水族館デート
大人の恋愛小説です。
けしてエロくないです。
あれから、どれくらいHの事ばかり
考えてたか分からないけど
いつの間にか眠りについて次の日の朝を迎えた。
悠より後に寝たのに
悠より先に目が覚めた。
気持ちよさそうに寝てるなぁ…。
起こさないように、ゆっくりとベッドを出た。
そーっと、そーっと…
音がしないようにドアを開けてリビングへ。
今日の天気は快晴!!
カーテンを開けると
空は海のようにどこまでも青く、雲一つない。
何だか吸い込まれそうになる。
鳥達の鳴き声が聞こえてきて
私の心まで晴れ渡る。
こんな日はピクニックとかしたら楽しそう!
私ってやっぱり子供っぽいかな?!
ご飯を用意して悠を起こしに行こう。
朝は簡単にトーストでいいよね。
といっても、もぉ10時になるんだけど…。
コーヒーメーカーをセットして
パンをトースターにセットする。
コーヒーメーカーがコポコポと
陽気な音を奏で始めてから
トースターのスイッチを入れた。
寝室に向かいカーテンを勢いよく開けて
薄暗かった部屋に光が差し込む。
「悠、おはよー!」
急に部屋が明るくなり
悠は眩しくて目が開けられない。
背筋をうーんと伸ばしてから、
ゆっくりと目を開け、悠は起きた。
まだ眠そう…
寝癖がついてて左側の髪が外に広がっている。
……可愛い。
「まだ眠そうだけど大丈夫?」
「おかげさまで、ぐっすり!
寝起きはいつもこんなんだよ。」
そういえば私、悠より先に起きたの初めてだ。
いつも、悠が先に起きてたね。
「それならよかったー!
今日は、凄くいい天気だよ」
窓の外を指差しながらそう伝えると
悠が窓の外を見て。
「うわー、本当だな。
外で寝転んだら気持ち良さそうだな」
私もそう思ったよ。
寝室を出て、トースターの中で
こんがりときつね色に焼けたパンをお皿に出し、
ペアのマグカップにコーヒーを注ぐ。
悠は顔を洗って席に着く。
私はパンとコーヒー、
マーガリンとイチゴジャムを
テーブルに運んで席に着く。
1度、悠とアイコンタクトをとり
タイミングを合わせて合掌して
いただきますをした。
悠はマーガリンだけを塗って食べ始める。
甘党の私はジャムとマーガリンを塗って頬張った。
「DVDでも見ながら食べよっか?」
「それいいね!」
悠の家のテレビ台の引き出しには
DVDがたくさんある。
その中から見たことのない映画のタイトルを
選択した。
マイアミバイスという洋画。
他にも見たことない映画のタイトルが
何作かあったけど
何となく惹かれてチョイスすると、
悠は慣れた手付きで
DVDをデッキにセットする。
本っ当、何をしても様になって
かっこいい…。
マイアミバイスを見ながら、どこに行くかも決めた。
早々に食事を終えて映画に夢中になる。
悠は何回も見たからいいよ、
と言って、洗い物をしてくれた。
私は“ありがとう”と言い、
そのまま映画を観ることに没頭していた。
数時間後…
「面白かったぁ。めっちゃカッコ良かった!
あのボートみたいなの乗ってみたい!!」
「それはよかった!!
そろそろいい時間だし、支度するか?」
「うん、そぉだね。」
気が付いたら13時になろうとしてる。
悠は着替えて軽く髪をセットして支度を終えた。
本当、男の人はすぐに支度ができて羨ましい。
待たせるのも嫌だしなるべく急ごう。
「真由、あんまり気にしなくていいからな?
まだまだ時間あるんだし、ゆっくりでいいよ」
優しい気遣いの言葉をくれる。
「うん!ありがとっ。」
私は素直に悠の言葉に甘えた。
化粧、髪の毛…最後に服を着替えた。
よっし!!
