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海水浴編 第2話「続々集合するゲストたち」

シンバの妻と息子の名前が判明するので、その由来。


 シャルマ:シンバの妻【シャルマイ:ドイツの木管楽器】

 ダルバ:シンバの息子【ダルバッキ:シリアの鼓】

 マラクス姿のベルに恋心をいだいていたシロフが本当の性別を知り、男女問わず交際して欲しいと声をかけ始めた。それを鎮めたのは母さんのプレッシャーだ。



「なんか盛り上がってるな」


「ちょっとした行き違いが大惨事になる前に収まったよ」


「今日は誘ってもらってありがとう」


「ぼく、うみはじめて!」



 着替え終わったシンバの家族がやってきた。奥さんの名前はシャルマさんといって、シンバより十歳以上年下の若い女性だ。冒険者をやっていた時に遭難し、シンバに助けてもらったことがきっかけで結婚したらしい。


 小柄で溌剌(はつらつ)とした感じの人だけど、がっしりした体型のシンバと並んだ時のビジュアルは、何かを彷彿とさせた。思わず美女と野獣という言葉が頭をよぎったけど、シンバは姿を変えられた王子ってことはないだろう。なにせこのあと、本物が来てくれる。


 そして息子の名前はダルバ。三歳になったばかりで、かなりやんちゃとのこと。



「久しぶりですね、シンバ。元気そうで何よりです」


「ヴァイオリさんも相変わらず鍛えてるな。今でも敵いそうにないぜ」



 シンバはシェイキアのところにいた元隠密なので、ヴァイオリさんとは知己。現役時代は一度も勝てなかったらしい。シェイキアと結婚してから一緒に行動する機会が増えたけど、体のキレがすごく良いんだよな、ヴァイオリさんは。



「しっかし、こんな無人島よく知ってたな」


「貨客船の航海士をしている人が教えてくれたんだ。その人に小舟で連れて行ってもらって上陸できたから、ここに転移できるようになった」


「流れ人の魔法ってのは凄いね」


「結婚してから遠出するのは初めてだからな、感謝してるぜリュウセイ!」


「とーちゃん、かーちゃん、およぎにいっていい?」


「ダルバくん、いっしょにいこ!」


「しっかり準備運動してから海に入るんだぞー!」


「わかってるよー、リュウセイお父さん!」



 リコと手をつないだダルバが波打ち際に走っていき、ライムやクレアと一緒に準備運動をし始める。子供たちがわちゃわちゃやってるのは、やっぱり可愛い。


 父さんが近くに行ってくれたし、しばらく子供たちは任せてしまおう。



『来てやったぜリュウセイ』


『皆、久しぶりだな』


『子供たちはわたくしが見てあげますから、安心なさいませ』


「エレギー、バンジオ、モジュレ、会えて嬉しいよ」



 スファレから精霊たちに、伝言リレーのような形で今日のことを伝えてもらったけど、しっかり三人にメッセージが届いたようだ。何でもあらかじめ落ち合う場所を取り決めていたらしく、そこからエレギーの風に乗って一気にこの場所まで来たらしい。


 以前と変わらない姿と態度で接してくれると、やっぱり嬉しくなってしまうな。それに、精霊王たちが来てくれたら水難事故の心配はいらないし、これで思う存分海水浴を楽しめる!



「ボクの方からも一人呼んでるんだけど、そろそろ着くと思うよ」


「そういえば出かける前に、地脈通信をするって言ってたな。一体誰を呼んだんだ?」


「それは来てからのお楽しみって感じだね」



 今朝早くディストにお願いされて二人で地脈源泉まで行ったが、誰と話をするのか聞いてなかったことを思い出す。そのまま準備でバタバタしてたから、すっかり忘れていた。



「沖の方から何か近づいてくるのじゃ」


「ふぉぉぉぉぉぉ! あれ黒竜!!」


「まさか、ドラムを呼んでくれたのか!?」


「リュウセイに教えてもらった〝グループ通話〟ってのができるように魔法を改造してみたんだけど、ちょうどドラムが暇そうにしていてね。リュウセイとライムが最初に会った竜なんだろ? せっかくだから久しぶりの再会なんてどうかなと思ったんだよ」



 卵の状態だったライムを保護し、異世界に来たばかりの俺を街まで送り届けてくれたのがドラムだ。会う機会なんてもう無いつもりで別れたけど、ディストが呼び出してくれるなんて思ってなかった。


 こんなサプライズゲストが来るなんて、嬉しすぎる!



