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こんにちは異世界

「あれ・・・?」


さっきまでは確かに家の近くの公園にいたんだ。でも、サッカーボールを林の方に蹴飛ばしちゃったから、茂みに入って探そうとして・・・それで・・・。


 「・・・?・・・白い穴」


後ろを振り返ると、自分の背丈ほどの大きさの白い穴があった。もしかしたら、気付かないうちにあそこを潜ってきたのかもしれない。穴を覗き込んでみると、そこには元いた公園の林の風景が広がっていた。


 (これは・・・面白いものを見つけちゃったのかも!)


僕は未知との遭遇に心を躍らせていた。小学校に入学してから友達作りに失敗し、毎日一人でサッカーボールと戯れていたから、こういう突然の出来事には驚いたし不安もあったけど、なんだか探検みたいでわくわくするし。


 「ちょっとだけなら・・・いいよね?」


僕は誰に聞くでもなくそうつぶやくと、もう一度白い穴の中に入っていった。そこには公園の林の木々とは明らかに異なる種類の木々や草花が生えていた。一言でいうとジャングルっぽい。まだちゃんと出口があることを確認して、枝葉をかき分けながら僕はどんどん前に進んでいった。





しばらく歩いていると、水が流れる音が聞こえて、大きな川に突き当たった。生き物が見られるかもしれないと思って覗き込んでみると、やはり魚がいた。しかし、僕が知っている川魚とは似ても似つかないような奇妙な形の魚だった。その魚はゆっくりと下流に向かって泳いで行く。


(川の流れに沿って行けば、もっと変な生き物が見られるかもしれない・・・!)


そう思った僕は勢いよく川下に向かって走り出した。この時には、帰りの出口がどこにあったかなんて気にならなくなるくらい僕は興奮していた。だって、僕にとっては世紀の大発見ってやつだったから。そのうち、川の流れが細くなってきて、水の深さもだいぶ浅くなってきた頃、僕は女の子が川の中に入っていくのを見た。歳はちょうど僕の同じくらいだろうか。長く透き通るような金髪に、小学校らしい年相応の体つきをしている。なんでお風呂ではなく川なのに全裸なんだろうか、なんて思いながらこれはちょっとまずいことになりそうだと考えていると。


「だ、だれ・・・!」


女の子は体を腕で隠すようにすると、キッとした目でこちらを見据える。

案の上見つかってしまったのですぐに後ろに向きなおりながら


「ご、ごめんなさい!珍しい魚に気を取られて、君がいるって気が付かなくて・・・」


素直に謝った。しばらくそのままの体勢でいると、女の子は服を着て僕のすぐ横まで来て怪訝そうな顔をして言った。


「私はアンナ。見かけない顔だけど・・・。名前は?どこの村の出身?」


村?村って市区町村の村のことだろうか?だとすると僕の住んでいるところは富沢区より下はないので富沢になるのだろうか。


「えっと、僕の名前はタツヤ。村は富沢だよ」

「トミザワ?そんな村聞いたことない。わたしがさっきのことを誰かに言いふらすと思って嘘ついてない?」

「いや!本当だよ!」

「あやしいな~。けどまぁ、そういうことにしといてあげる。私も不用心だったのは認めるし。そんな悪い人にも見えなから」


これではっきりした。やはりここは僕が住んでいる世界とは違う世界のようだ。ん?でもそうなると、僕はなぜ彼女の言葉が理解できるんだ?外国にはその国の言葉があるはずなのに。彼女も僕の言葉を理解しているようだし、これは一体どういうわけだろう。僕がそんなことを考えている間に、アンナは僕の身なりを確かめるようにして視線を足元にやると驚いたような顔をした。


「ってどうしたの!?その傷!」


僕視線を落として自分の脚を見てみると、半ズボンだったこともあり、鋭利な木の枝か何かでかなりたくさんの傷ができてしまっていた。これには僕もびっくりだ。今まで気が付かなかったのが不思議なくらいだが、未知の世界に興奮しすぎて出たアドレナリンが痛みをごまかしていたのかもしれない。


「そこまで痛くないし、ほうっておけば治るよ」

「いやだめ。ちゃんと治療しないとあとで傷が残るわ」


そう言ってアンナは僕の手を取ると、傷の具合を心配そうに見ながら、ゆっくりと歩き出した。どうやら彼女の言う村に案内してくれるようだ。彼女の気遣いを無下にもできないので、僕は大人しくついていくことにした。


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