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3/5

俺の親友が女になったんですけど3


 俺は頭を抱えていた。風呂上がりでベットの上にエロ漫画が陳列されているのを見た。母親にもバレたことのないのにルリは母よりも鋭い嗅覚で見つけ出した。


「風呂上がったら怒ろう。こんちくしょう……」


 親友にフェチやエロ漫画を見られるなんてなんと言う拷問か。


「とにかく、元に戻そう」


 俺は全てベットの下に入れる。新たな隠し場所を後で考えよう。それよりも今は。


ガチャ


「いい湯だったね」


 怒ろうと思う。俺は立ち上がってルリの肩を掴みいかにも起こってるぞと言う表情をする。


「おい!!おま………!?!?」


 だが………やらかしてしまった。風呂上がりで火照った体に上目使いで見上げるルリの綺麗な顔と流れるきらびやかな髪とその健康そうな双丘が目の前に俺の怒りは思春期男子の心を掴んだ。このまま襲わないのは親友と言う。ストッパーのお陰な気がしてならない。


 風呂上がりのルリは元男を忘れるぐらいに魅力的だったのだ。


「クーラー効いてて涼しいね」

「あ、ああ………」

「あの。どうしたの?肩なんて掴んで」

「その………エロ漫画。置いてあった」

「ふふふ、ごめん。みつけちゃった。つい、宝探しみたいになって………本当にごめんね。引かないから大丈夫」


 小指を唇に当て。小悪魔のような仕草でごめんと言う。新しき親友のこういうところがズルいと思う。可愛くて悶えそうになるのをこらえて。肩から手を離し。恥ずかしいのを隠すようにルリに背を向ける。


 すっ


「!?………え!?ルリさん!?」


 振り向いた瞬間だった。背中にルリが触れたのだ。ついさん付けするほどに動揺した。


「ごめん………少しだけ………少しだけでいいの。背中を貸して」


 親友の奇行にドギマギしながらため息をはく。


「まぁなんか………知らんけど貸すよ」

「ありがとう………ん………」


 俺は数分だけルリの風呂上がりの匂いを堪能したのだった。親友は本当にいい匂いがする。





 俺は最大の山場を迎えていた。そう、親友の一緒に寝ようと言う提案を俺は断ろうとしたのだが。


「…………そっか。昔みたいに一緒に眠れないのね」


 寂しそうにする姿に折れてしまい今に至る。なので………めっちゃ顔が近い。トイレに駆け込んで抜いてきた筈の息子がウズウズしてしまう。親友は長く綺麗な睫毛の目を閉じて幸せそうに寝息を立てている。


「………すぅ~」


 俺が眠れない中を親友はタオルケットだけかけて眠っている。クーラーの効いた部屋で……そう。胸とか色々見えている。ネブラと言うものだろうか?布の下着のようななにかが見える。


「………ごくん」


 触ってみたい。思春期男子の本能が俺の手を動かす。親友は寝ている。寝ているだから………少しは気付かないだろう。


ムニュウ


 ルリの胸は服の上からでもわかるくらい大きい。それを触れて揉んだ。優しく起きないように布越しで。


「!?」


 めちゃくちゃ弾力と触ったことのない感触に息を飲む。


「………んぅ………」


 ルリの口から少し、色っぽい吐息が聞こえた。ドキドキしながらもゆっくりと揉む。


「ん……ふぅ………ハヤト…………」

「!?!?」


 起きたかと思い慌てて手を引っ込める。しかし、目を開けない。ただの寝言のようだ。


「ごめん…………ハヤト………」


 何の夢を見てるかわからなかったが俺は背中を向く。流石にルリの顔を見ながら寝ることは出来なかった。気が変になりそうだったから。









 私は数日、親友のお泊まりをしたあとに帰宅し部屋に籠る。親友の両親は感謝してくれた。親友もお礼をいい、その場はそれでよかった。


 しかし………家に帰る道中。ゆっくりと胸に寂しさが込み上げていく。1歩1歩と歩く度に、彼の背中や触れた事を思い出していた。


 肩を掴まれたとき。心臓が早く鼓動し、そして……少し期待してしまった。


「………はぁ」


 扉を閉めてすぐにしゃがみこみ。体育座りで………思い出を思い出す。好きな気持ちに気が付くのは早かった。女になってすぐだった。


「仕方ないよね………だって………嫌なところあったら。親友なんてやってないよ」


 女と男の親友は成立すると議論は昔からあった。だけどそれは恋愛対象に見れない場合だけだと思う。


 色んな人が元男であることを知りながら告白してくれた。最初は戸惑ったが。いつもいつも……その瞬間思い出すのハヤトの笑顔と声だった。


 数年長くいるからこそ。知っている。何が好きか、何か嫌いかを。カレーが好きだってことぐらい知っていた。たぶんリクエストカレーなんだろうなと私は思っていた。


「全部食べてくれた………」


 普通に美味いと言ってくれた。スゴく跳び跳ねたいほどに喜びたかった。だけど………我慢する。


「…………」


 女になってから出会えたらよかった。でも、それじゃぁ………親友の良さはわからなかっただろう。親友だったからこそ。見えているから好きなった。親友じゃなかったら。きっと関わりもなかった。


