嵐の前の賑やかさ
村から出発して数時間が経ち、僕は知らぬ間に王都の門を通りすぎていた。
目の前には僕の入学予定の『グリモワール魔法学院』が聳え建っていて、もうすぐ到着するだろう。
僕は御者さんにお礼を告げると、学院へと入っていった。
学院の中庭に人が密集しているのでそこに行けば良いのだろうか。
その場で困り、固まっていると凜とした雰囲気を漂わせる女性が声を掛けて来た。
「君がアイト君だな?ガレスから話は聞いているよ。将来が楽しみだ」
「はは。ということは貴方がミフォンさんですか?」
「如何にも私がミフォン・マイラーだ。…それにしても本当に少年なのか?君は」
「酷いですね。僕は立派に男の子ですよ?」
可愛らしい少女の容姿を持つ少年は手を腰に当て、美形の女性に対し怒りをぶつける。声を荒げていないのであまり怒ってはいないのだろう。
しかし、少年の思いは届かない。
理由は明白で、怒っているであろう顔がちっとも怖くない。寧ろ、少年の愛らしさを引き立てている為逆効果な気さえする。
「あはは、すまなかったね。お詫びに君の並ぶ列へ案内しよう」
…上手い具合に逃げられた。少年は心中そう思ったが、入学する事が最優先事項なので追及は断念した。