これで完成。
「悠、お待たせ!準備できたよ」
悠が笑顔でこちらを見る。
「今日も可愛いな」
うっっ。
急にそんなこと言われると照れるよ。
「あ、ありがとう」
可愛いって言われる度に
顔がリンゴかってくらい赤くなって照れちゃう。
こればっかりは慣れない……
「じゃあ、行きますか!忘れ物するなよー」
テレビを消しながらソファーから腰をあげる悠。
「はーいっ。」
私も悠の後に続いて、忘れ物をチェックをする。
よし、大丈夫!!
「真由、鍵よろしく!俺、車出してくる」
そう言うと悠は先に玄関を出た。
私は最後に窓の鍵の確認をして
靴を履いて玄関を出る。
エレベーターで1階に降り、
エントランスを通って外に出ると
目の前には、既に悠の車が停まっていた。
窓越しから見える悠…
インスタ映えなかっこよさ!!
って…言い過ぎ!?
「ありがとー!」
そぉ言って車に乗り込む。
「さぁ、行くぞっ!」
車は景気よく走りだした。
窓を少し開けると、新緑の香りが車内に広がる。
「今日は、やばい位に気持ちいいな!
水族館日和だな!」
「水族館日和って…!」
悠の意味の分かんない言葉にツッコミを入れると
2人して大笑いした。
高速道路に乗って少し遠い
有名な水族館に向かう。
朝食の時に悠がイルカが見たいからって
決めた場所。
はしゃぎながら私の顔を見る悠の姿が
めっちゃ可愛いかった。
急に少年っぽくなるとこが
かなりギャップ萌!!
たまんない…。
「俺、彼女と行った事なくて、
行ってみたかったんだよな」
何、その急なカミングアウト。
水族館デート初めてなんだね。
なんか意外…
だって悠って経験豊富そうなのに。
私なんて、全部、悠が初めてだよ…。
車は目的地の水族館へと近づく。
道に詳しい悠。
さすがでしょ?
ナビが付いてるのに使ってるのを見たことがない。
高速道路を降りて目的地の看板が
あと少しで着くことを知らせてくれる。
赤信号で停止すると
悠が名前を呼ぶから振り向いたら
突然、キスをされた。
凄く些細な事だと思う。
一緒に居る事も、車の中での事も……
それでも私はすっごく嬉しいし、
悠の些細な行動一つ一つが
私の心をいっぱいにして
幸せな気持ちで満たされる。
悠が初めてでよかった。
悠が私を選んでくれてよかった。
そんな風に浸りながら外を眺めていたら
あっという間に目的地に着いた。
フリーパスを買って、いざ園内へ。
もちろん、手を繋いで。
ここの水族館はドラマにもよく出てくる
デートスポットなんだ。
日曜日だから、やっぱり凄い数の人。
家族連れや、カップル…
1番目をひくのは
楽しそうにはしゃぐ小さい子供達の笑顔。
悠も私も、その子達に負けないくらい
はしゃいでいた。
色んなところで写真を撮った。
魚や自分達を。
ふれあいコーナーで
悠がヒトデをつんつんしてた写真が
私の中のベストショット。
待ち受けにしちゃおうかな…
いっぱい撮ってフォトブック作りたいね
なんて話もしてた。
思い出が、どんどんと増えていく。
「真由~喉かわかない?」
「あぁ、確かにっ!かわいたかも…」
「飲み物買いに行ってくるから、
そこのベンチで少し休憩してな」
「私も一緒に行きたい」
ワガママを言って
私と悠は仲良く飲み物を買いにいく。
悠はアイスコーヒー。
私はメロンソーダを買った。
ベンチに座って、たわいもない会話をする。
悠との会話は途切れない。
毎日一緒なのに、話題がつきないんだよね。
こうして居られるのも悠とだから。
悠のおかげ。
「もうすぐイルカショーの時間だよ!
