを見計らって援護射撃してみろ。」
「いくよ!バースト!」
サミの攻撃に合わせ、リューシャはごく単純な遠距離魔法を飛ばす。
魔獣と戦った時にアイシャが使ったのもこの魔法だ。
バシ!
リューシャの放った魔法が、父の剣を弾く。
そこへ、サミが槍のなぎ払いを繰り出す。
狙いは、父を完全に捉えている。
ドン!
サミの槍が父の肩口に直撃した。
「グヘッ」
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