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告白


 教室に走って向かうと。そこには一人の生徒が窓際で夕日を眺めていた。もちろんそれは親友のルリだ。茶髪で俺の好みにロングヘヤーにして。ミニスカにして、姉の大人のような雰囲気で。そう…………俺の好みを知っている親友は俺の好みなように成長した。


 見ないようにしてきたが。そんなもん見えるに決まっている。俺は鈍感を演じて。好意を抱いてるぐらいわかっていたのを目を閉じていた。


 親友で居ようと言う約束はきっと。この関係を終わらせたくないからもわかる。俺もそれに甘え。何もかもそっぽ向いていたのだ。親友はそれでいい。女だから………女々しくて。でも俺は男だ。好意に………深い好意には答えたい。


「ルリ!!話がある!!」

「ん?どうしたの?タカナシさんとはどうなったの?」

「それよりも大事な話がある………ルリ」


 俺ら以外誰もいない教室でルリは首を傾げる。不安そうに俺を見つめて。


「ルリ、約束守れそうにない。ごめんな」

「そ、それって………」

「ずっと親友のままは無理だ」

「えっ………」


 ルリは息を飲む。顔を背けて手を胸に押し付けた。手は震えていた。


「そ、そうだよね…………うん。わかってたよ。ふふふ………いつかさ……こうなるって………ひぐ………ごめん………ありがとう。今まで…………」


 ルリの綺麗な瞳に涙が溢れていく。そう、もうこの関係が終わってしまう事に悲しんでいる。


「ごめん…………ひっく………泣きたくないんだけど………うぐ……止まらないの………ごめん」


 ああ、本当に泣ける程に………好意を持っている確信し、俺はルリの胸に押し付けている手を無理矢理強く掴んだ。


「俺はタカナシにフラれた。別にフラれてもショックは受けなかったよ。それよりもさ、俺はコイワイと話をするの………嫌なんだよな」

「ひっく………それって………」

「その、親友やめてさ……えっとえっと!!」

「…………」


 ルリが言葉を待っている。ヘタるな俺!!