楽しみだね、悠。」
自分の時計で時間を確認する悠。
「本当だな。これ飲んだら、
もぉ少し見て回ってイルカの所に行こう」
「うん、ペンギンまだ見てないから見たいっ!!」
「よっし!ペンギンさん見に行くか!」
「わーいっ」
ペンギンさんって…
可愛すぎるでしょ…
ガイドブックを頼りにペンギンコーナーに向かう。
ヨチヨチヨチ…。
そんな風に聞こえてきそうな
歩き方のペンギン達。
めっちゃ可愛い!!
悠ってばペンギンに話かけちゃってるし!!
凄く楽しそう。
「なんか真由って、
ペンギンに似てない?歩き方とか…」
「えぇ!どの辺が?
ちゃんと歩いてるつもりだけど」
「あははっ。冗談だよ!!怒るなって!」
大笑いしながら1人、楽しそうな悠。
もぉっ…悠のばかっ!
少しイジけてペンギンを見てると、
後ろから急に抱き締められた。
悠の温もり。
悠の腕。
悠の匂い。
その全てが愛おしくて
後ろから回された腕をつかむ。
周りにたくさん人が居るのに
この時間を失いたくなくて
気にすることも出来ない。
「機嫌…直った?
このままずっと、こうしてたいな」
「怒ってないよ。悠、大好きだよ。
大丈夫、悠と私はずっと一緒だもん…」
“ずっとこのままがいい”って、
私も同じ気持ちだよ。
「約束だぞ、真由」
「うん、約束。」
約束は守る為にあるもの。
昔、小さい頃にお母さんがよく言ってた。
守れないのなら、始めからしないでほしい。
私は守りたい。
悠との約束を……。
「そろそろイルカショー始まっちゃうよ」
「お、移動するか」
そう言って悠が腕をほどき、
今度は手を握った。
「ペンギンさん、またなー!」
我慢しきれずに、思わず吹いてしまう。
だって……
おかしすぎるんだもん。
さっきから何度も
ペンギンさん、ペンギンさんって…。
ギャップがありすぎる!!
「悠、それわざと?ギャップ萌すぎだから!」
笑い声まじりに言うと
え?何が?って感じで悠がキョトンとするから
何でもないって言って、教えてあげないことにした。
パシャン!
パシャンっっ!!
今日、1番の目的、イルカショーが始まる。
席には沢山の人。
目の前には透き通った大きなプール。
風が吹くと水面が揺れる。
インストラクターの女の人が軽く挨拶をして
イルカ達が紹介され、2頭入場してくる。
手でイルカの方を指し
「こっちがオスのジュン君で、こっちがメスのキューちゃんでーす!!」
私も悠もテンションが上がっていく。
周りの人達も同じ気分なんだと思う。
まるで子供にでも戻った気分……。
イルカ達のショーはなんだかとても懐かしい気持ちになる。
だって小さい頃、両親と見て以来だから。
悠は手を叩いて大はしゃぎしてる!
フラフープをくぐったりボールをキャッチしたり…
すっごく可愛いかった。
広いプールを、あっちに行ったり
こっちに来たりで目で追うのも大変。
「今日は皆さんありがとうございました!
ジュンくんとキューちゃんでしたー!」
沢山の拍手と声援でイルカショーは幕を閉じた。
私も悠も興奮冷めやらぬまま会場を後にする。
ショーが終わった頃には夕方で
空がオレンジ色に染まっていた。
イルカショーの前に一通りの展示を見終えてた
私達は、そろそろ帰ろうってことになって
水族館を後にした。
一つの会話で、こんなに話が盛り上がる!?
ってくらい車内はずっと今日の水族館の思い出話。
沢山笑って、沢山はしゃいで
沢山写真も撮れた。
一つ一つの出来事が記憶にしっかりと刻まれた。
悠との思い出が…また一つ増えた。
もっともっと二人の思い出を増やしていきたい。
心の中で、そう思った。
10年前にエブリスタのサイトで
完結した作品です。
表現などを修正してまた更新します。
色々な人に届きますように。