今日の会話〜平成最後の日〜
平成最後の投稿は、『平成最後の日』の一時の会話です。
焼き鳥ではタレ味と塩味、どちらが美味しいかというように、二択を巡っての主張のし合いや、ある一つの外見や使い方を題に論争するのは、恐らくどこの国でも誰でも一度は経験があり、平和の証拠ではないかと、私は思っている。
ここで、私のオススメである、とある3人の論争……いや、会話を覗いてみよう。
マジメさが取り柄のスミレ。
高身長でルックス抜群のサク。
金持ちのお嬢様であるツバキ。
今日は何を題に、盛り上がりを見せてくれるのだろうか。
「平成最後の日に……カンパーイ!」
「「カンパーイ!!」」
3人は仲良く、缶チューハイを鳴らした。
―――ここはツバキの部屋。
父は幾つもの病院を経営する院長、母は洋服ブランドのデザイナー。
お金持ちのお嬢様である、家という名の屋敷の一部屋。大型テレビにオーダーカーテン、一人で寝るには有り余る程のベッド。文字におこすだけでも羨ましい。
「いよいよ『平成』も終わっちゃうね」
「だな」
そう、今日は正真正銘、『平成最後の日』。
あと十数分で年号が変わってしまう。
テレビの生中継では、全国各地の様子を放送している。
主要駅の近くの繁華街、中継を受け入れたバーや居酒屋、特別に解放されている国立公園 など。
これからの時代を築く若者がまるでお祭り騒ぎである。
「新時代を作るって言っても、まだピンとこないよねー」
「正確には”まだ“新時代じゃないしな」
「たしかに」
ここの3人も若者であるが、片手に缶チューハイを収めながら、ボソボソのつまみに手を伸ばす。
悪く言えば根暗に見えなくもない。
「あ!ねぇねぇ、予想しようよ!」
「なにを?」
「新時代、最初のビッグニュース!」
「面白そうね!」
女子2人の盛り上がりは止められそうにない。
お嬢様で庶民的なことが好きなツバキと、平民であり貧乏よりでアニメが大好きなスミレ。
なぜ、この2人がこんなに仲が良いのか、未だにサクには理解ができていない。
「ビッグニュースって、基準はなんだ?」
「世界的なニュース!ほら、少し前に世界遺産が火事に巻き込まれたでしょ?そんな感じのやつ」
有名な世界遺産が火事に遭ったことは、日本はもちろん世界各地で報道された。
そのレベルに匹敵するビッグニュースなど、起きてほしくないものだが。
「そうねぇ……海賊の財宝の発見、かしら」
「今、太平洋で捜索されてるっていう?」
「えぇ」
ここ数年、太平洋で海賊船が沈没したという資料の信憑性が増し、科学者たちが捜索しているらしい。
財宝の中には金銀の類いはもちろん、幻とまで言われている宝石があるのではと推測されている。
「楽しみねー、ロマンだわ!」
「好きだねぇ、そういうの。サクは?」
「UMAの捕獲」
UMAとは未確認生物のこと。雪男や人魚も含まれ、一番有名なのはネス湖の住人だろうか。
「好きだっけ?そういうの」
「実在する証明をでっちあげることは簡単だが、実在しない証明をするのは難関だからな」
無論だが、あくまでサクの個人的な意見である。
「あー、たしかにね。昔、UMA捕獲の新聞が発行されたのって嘘だったんでしょ?」
「今時、フェイクは通用しないからな」
「UFOも興味あるね、宇宙交流」
頷きながら缶チューハイを飲むサク。勉強家で現実的な性格だが、非現実的とも捉えられるUMAなどを否定しないのも、女性を惹きつける一面である。
「スミレは?」
「首都直下型地震」
「「現実的」」
サクとツバキは音程さえもハモった。
首都直下型地震とは字の通りで、東京都を中心とした地震のことだ。
地球のプレートの上にある日本の特徴ともいえる地震は、毎日、震度1が何処かしらで発生していると専門家は言う。
「え、そういう感じのを言うの?」
「そーだよ?もちろん、海賊の財宝もUMAも現実的でアリだよ?」
「ソレ出されたら俺、変えたいんだが」
「なに?」
「南海トラフ地震」
「「現実的」」
今度はスミレとツバキがハモった。
南海トラフ地震とは日本の南、つまり太平洋に面している県を中心に起きると予測されている地震のこと。
正確には陸ではなく沖で発生した地震が津波を引き起こし、海に面している県は津波により、膨大な被害を受けると予測されている。
「南海トラフ地震の方が、発生する確率は高いからな」
「太平洋に面してる県が聞いたら怒るわよ」
「首都直下型地震だって30年以内に起きるっていわれてるもん。しかも津波が発生した場合には東京の4分の1は沈むからね。空港も千葉の夢の国も無事じゃないからね」
「そっちの方面に怒られるわよ。何を張り合っているの?」
「大阪の夢の国だって無事じゃ済まないだろ」
「東京の交通網が麻痺したら日本終わるからね。テレビ局だって都心にあるし」
「ストップストップ!」
拍車の掛かりかけた2人を全力で止めるツバキ。2匹の馬がこれ以上、暴走したら日本国民に嫌われてしまう。
「張り合うのは被害の大きさじゃなくて、ビッグニュースの予想でしょ?」
「そーだった」
「俺は南海トラフ地震に変更で」
「私は首都直下型地震ね」
「私も変えたいわ」
もうビッグニュースの予想というより、確率の問題になっている気もしなくもない。
咳払いをしてから自信あり気に発表する。
「サクとスミレ、どちらかの赤ちゃんを見ること!」
「「非、現実的」」
今度はサクとスミレが見事なハモりをみせたが、理由もなく全否定する2人に対し、
「なんでよ!?」
と叫ばずにはいられなかったツバキであった。
新時代の世界的なビッグニュース、あなたは何を予想しますか?
新時代に入るのは日本だけですが……。
ちなみに私は、日本の象徴の現役引退二度目に一票。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
新時代・令和も、宜しくお願いいたします。