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12/22

海水浴編 第1話「秘密兵器登場」

残暑厳しい中、いかがお過ごしでしょうか。

大型の台風も近づいていますので、お気をつけください。


さて、久しぶりに番外編の更新です。

とうとうやってまいりました海水浴回。

まだまだ夏は終わりません!(笑)


この話では、最終的に40名を超える人物が登場します。

なるべくどんな人だったか思い出せるように書いているため、地の文とか少し説明くさかったりしますので、ご了承ください。

「今年もやってきたのです!」


「ヒャッハー! ですよ」


「キュキュキューイ!」


「ピルルルルー!」


「にゃぁぁぁーう!」



 赤月(あかのつき)に突入して数日が過ぎ、今日はチェトレの沖にある無人島へやってきた。


 なるべく大勢で集まれるようにスケジュール調整をしたため、今年はじめての海水浴になる。(たい)らにならした場所に持ち運び式別荘と野営小屋を取り出し、砂浜には倍の大きさに作り直した日除け小屋も設置済みだ。


 世紀末のモヒカンキャラみたいな声を上げていたイコとライザも、別荘の方に走っていく。


 今は男女に分かれて着替え中だが、俺は後から合流するメンバーを迎えに行くため、まだ水着にはなっていない。



「おう龍青(りゅうせい)、こいつを膨らませてくれ」


「もしかして浮き輪か?」


「この世界には石油がないからビニールは作れないんだが、新素材の開発過程で水を通さない材料ができてな。そいつで作った試作品だ」



 着替え終わった父さんが両手に抱えて持ってきた浮き輪は、シリコンみたいな触感の不思議な素材でできていた。


 まだ加工の技術が確立されていないため複雑な形状は作れないらしく、シンプルなドーナツ型とマットタイプしかない。着色もできないので、全て半透明の乳白色だ。


 しかしこれは海の楽しみ方が大きく進化したと言える。

 よくよく見るとビーチボールもあるしな!



「とーさーん、きがえ終わったよ」


「ん……パパ、何してるの?」


「おっ、二人ともよく似合ってるぞ」


「さすが俺の孫たちだ、超ラブリーだな!」



 先に着替え終わったライムとクレアは、二人ともフレアタイプのセパレート水着を身につけている。上は腕と胸を取り囲むようにフリルが付き、下も超ミニのスカートになっていて、かなり可愛らしい。


 ライムは背中に出している羽の色に合わせた濃い緑で、クレアは薄いクリーム色の生地を使った、ソラ力作(りきさく)の水着だ。



「これは浮き輪と言って、空気を入れて膨らますと海で沈まなくなるんだ」


「じーちゃんがつくったの?」


「海といえば浮き輪だからな、じいちゃんとばあちゃんで頑張って作ったんだぞ」


「ん……これは世紀の大発明! パパ、私も膨らますの手伝う」


「ライムもやるー!」



 ピストン方式の空気入れを二人に渡し、四人で浮き輪を膨らませていく。ドーナツ型が大小合わせて八個、マットタイプが五個、そしてビーチボール二個に空気を入れ終わった。



「おにーちゃーん、お父さんとお母さんが浮き輪を作ったって言ってたけど、もう空気入れ終わったのー?」


「ライムとクレアに手伝ってもらったから、全部膨らんでるぞ」



 良妻賢母コンテストで高評価だった水着に着替えた真白(ましろ)が、こちらに向かって手を振りながら走ってくる。この姿を見るのは二回目だけど、やっぱり迫力がすごい。派手に動き回ってる姿は、他の男に絶対見せたくないな。


 その後から、リコとケーナが手を繋ぎながら歩いてきた。

 初めて見せる水着姿のせいか、ケーナはちょっと恥ずかしそうだ。



「リュウセイお父さんー。どう、似合ってる?」


「今年の水着もよく似合ってるぞ、リコ。それにケーナも、とても素敵だ」


「これを着るのはちょっと勇気が必要だったんですけど、喜んでもらえて嬉しいです」



 リコはライムたちと同じ、フリル付きのセパレート。ローズピンクの水着が、少女らしさを演出している。そしてケーナは真白が身につけているのと良く似た、地球のものに近いビキニタイプだ。薄手のショールを羽織っているので、そこから透けて見える青紫色の水着が素晴らしい。


 着替え終わった女性陣が次々家から出てくる。

 大人の女性が全員ビキニタイプなのは、俺の希望だ。


 ソラが超頑張ってくれた。



「ねぇねぇリュウセイくーん。お姉さんの水着だけぇ、他の人とちょっとデザインが違うんだけどぉ~」


「シエナもよく似合ってて素敵だぞ」


「そう言ってもらえるのは嬉しいんだけどぉ、どうして私だけ胸に白い布が付いてるのぉ~?」



 シエナの水着は紺色のワンピースタイプ。

 胸に白い布を縫い付け、ひらがなで〝しえな〟と書いているのはお約束!


 大人はビキニタイプと言ったが、何事にも例外はつきものだ。



「シエナは泳いだ経験がないと言ってたから、白い部分には俺たちの世界で使っている呪文を書いてみた。その布を胸につけることで、水に浮きやすくなる効果が期待できる」


「そうなんだぁ、異世界の知識って面白いねぇ~」



 機能性食品の謳い文句みたいになってしまったけど、似合いまくってるからしょうがない。これで二十九歳のお姉さんというのは反則すぎだな。


 さすがファンタージ準拠の世界!



