ステータス
ミフォンさんに連れて来られたのは学院長室…質素な感じの物揃えだが、僕が思っているよりもっとずっと高価な物ばかりだろう。
「…改めてすまなかったね」
「いえ、顔を上げてください」
「そう言ってくれると助かるよ。…さて、本題に入ろうか」
ミフォンさんの表情がガラッと変わり、僕は思わず顔を引き締めた。どうか学院を蹴られませんように!僕は必死に神頼みをしながら彼女が口を開くのを待った。
「まず、君の【初級魔法】について…君もなんとなく分かっているだろうが他の職業と同じような初級スキルだ」
「…やっぱり、そうですか」
「ああ。だが、この学院は魔法適性のある者を拒んだりはしないから安心してくれて良い」
初級スキル…それは魔法使い以外が与えられることがあるスキル。初級、中級、高等、神聖と『階級』《クラス》があり、初級は負け組中級以上は勝ち組とされている。約束された未来をもつ魔法使い、今までそのように云われてきていた。
だが、魔法至上主義が僕の登場により罷り通らなくなってしまった。
「ただ…君は魔法の歴史上、都合が悪い存在なんだ」
女性は少年に対する罪悪感からか歯切れ悪く、渋った顔で告げた。
「そうですね」
「…普通なら少なくとも落ち込むところなんだが」
しかし、彼女の心配を余所に少年は、そんなことは気にならないとでもいう風にけろっとした表情で返答する。
「魔法が学べれば僕は大丈夫ですから」
僕はそれを聞いてもあまり落ち込みはしなかった。魔法で戦いに参加する事は出来ないが、魔法の研究に貢献する事は出来るからだ。『魔法研究会』に所属して、役に立てるならそれも悪くない気がする。
そういう風に思えるのは、もしかしたら父さんがかけてくれた《精神強化》の魔法の効果もあるかもしれない。ただ…あの視線には慣れていかないといけない。
「そうか…強いな、君は」
小さな拳を握る少年を見て、思う所があったのだろう…金色の髪をした女性はふと、そんな言葉をこぼした。
「ミフォンさん程じゃありません」
「はは。聞こえてしまったか。その歳でそれなら充分驚嘆に値するさ。そうだな、君にまだスキルがないか見ておかないか?」
ミフォンさんは力なく笑うと、立ち上がって何処かへ行き、数分後さっきの水晶とは違うものを持って戻って来た。
「これは冒険者ギルド用に造られた水晶で、魔法以外の適性スキルも全て判る代物だ。さぁ、どうする?」
「えっと、使わせてもらいます!」
明るい薄緑色の水晶に手を置くと頭の中に直接ステータスが浮かび上がった。
アイト・ナイアータ Lv.1 人間 魔法使い
HP:100(生命力)MP:60(魔力量)
STR:10(筋力)VIT:10(耐久力)
DEX:150(器用さ)AGI:100(素早さ)
INT:200(知力、理解力)MGI:10(魔力)
【スキル】
初級魔法 真眼 ****
〔称号〕
なし
「…なんだろう?見えないスキルがある」
「どうかしたか?出来れば君のステータスを把握しておきたいのだが、私にも見せてもらえるか?」
僕のステータスを見たミフォンさんは暫く固まりやがて僕に対して、「…君は誰にもステータスを知られてはいけないよ」と忠告の言葉を掛けるのだった。