「あっ、ドラムじーちゃーん!!」


『久しぶりじゃな、ライム』


「あれがリュウセイさんとライムちゃんを保護してくれた竜なんですか?」


「あぁ、彼のおかげで俺とライムは路頭に迷わず済んだんだ」



 まだ竜に慣れてないケーナが、俺の近くに来てそっと腕につかまってくる。いつもとは違う感触が広がって幸せだ。


 ダルバは物怖じしない性格みたいで、笑顔を浮かべながらドラムをペタペタ触りだす。将来きっと大物になれるぞ。



「まさか竜まで来るとは驚いたぜ。タンバリーのやつも来られたら良かったんだがな」


「新しいダンジョンの利益分配で会議続きだと言ってたから残念だよ」


「ディスト様以外の竜族に会えるとは、思いもしませんでしたな」


「ほんとよねぇ、ヴァイオリ。でも、さすが私の旦那さまだわ!」



 呼んでくれたのはディストだけどな。俺もさっきまで誰か来るなんて知らなかったし。

 でも、こうしてわざわざ来てくれたのは、俺とライムの存在があったからだろう。



「また会えて嬉しいよ、ドラム」


『ワシもじゃ、リュウセイ。噂は色々聞いておったが、まさか真竜(しんりゅう)様から呼び出されるとは思わなんだぞ』


「キミがライムを見つけてくれたから、こうしてこの大陸は救われたんだよ。最大の功労者と言ってもいいくらいだね」


『ワシにはもったいないお言葉じゃな』


「後で水洗いするから、今日はゆっくりと海にでも浸かっていてくれ」



 シャワーとしても使える高圧洗浄機を父さんが作ってくれたので、それで丸洗いすれば塩水や砂はきれいに取れるだろう。なにせ太陽の光をよく吸収する黒い体だから、炎天下で座りっぱなしだと(ウロコ)で目玉焼きができるくらい熱くなりそうだ。



「ドラムじーちゃん、ライムたちといっしょに泳ぎにいこ!」


「ん……水の中は冷たくて気持ちいいよ」


「ぼく、りゅうにのってみたい!」


「それ楽しそうだね、ダルバくん! 私ものってみたい!!」


『これこれ、そう引っ張るではない。ワシが沖で島のように寝そべるから、自由に登って構わんぞ』



 ザバザバと海に入っていったドラムが沖で寝そべり、浮き輪につかまった子供たちが向かっていく。気持ちいい風が常に吹いている割に海が()いでいるのは、エレギー(赤の精霊王)モジュレ(青の精霊王)のおかげだろう。



「ドラムさんって子供好きなのかな、お兄ちゃん」


「見ず知らずの俺とライムを、森の中で外敵から守ってくれるような人だし、すごく優してく面倒見がいい竜だと思う」


「私たちも後で乗せてもらうのです」


「お背中を綺麗にお洗いするですよ」



 バニラを背中に乗せたネロがドラムの近くに泳いでいき、飛んでいったヴェルデも頭の上に乗せてもらっている。精霊王たちも背中でくつろいでるし、海の中に出来た休憩所だな。



「さて、俺はそろそろ最後のゲストを迎えに行ってくるよ」



 そう言って魔法を発動し、王都の自宅へと転移した。



◇◆◇



 玄関前に転移すると、大きな馬車が門のところに止まっている。ちょうどいいタイミングで来られたようで良かった。


 馬車から降りてきたのは、サンザ王子一家と霊獣のミルクに本の妖精女王ポーニャ、そして侍従の三人だ。



「……お兄ちゃん、こんにちは」


「今日は誘ってくれて感謝するよ、リュウセイ」


「サンザ様たちは人前で海水浴なんて出来ないからな、すごく楽しみにしてたんだ」


「カリンったら興奮して寝付けなくて、夜遅くまでポーニャさんと話をしてたのよ」


「……母上さま、それはナイショだと」


「私も……ソラさんに作ってもらった水着……着るの楽しみ……です」



 ちょうど家まで遊びに来ていたコンガーに海水浴のことを話したら、サンザ王子たちも誘ってみると言われてトントン拍子に参加が決まってしまった。カリン王女の侍従をやっている鬼人族のタルカ、それに犬人族のスワラも楽しみにしてくれてるようで何よりだ。


 なにせ、この一家がチェトレの海岸になんて行ったら大騒ぎになる。それに安全面の問題があるから、人の大勢いる場所でのんびりなんて出来ない。その点あそこは無人島だし、竜族や精霊王たち含め、かなりの戦力が集結しているから、国内でも屈指の安全性を誇るだろう。



「転移門を開くから、順番にくぐってもらえるか」


「私、泳ぐの初めてですから、コールお姉さまに教えてもらいます」


「私はミルク様と波打ち際を走りたいです」


「みゃみゃー!」



 門をくぐると楽しそうに遊んでいる家族たちが目に入る。


 妖精王のエコォウも島まで直接来てくれたようで、ヴィオレと一緒に飛んできた。何人か妖精を連れてきてくれたらしく、小さな姿が島のあちこちに見えるな。



「……ようせいさん、いっぱいです」


「間に合ってよかったよ、エコォウ」


「花の妖精たちからメッセージを受け取ったのでな、近くの者を誘って飛んできた」


「ふふふ、ちゃんと伝わったようで良かったわ」



 見たことのない羽をした人もいるけど、あれは何の妖精だろう。

 あとで聞いてみるか。



「沖にいる黒いものは、もしかして竜かい?」


「彼は俺とライムがこの世界に来たときにお世話になったドラムと言うんだ。ちょうど地脈の淀みが解消されたところだったらしくて、ディストの呼びかけでここに来てくれた」


「リュウセイの交友関係は流石としか言いようがないね」


「……ドラムさまとも、おともだちになりたいです」


「なら水着に着替えて沖に出てみよう、彼は優しいから背中に乗せてもらえるぞ」


「……およいだことないけど、だいじょうぶ?」


「浮き輪につかまれば沈む心配はないから、安心してくれ」



 首をコテンと傾けて上目遣いにこちらを見るカリン王女は可愛いすぎる。ちょっとイケナイ趣味に目覚めてしまいそうだ。




 ……っと、ラメラ王妃の笑顔が怖いので、さっさと着替えてこよう。


第3話は「洋上プラットフォーム」。

台風が来ると低周波を出します(違う)


特別なイベントが発生しなければ、来週末に投稿します。

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本編もよろしくお願いします!
色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~
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