「そろそろ他の人を迎えに行ってくるよ」



 みんなの水着姿に一通り感想を述べた後、チェトレで買い物をしているメンバーを呼ぶため、転移魔法で移動した。



◇◆◇



 今日の海水浴に誘ったのは、アージンの街にいる知り合いたち。王国認定冒険者をやってるシンバとその家族、そして緑の疾風亭で看板娘をしているシロフを呼んである。四人は水着を持っていなかったので、まずは街で買い物をしてもらった。


 ギルドに勤めているクラリネさんも誘ってみたけど、スケジュールが合わなかったので不参加だ。



「なんか可愛い子ばっかりで自信なくなっちゃうなぁ」


「シロフさんも水着がよく似合ってて素敵よ」


「あの、あっ、ありがとうございます」



 マリンブルーのセパレートタイプに着替えたシロフに、ベルが近づいていって褒めている。アージンの街に行ったときに緑の疾風亭で食事をしたことがあると言ってたので、二人は顔見知りなんだろう。


 でも、あれ? なんか忘れているような……



「ん~……どこかで見かけた気がするんですけど、ウチの宿に泊まってくれた方ですか?」


「何度か食事で利用させてもらったんだけど、この姿で会うのは初めてかしら」


「こんなきれいな人が来てくれたら、忘れるはず無いんだけどなぁ……」


「冒険者ギルドの査察官をやってる、マラクスという名前に覚えはない?」


「え!? あの素敵な男性のことは、よく覚えてますけど……

 そういえば髪の毛や瞳の色が同じですし、顔や声もよく似てますよね。兄妹とかですか?」



 あー、そうか、なにか忘れてると思ってたが、シロフの前ではずっと男性の格好だったのか。そういえば俺と結婚して以降、まだアージンに行ったことはなかった。



「その……マラクスっていうのは仕事をしてる時の変装で、本当の姿はこれなのよ」


「じゃぁ、ウチで食事をしてくれた人と、目の前の女性は同一人物……?」


「えっと、なんか(だま)してたみたいで、ごめんなさい」



 シロフは何度も視線を上下させながらが胸や下半身を凝視しているので、ベルは恥ずかしそうにモジモジしてる。ちょっと可愛い。



「わっ……私の初恋が……」


「あらら、ベルちゃんて罪な女ねぇー」


「おっ、お母様!? くすぐったいからやめてください」



 シェイキアがニヤニヤしながら、ベルの脇腹をツンツンしてる。

 体をくねくねさせてるベルは色っぽい。


 それにしても、シロフはマラクス姿のベルが初恋の相手だったのか……

 王都のギルドで性別をカミングアウトしたときも落ち込んだ女性職員が多かったけど、何だかんだですぐ立ち直っていた。シロフも強く生きて欲しい。



「シロフさん、大丈夫?」


「うっ、うわぁぁぁーん! マシロちゃーん!! 私、女の人を好きになってたなんて知らなかったよぉ~」



 気遣うように近づいていった真白に声をかけられたシロフが、目に涙を浮かべながら抱きついて胸に顔を埋める。ちょっと羨ましいぞ。


 イヤイヤをするように顔を動かしてるので、水着がずれそうになって危険だ。シロフの顔が幸せそうに見えるのは、気のせいだろうか?



「あの、ごめんなさい、シロフさん」


「うー、マラクスさんが女の人でもいいです。私を抱いてください!!」


「私はもう結婚してるから、それは出来ないわ」


「じゃぁマシロちゃん、抱いて!!」


「こうやって慰めるくらいはできるけど、私の体はお兄ちゃんのものだから無理だよ」


「それなら、えっと……確かケーナさんでしたよね? 私と添い遂げてください!」



 ショックのあまり百合に走ってるのか、シロフは!?

 ちょっと錯乱してるだけだよな?



「えっ!? わ、私ですか?」


「お母さんはリュウセイお父さんとけっこんしてるよ」


「うー、コールちゃんは私を捨てたりしないよね」


「私もリュウセイさんと結婚してるので、ごめんなさい!」



 クリムやアズルにも断られ、シロフの顔がどんどん絶望に染まっていく。


 ここにいる女性陣に声をかけても無駄だぞ。

 まだ傷は浅い、そろそろ諦めるんだ。



「リュウセイ君って、いったい何人と結婚してるのー!?」


「ここにいる女性ほぼ全員とだな」


「それならもう、私もついでに貰ってよー」


「その場の勢いで何を言い出すんだ、シロフ。ちょっと落ち着いてくれ」



 シロフの祖母であるサラスさんに結婚を勧められたことはあるけど、そんな簡単に決めていいものじゃないだろう。そもそも、あの親父さんがすんなり承認するとは思えない。



「こうなったら心の隙間を埋められるのは、リュウセイくん似のダンディーなおじさまだけです!!」


「俺か!?」


広墨(ひろずみ)さんは私の旦那様だから、手を出したらダメよ?」


「あっ、はい、ごめんなさい」



 おぉぅ、母さんの背後に般若が見える。

 錯乱気味だったシロフの気勢も一気に鎮火した。さすが母さんだ!


 父さんも全身から冷や汗を流して、「ウワキ、ダメ、ゼッタイ」と言ってるな。






 初っ端からカオスな状況になってしまったが、こうして今年初の海水浴が始まった。


明日に第2話を投稿します。

恐らく全8話くらいになるんじゃないかと(なればいいなw)

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本編もよろしくお願いします!
色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~
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