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第一幕

《次のニュースです。昨夜、また魔法少女が襲われる事件が発生しました。襲われた魔法少女には怪我は無く、今は順調に回復しているとのことです》

「物騒よね」

「そうね。やっぱり戦う力があるとはいえ、小さな女の子だからね。いやだわ、本当に。これは変態の仕業よ、絶対!!」


 目の前で、スマホでニュースを観ている女子高生二人。俺は、せっせとクレープの生地を焼き、クリームにイチゴ、チョコレートなどトッピングしていく。

 それを包み込み、もうひとつ。

 二つ目はイチゴではなく、バナナとチョコレートだ。


「お待たせしました。クレープ二つ」

「ありがとう、店員さん!」

「ねえ、店員さんはどう思う?」

「どうとは?」


 わかっているくせに、いったい何のことなのかと首を傾げる。


「このニュースだよ! ほら、魔法少女達が襲われるっていう!」


 バナナチョコの女子高生がスマホを突きつけてくる。そこでは、でっかくまた魔法少女深夜に襲われる! と表示されていた。


「あぁ、それですか」

「この店、小学校の近くだから、よく魔法少女な子も来るでしょ?」

「まあ、それなりに」


 俺がやっているクレープ屋の近くには、この辺りでは有名な小学校がある。ちなみに、さっきから魔法少女魔法少女と言っているが、別にコスプレをしている人のことではない。

 本当の魔法少女だ。

 魔法という存在が知れ渡ったのは、今から百年以上も前のこと。世界に謎の隕石が降ってきたことをきっかけに、地球に多大な影響を及ぼした。


 例えば、突然何もないところから炎を出せたり、風を起こせたりと。超能力だ! と最初は騒いだが、後現れた謎の男が、それは魔法だと証言する。

 謎の男の名は【M】だ。当然だが、これは偽名だろう。しかし、そのMと共に地球に降ってきた隕石を会席したところ、今までには見たことがないエネルギーを含んでいることを知る。

 それが魔力だった。

 それからはとんとん拍子に、魔法という存在が広まっていった。それから、年月は経ち現在。


 こうやって普通に魔法少女という存在がニュースに出てもおかしいと思う人達はいなくなるほど、魔法というものが地球の常識になったのだ。

 ちなみに魔法少女というのは、魔法を使う少女の呼称というわけではない。魔法を使える少女の中でも頭一つ抜けた能力と個性を持った少女のことで、政府から認められた存在なのだ。


 ちなみにその逆で魔法少年というのも居るが、まだ数は少ない。

 ぶっちゃけ、魔法少年よりも魔法使いのほうがいい! と言う者が多い。まあ、昔から魔法少女というジャンルが流行っていて、魔法少年というものがそこまでじゃなかったのが原因だと言われているが……一部では、魔法少女が居るなら魔法少年だってありだろ! という意見もある。


「なにか聞いてない?」

「そうですねぇ……俺は別に」

「そっかぁ」

「まあでも、怪我もないようですし、もしかしたら魔法少女同士の争いって落ちかもしれませんよ?」


 政府から認められた魔法少女は、地球に起こる事件などに関与することができる権利がある。まだ幼い子供だと思うと怪我じゃすまない。

 今では、ほとんどの人間が普通に魔法を使える時代だが、魔法少女は本当に頭一つ抜けている。


「かもねぇ。じゃあ、私達は行くね。またクレープ買いにくるから!」

「ばいばーい!」

「はい、またのお越しを」


 女子高生二人を見送ると、それと同時に店の端っこにあり、客から見えない壁が光出す。

 そこに映ったのは映ったのはオレンジ色の髪の毛をした白衣の青年。

 イケメンだが、どこか軽い性格をしてそうな顔だ。

 

《よっ、清護。お待たせ》

「連絡してきたってことは……できたんだな」

《ああ。この天才に不可能はねぇってこった!!》

「そのわりには時間がかかったようだが? 一年だったか?」


 こいつは、俺の親友である科学者で坂口カイル。

 父親が日本人、母親がアメリカ人のハーフだ。こいつの家は、科学者として世界に多大な貢献をしてきた。そんな父親の血をしっかりと受け継いだカイルは、俺に頼まれてとあるものを作っていた。

 それがようやく完成したようだ。


《それを言うなよ。いくら俺が天才でも、未確認のものを探すための道具をすぐ作れるわけないだろ?》

「悪かったよ。じゃあ、今からそっちに行く」

《おう。土産はあまーい! クレープな! クリームとチョコレートたっぷりの!!》

「はいはい」


 そして、通信は切れる。俺は少し早いが店を閉じようとエプロンに手をかける。

 が、そこへ小さなお客さんが現れた。


「あ、あの、もうお店仕舞っちゃうんですか?」


 金色の長い髪の毛に翡翠色の瞳。翼の形をヘアピンをつけており、背中には赤いランドセルを背負っていた。

 

「ごめんな、ちょっとはずせない用事がこれからあるんだ」

「そう、ですか……」


 しゅんっとあからさまに落ち込まれるので、俺はクレープの生地を作り始める。


「けど、せっかく来てくれたんだ。俺のおごりで作ってあげるよ」

「そんなおごりだなんて」


 少女は、遠慮しているが、明らかに食べたそうにトッピングを見詰めている。


「良いんだって。君、ずっとこの店を遠くから見ていた子だろ?」

「え? き、気づいていたんですか?」

「もちろん。初めてみる子だったからね、気になっていたんだ」


 別にそういう意味で気になっていたわけではない。この子は、ずっと遠くからこの店を見ていた。それも一週間ほど前から毎日のように。

 だが、結局クレープを買わずにそのまま落ち込んだ様子で帰っていく。

 今日は、ようやく勇気を振り絞って買いに来たといったところだろう。そんな子を放っておくなんて、俺にはできない。


「さあ、なんでもいいですよ。好みのトッピングを言ってください、お客様」

「えと……じゃあ、チョコバナナを」

「はい。チョコバナナですね。少々お待ちください」


 出来上がった生地に、俺は生クリームとバナナ、そこへチョコレートソースをかけていく。

 

「チョコバナナ、お待ちどおさま」

「ありがとうございます! ……わぁ、おいしそう」


 まるで食べるのがもったいないとでも思っていそうな輝いた表情をしている。

 

「俺は、毎日この時間帯にここに居るから。また食べたくなったら、ここに来れば食べられるよ」

「は、はい!」

「それじゃ、俺はこれで」


 小さなお客様が帰ったのを見送り、周囲を見渡す。

 他に客がいないことを確認した俺は、店を閉じてから、土産用のクレープを作ってから、裏のドアを開けて、奥へと進んでいく。

 何もない壁で止まって、俺は手で触れた。

 青白い光の粒子が足下から広がり、体を包んだと思いきや、床が動き、下へと動く。


「よっ!」

「部屋で待ってろよ」


 床が止まったと思いきや、目の前にカイルがにこやかな笑顔で出迎えてくれた。


「クレープが欲しくてな」

「はいはい。それで、例のものは?」


 クレープを渡しながら、俺が問うと、カイルは奥のほうだと指で示す。俺は、頷き、クレープを食べているカイルと共に奥へと進んだ。

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