可能性
「…今日の授業は此処までとしよう。明日から楽しみだよ」
「先生、ありがとうございました」
僕の魔法練習の時は様子が大分可笑しかったが、授業の後半は最初に会った時と同じ不思議な感じの先生に戻っていた。
今日だけでも結構分かったことがある。僕の【初級魔法】は他の魔法に比べ威力がない分、魔力の消費量が少なくて済むこと。放った後の魔法を操作しやすいこと。そして一番の収穫が離れた場所から狙った所に魔法を行使できることだ。
「…僕も戦えるようになれるんだぁ」
戦闘面では力になることはもう出来ないと思っていた。僕の強みはちゃんと在ったんだ…練習してものにしよう、僕は寮のベッドの中でそう堅く決心した。
アイトが寮に戻った頃、二回目の会談が設けられていた。そこには前と同じ顔ぶれに加え、1人の男性が立っていた。
「彼は…離れた場所からの魔法の行使を成功させました。『賢者』や『魔女』でさえ不可能とされた緻密な魔力操作をです」
「その子、まだ12歳だったかな?僕としても彼に興味が湧いてくるなぁ~」
金色の髪のチャラチャラとした格好の男性はニヤリと笑った。
「隠密部隊をつけると反って危険だ。アイト君は勘が鋭いからな…私の知り合いに頼んでおこう」
「ありがとうございます」
「僕も機会が在れば話してみたいよ」
「彼は天才だそうだ、君とは気が合うかもしれない」
凛々しい女性と陽気な男性が笑っているとやれやれといった顔色をし、女性が部屋を出る。それではと男性も席を立った。残された女性は暫く書類の整理をしていたが、それが終わると不適な笑みを浮かべ部屋を後にした。