 思考がグルグルとして。暗い部屋で一人。悩む。


「…………それでも」


 悩むが私は………約束と彼の幸せを願って。親友を演じようと思うのだった。






 夏祭り中盤。俺は待ち合わせ場所の公園で待っていた。公園は人だかりが出来ており。俺らと同じように待ち合わせをしている人で賑わっていた。するとタカナシさんとコイワイが私服で現れる。少しだけ着物姿を期待した俺はガッカリしたが表面には出さない。


「ミヤオさんは?」

「遅れて来るそうだ」

「………ごめん。ちょっと時間かかって」

「おう。ルリ………遅」


 待っている背後から声をかけられ後ろを向くと。綺麗な着物を着たルリが恥ずかしそうにして立っていた。


「お母さんが着なさいってうるさかったの」

「うわぁ~ルリちゃんいいなぁ~」

「コバトちゃん。ありがとう!!」


 女の子同士のキャキャと言う効果音が聞こえそうな会話に。完全に女になった親友に暖かい目線を向ける。


「商店街でなんか買ってさ、何処かで座って花火見る?」

「そうだな。でも座るところあるか?」

「川沿いの何処かでいいだろ」


 コイワイと俺でどこで見るかの場所を決める。はぐれたらそこで合流しようと言うのだ。あとコイワイが何か境内にルリを連れるからタカナシを頼むと言われ。これもルリが気を効かせてくれたことだろうと思う。


「じゃぁ~行こうぜ」


 コイワイが先導し俺らはついてくる。どうやって連れ出すんだろうか?


 そう疑問に思いながら、箸巻きの練り物料理を食べながら色々と考える。するとコイワイがルリに耳打ちした。そして、裾を引っ張る。


「タカナシ、ミヤザキ。俺ちょっとミヤオさんと直接話があるから後で合流する」


 正直に言うのかよ!!と心のなかで叫ぶ。すごい行動力だ。


「そういうことだから、ちょっと行ってくるね」


 ルリも不思議がらずにコイワイと一緒に出店の合間を抜けて川沿いの寺の境内へ向かう。それの裏と言っていた。やましいことでもするんじゃないだろうか?


「二人きりになっちゃいましたね」

「あいつら出来てるのか?」

「ふふ、どうですかね?どう思いますか?」

「どう思うって?」

「ルリちゃんとコイワイさん………お似合いですよね」


 俺はドキッとする。親友がコイワイと一緒に色々とするとかちょっと嫌だなと思ったのだ。知っているからこそ尚更なのだろう。


「まぁ、あいつの自由だから口は出さないですね」

「ふーん?………てっきり私は好意があるのだと思ってました」

「好意より友情でしょう」

「………ふーん」


 タカナシさんが楽しそうに質問してくる。ルリのことに関して。俺はしどろもどろになりながらも問いに答え………そして。


「覗きに行きませんか?」


 タカナシさんがワクワクした表情で提案してきたのだった。





 私は耳元で囁かれ誘われたのに賛成し境内。寺の人目がない場所にコイワイと一緒に来る。本当に来る必要はないのに。


「ミヤオさん。今日もこうやって二人きりにするんですか?」

「うん。それでいいと思う」

「いや~うん。辛くないんですか?」

「大丈夫。ありがとう心配してくれて」

「大丈夫と言って大丈夫そうじゃないから言ってるんだ」

「親友みたいな事を言うのね」

「いや………だって。目が笑ってないし」

「そうなんだ」


 静かに頷く。何となく分かっていた。本当に今は辛い。


「一緒にいるだけで良かったんだけど………」

「だから泊まりに行くのはやめとけと」

「昔の勢いのまま泊まちゃった」

「………ミヤオ。すまん」

「ん?」

 

 ガシッ!!ギュウウウウ!!


「えっ!?」


 手を掴まれたと思った瞬間だった。抱き締められたのだ。強く。強く。


「泣いてもいいと思うぞ。辛いなら。あと………怒ってもいいだが少しだけ」

「泣くなんて………女々しい」

「女だろ」

「はぁ……うん。実は家でこっそり泣いたから大丈夫」

「泣かせる男なんてひでぇ野郎だな。何がいいんだよ」

「全部」

「…………ふぅ。ミヤオ、勇気出せ」

「勇気……」

「フラれたら。俺んとこ来い」

「はぁ、コイワイは優しいね」


 抱かれながら。頭を撫でられる。まぁ誰も見てないし………いいかと体を預けた。目を閉じて。


「はぁ~本当にいい女だな~触っていい?尻」

「離せ。キモい」


 前言撤回、気持ち悪い。






「待たせたな。お二人さん」

「お待たせ」

「うん。結構早かったね」

「そそ、そうだな」


 俺らは待ち合わせ場所の川の土手に敷き布をひいて腰かけた。タカナシさんはニコニコして二人を見ているが俺は内心焦りのような物を感じている。覗いてた時にいきなりコイワイが抱き締めたのだ。思わず殴りに行こうかと思ったがタカナシさんに止められ渋々引き下がる。ルリもルリで………抵抗せず。抱き締められていたのだが。それが………思いの外ショックで花火どころじゃない。


