プロローグ 1
馬が草原を駆ける。
風が吹き抜け、草がそよぐ。
どこまでも地平線まで草原が広がり、突き抜けるような青い空が頭上に広がっている。
この先にあるはずの木立を目指して、少年のリューシャはお姉さんのアイシャを伴い、草原を駆け抜けていた。
「はぁ、焚き火用の枝を集め、ほんとにめんどくさいなぁ」とリューシャは、心底めんどくさそうにため息をついた。空を仰いて、愚痴をこぼした。
「何を一人でブツブツ言っているのですか、リューシャ様」とアイシャが尋ねた。
「いやさ、枝拾いなんてホントめんどくさいなと思ってさ、アイシャもそう思うでしょ」とリューシャは続けた。
「リューシャ様の儀式のためですよ、まったく」アイシャは呆れたように返す。
「そう、そこなんだよ。僕の儀式のための枝拾いを、僕はめんどくさいと思っている。だからいつもみたいに羊のフンを燃やせばいいんじゃないかな」とリューシャは提案した。
「そうはいきません!大事な成人の儀でフンを燃やすなんて、花嫁も可愛そうですよ」とアイシャはきっぱりと反論した。
「花嫁ねぇ、顔も見たことない花嫁のことなんて知らないよ」とリューシャは肩をすくめて、空を仰ぐ。
「一生恨まれても知りませんからね、あ、あそこ!」とアイシャが指差す。リューシャはその先をに目をやった。
こんもりとした小さな木立が見えた。
枝が拾えそうだ。
「お、やっとだ!…って、ん?」とリューシャは、口を開けた。
木立のそばには、白馬がのんびりと草を喰んでいる。そのそばに少女が立っているのを見つけた。
少女は木立のそばに立ち、白馬に寄りかかっていた。馬はのんびりと草を食んでいる。そこへリューシャとアイシャがやってきた。
「こんなところで何してるんだろう、野営地から随分離れてるのに。」とリューシャ。
「さぁ、はぐれちゃったんでしょうか。」アイシャが答える。
その時、頭上からピィーウと鳴き声が響いた。大空には、その大きな翼で風を掴み、滑空するイヌワシの影が見えた。
少女が片手を上げると、イヌワシはその腕に向かって降下を始めた。リューシャは首をかしげる。
「鷹匠か、狩の最中だろうか。でもひとりでこんなところまで、不注意じゃないか。それとも他に誰かいるんだろうか。」
ピィーウとイヌワシがまた一声鳴いた。急降下からフワッと減速し、イヌワシは少女の腕にとまった。
少女はイヌワシが乗った腕を大きくふりかぶり、もう一度その勇猛な大鳥を飛ばした。リューシャは驚きながら言った。
「おーい、きみー、ひとりかーい」
少女は振り返って、肩まで伸ばした淡い黄褐色、バフ色のふわりとした髪の毛、胸に赤い紋章を見せた。
この外見、間違いなく同族だ。
歳の頃は14〜15歳くらい、リューシャより少し幼いくらいだろう。
「きみ、こんなところでーー」
言いかけたその時、木立の奥からグアアア!とけたたましい鳴き声が鳴り響く。
そして音のしたところから、青い鳥の魔獣がジタバタと飛び出して来た。
なんでこんなところに?
「まずい!逃げろ!!」リューシャが叫ぶ。
本作を読んで下さりありがとうございます!
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