「す……………友達から始めませんか?」


 俺はここに来てヘタレてしまった。親友やめて友達から進めればいいと思う。しかし、意味はわかってくれていると信じている。今の俺では………これが限界だ。


「………?」


 しかし、ルリには伝わらない。


「ルリ。伝わってないようだけど。恋人にすぐは無理だから親友をやめて………友達から始めませんかという俺の精一杯の………」


 スッ………


 ルリが俺の言葉を遮るように胸に飛び込んでくる。つい、俺はそれを受け止め。肩をつかんでしまう。


「ハルト………私、断らないから。ハルトは男なんだよ。だから男らしく。親友をやめてもいいほどに強く言ってほしい」


 俺は………胸の中で強く希望を言われる。上向きに潤んだ瞳で見つめれた。ルリはそこんとこハッキリ言う。これは………負けてられない。


「わかった。ルリ………その、好きだから付き合おう」


 顔に火がつきそうだ。上目遣いのルリが笑みを浮かべて小さく囁いた。だが、その声は俺の心に確かに届く。


「うん…………ハルト、大好き………ぐすん……うぅうっ………ハルト………」

「ああ、泣くなよ」

「嬉しくて………止まらない」

「………ごめんな。ずっと無理させて」

「………ううん…………そんなことない。だって元親友だったから………おかしいよね」

「おかしくない。おかしいのは俺の方だ。だから………まぁこれからも一緒にいるぞ」

「うん」


 俺はちょっと勇気を出してルリを俺の女にしたのだった。





「俺たち付き合います」

「知ってた」


 次の日、コイワイとタカナシさんに報告した。まるで二人は知っていたかのように。手を繋ぐ俺らを見ている。


「知ってた?」

「ああ。俺、ミヤオさんがお前に好意を持ってたのは知ってたし。コバトが俺に教えてくれたんだよ」

「コバト?」

「ああ、俺ら夏休み前から付き合ってるんだ」

「「!?」」


 ルリと俺は目線を合わせて驚いた表情をする。そのまま見つめ合い。抱き合う。


「おい。バカップル。話終わってない」

「ああ、そうだな。今までの分を取り戻そうと躍起になってるんだ。本当に………辛い思いをさせたよルリ」

「ううん………いいの。本当にハルトの幸せだけ考えてたから。なんとか我慢できたよ」

「ごめんな。もう我慢させないし、辛い事も感じさせないように頑張るから」

「ハルト………大丈夫。力まない。いつものように接してくれるだけでいいから」

「ルリ………」

「ハルト………」

「おら!!このくそ!!離れろ」


 コイワイが俺らのなかを割って入る。


「はぁ………でっ?付き合ってたのにルリに抱き付いたのか?」

「いや、コバトと俺でお前らをくっつけようと画策した結果だ」

「なんで俺より先にわかったんだよ」

「それについては俺の彼女。コバトから言うわ……コバト」


 タカナシさんがオズオズと喋り出す。


「その、一生懸命に私をミヤザキくんにくっつけようとルリちゃん頑張ってたんだけど………ね」


 俺はルリを見る。


「その、ミヤザキくんの事をスゴくベタ誉めしてて………ずっと相槌でスゴくいい人だねって私は言ってました。そうするとルリちゃん機嫌良くなるし。嬉しそうにしてるから………ごめん分かりやすかったです」


 ルリが頬を染めてこの場から耳をふさいで逃げようとする。残念なことに俺はルリの手を強く握りしめていた。


「そうなんだ。タカナシさん………ありがとう。もっと教えてほしいな」

「は、ハヤトやめよう!!私が言うから」

「私がね。ルリちゃんと登下校したいって言ったら頑なに断わるんだよ。なんでかわかる?」

「ひゃああああ!!コバトちゃん!!お願い言わないで!!」

「少しでもハヤトの親友で居たいからだって………」

「うわぁ………かわいいなぁ」

「本当にな」

「やめて……お願い………やめてよう」


 俺はルリを抱き締める。聞いてしまうとどうしても愛でたくなった。


「は、ハヤト!?」

「黙って抱かれておけ。ルリ………もっと」

「えっとね。ルリちゃん。私に紹介するときにうっかり………私の好きな人だからスゴくいい人だからってポロっと好意を言っちゃた時もあったよ。ねっ?

ルリちゃん?」

「うむぅ………穴があったら隠れたい」

「ルリ、俺の腕の中で隠れてるじゃん」

「に、逃げれないだけだから」

「そうそう。ミヤオ……クラスでは既に付き合ってる事になってるか気にするな」

「なんで!?」

「だって、滅茶苦茶アプローチしてたじゃん。親友の皮被って。出来うる限りの事を。健気だった」


 恋は盲目と言う。腕の中で震えるルリに俺は静かに頭を撫でた。


「諦めろ。ルリ………」

「……………むぅ」


 腕の中で唸るルリをそのまま撫で回したのだった。








 付き合い始め。親友から女になって恋人になったルリは可愛さに磨きがかかる。腕の袖を引っ張れば………手を繋ぎたいといい。鞄にお泊まり用の下着を用意すれば。家に来て、母親と仲良く台所に立つ。いつもとかわらん。そんなことを思いながら。教室で俺は彼女の相手をする。少し変わったと言えば………ボディタッチが増えたぐらいだ。


