プロローグ
「はっはっはっはっは!!」
「くっ! 親父……何をしているのかわかってんのか!?」
紅蓮に燃え盛る建物の中で、俺は叫ぶ。
狂ったように高笑いする実の父親に。
その手には、巨大なクリスタルが掴まれている。正直に言えば、あれは世界を崩壊させかねない代物だ。あれを俺達はの家系は代々守ってきた。
それなのに、何を思ったのか。
親父が突然屋敷の使用人達や母さんまで手にかけてまで、クリスタルを手にした。
俺は信じられない。
悪ふざけをする親父だったが、こんな度が過ぎる。なによりも、あの様子……誰かに操られているようにしか見えない。
「何を言おうが、俺は止まらん!! この世を……我が色に染めるために!! さあ、我が復活のための一歩を刻もうぞ!!」
やっぱり誰かに操られているようだ。いったい誰なのかはわからないが、自分の復活がために父さんを操り、母さんを手に……!
全身が痛む。
なんでだ……なんで、俺の体は動かない! 全身から血が流れているからか? 足の骨が折れたからか? 情けない。今の俺はなんて無力なんだ……!
「やめろおおおおおっ!!!」
「もう遅いわぁ!!!」
そして、クリスタルをおもむろに謎の力で砕いた。砕けたクリスタルは、欠片となり一目散にどこかへと散っていく。
「くははははは……これで、後は育つのを待つのみ……くははは……では、我はそれまでまた一眠りすると、しよう……」
「親父……!」
もう親父の体も限界なのか、クリスタルを砕いた瞬間から血を流しながら倒れる。
その後、ぴくっと親父の体が跳ねたと思えば、よたよたと、動けない俺の傍まで近づいてくる。
親父だ。間違いない、今の親父はいつもの……。
「おや、じ……」
「……集める、んだ……」
集める? それってさっきのクリスタルの欠片をってことか? ……だめだ、意識がだんだん薄れて。
「……すまん、操られていたとはいえ、皆を……母さんを……」
「そんな、こと……!」
気にするなと言いたかったが、もう意識が。
「護ってくれ……この、世界を……あいつを……魔神の復活を、阻止してくれ……俺はもう、だめだ」
そう言って、親父が俺の手に何かを握らせた。
その後、俺の意識は途切れる。
俺が目覚めたのは病院のベッドの上。包帯を体中にぐるぐると巻いて、ほとんど身動きがとれない状態だった。
屋敷にいたもので、助かったのは俺だけ。
使用人達も、母さんも焼死体として見つかった。どうして、俺だけが助かったのか。後で、救急隊員の一人に聞いたのだが、俺一人だけが屋敷の外で倒れていたそうだ。
俺はベッドの中で、誓った。
親父が最後に俺へ託したことを成し遂げようと。
この世界を護るために……散らばったクリスタルの欠片を全て回収して、復活を阻止する。
魔神の復活を。