「ハヤト………始めてのデート何処がいい?」

「行きたくない。下着売り場は行きたくない」

「ハヤト~私ももう………ついてきては欲しくないな~」

「何故今まで………」

「ハヤトを困らせたかったから。僻みだったの………でも今は………ちょっと恥ずかしいのが勝ってる」

「そっか………よかった。もう死ぬことはないんだな」

「達成した顔………そんなに嫌だった?」

「なれるならまだしも。高校生には辛いものが」

「………でも。ハヤトが選んだ下着をいつも着込んでる。見る?」

「だぁああ!!スカートをたくしあげようとする」


 俺は慌てて両手を掴み制止させる。


「恥ずかしいからしないよ」

「心臓に悪いな~ほら俺の膝に座れ」

「う、うん?」

「何か悪さをされちゃ困る。しっかり大人しくする」

「膝に座らせたい?」

「もちろん」

「じゃぁ座るね」


 ルリのいい匂いがする。


「ハヤト………なんか硬い」

「気にするな」

「…………」


 彼女が出来たならセックスしてもいいなと思いつつ。ルリを抱き締めて封じ込める。ついでにサラサラの髪を撫でた。


「そういえば髪長いよなぁ~」

「髪長いの好きでしょ?」

「………それだけで伸ばした?」

「それだけで頑張って伸ばした。お母さんに無理言って毛先を少しづつ切って伸ばして切って伸ばして………綺麗って言ってほしくて」

「綺麗」

「…………ここ教室」

「なぁ、ミヤザキ。ミヤオ…………ちょっと離れような。昼休みでイチャイチャしすぎ」


 俺はコイワイに注意を受けて渋々離れる。机に置いてあるペットボトルのお茶を俺は一口飲んだ。


「あっ私も欲しい。ハヤト」

「…………まぁいいけど。大丈夫か?」


 俺はお茶の入ったペットボトルを渡す。


「男と男なら無理だったけど。今なら大丈夫だよ」

「ふーん。俺はその………できそうにない」


 俺はそう言ってペットボトルの呑み口を見つめているルリを見ていた。間接キスだよなと思いつつ。


「…………」

「…………」


 ルリが動かない。


「………どうした?飲まないのか?」

「………意識した」

「意識?」

「間接キス………だよね………」

「気にせず飲め」

「……………」

「つぅ~」


 頬を染めて呑み口を見つめるルリに俺は口を押さえて悶えるのを耐える。結局、ルリは喉が乾いたまま。昼休みを終えたのだった。






 秋も深まる中。俺はルリを部屋に連れ込んだ。彼女となったルリは少しソワソワとしている。


「ルリ………どうした?今日は変だな?女の子の日か」

「それはいちも………きょ、今日その………」


 上目遣いで制服のスカートの上から手を太股に挟んでモジモジとする。


「今日はその?」

「………付き合ってまだ………その………なんでもない」

「付き合ってまだ?やってないこと?大人になりたいのか?」

「と、違う!!………き、キス……ま、まだだなぁって」

「ふーん」

「ふーんてなに!?」

「色んな事であざといのにヘタレだなって」

「ヘタレは!!ハヤトでしょ………私待ってたんだから」


 俺は澄ました顔で心はニヤニヤとゲスの笑みを隠すように言う。


「で?」

「………ひどい」


 ルリはかわいい。かわいい女の子を苛めるのは思った以上に楽しい。呆れた仕草で背中を向けた。


「まぁ、おれ。ゲームするから」

「…………んぅ…………なら」

「ん!?」


 再度振り返った瞬間ルリの顔近くにあった。頬を触れて、彼女は目を閉じて背伸びをし。触れる。  

 頭が真っ白になり。気が付いたら………歯止めが聞かなくなる。


「ハヤト………ん!?」


 逃げれないように強く抱き締めて強引に口を奪う。甘い匂いと柔らかい感触を貪る。


「んんんんん!!………ハヤトまっ!!ん!!」


 呼吸ができないほどにルリを押さえつける。ルリの手がだらりと垂れ。ゆっくりと沈む。俺は支えずに抱き締めるのをやめると。ペタリと絨毯に座り込んだ。


 ちょうどいい位置だったので。俺は………チャックを開けようとしたが理性が勝つ。


「ハヤト?」

「なんでもない」


 そのまま。ルリから逃げるように1階トイレに駆け込んだ。一線越えるところだった俺の息子は元気だった。







 

水銀閣下に栄光あれ………作者はここで力尽きた………







 





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