「どうしたの?ハヤト」


 ルリが不安そうに俺を見てくる。顔を見ると今さっきの光景を思い出してしまい。少し、引いてしまう。


「な、なんでもない。大丈夫大丈夫。かき氷食い過ぎて冷えただけだから」

「ふふ、おっちょこちょいなんだから」

「うっせぇ」


 親友のいつも通りの会話に違和感を覚える。親友なんだ。そう………誰を好きになろうと応援するつもりだ。応援していただいている身。そう思っていたのだが。


 親友の恋愛沙汰は思いの外。心に来るものがあった。


「はぁ………」

「ため息?」

「ちょっと。考えこと」

「ふーん」


 俺の右隣にルリが座りで。その左隣にタカナシさんが座っている。座っているが今はタカナシさんに話しかけようと思えず。親友の方を向いてしまう。


 泊まりからずっと遊んできた女の子の横顔は綺麗に整っていた。空を見上げ、愁いを帯びた顔。


「そろそろだね。ハヤト……あ」

「あ………」


 空を見上げていたルリと目線があった。しかし俺は見ていられず逸らしてしまう。


「ハヤト?」

「………そうだな。そろそろ時間だな」


 そう言った瞬間、空に大きな花火が上がり周囲に大きな音を響かせた。しかし、俺には………何も心に響くものが無かったのだった。





プルルルルル!!ガチャ


「おう、起きてるか。ミヤザキ」

「ん?なんだよ。コイワイ」

「ああ、ちょっとな」


 花火を見終わり解散したその夜の自室。ボーとしながらゲームをしているとコイワイから電話チャットがかかってきた。思い出すのは抱き合っていた。


「なぁ……お前。ルリちゃんのことどう思ってるんだ?」

「はぁあああ?」


 電話でいきなり聞かれた質問に俺は変な声を出してしまう。これはどういう質問かを考える。考えてとぼける。


「いや、どういう意味だよ」

「どういう意味かと言うと。恋愛感情あるかどうかなんだけど」

「………ないかなぁ~…………」


 親友だと。俺は言おうとした瞬間。


「あっ俺もないわ。なんか違うんだよなぁ~でも…………良い体してるよな!!ちょっと仲良くなったんだよ。ありがとうなミヤザキ」

「お、おう」

「ミヤザキが特別ななんか感情あるなら悪いかなって思ったけど。大丈夫そうだし。2学期……ちょっと喰ってみるぜ」

「そうか、そうか………それルリにチクるぞ」

「ん?恋愛感情ないんだろ?いいじゃないか?」

「一応は親友だぞ!!そんな恋愛感情なくて不誠実な付き合い方許容出来るか!!」

「…………それ。他の奴にも言えるのか?」


 底冷えする声に俺は口を閉じた。


「俺が以外が同じことしても。そして、ルリちゃんが誰かと付き合っても同じこと言うのか?」

「それは言う。親友だから」

「そっか……なら親友やめた方がいい」

「なぜ?」

「お前………タカナシともし付き合うならルリは同じこと言うのか?」


 それは………言わないかもしれない。いや、どちらかと言えば応援されている。


「なぁ……ワガママだよなお前の女でもないだろ。逆に応援して貰ってるのにお前は彼女に何が出来てる?」

「…………ええ」


 いきなりの説教に俺は焦りだした。なんでこんなことに?


「ふぅ。まぁ………お前は少しルリちゃんの事を考えろ。お説教だ」

「考えろたって」

「………まぁ考えろ」


プツン………ツーツー


 俺は通話をいきなり切られ。なんだよと思いつつ。ゲームコントローラー投げベットに転がる。今日はゲームに身が入らなかった。






 夏休みの終わりごろ。ルリから遊ぼうと連絡があり。俺は二つ返事でOKしてしまった。いつもの癖とは言え。安直だった気がする。


 しかし、電話越しのルリが良かったと小声で言っていたのを聞いたときはなにもかも考えが吹っ飛んだが。


ピンポーン


 インターホンを鳴らす音に反応し俺は慌てて玄関へ向かい扉を開ける。そこにルリは立っていた。


「ごめん。待ち合わせするよりも来ちゃった」(早く会いたくて………来ちゃった)


 そう言うルリの私服は眩しかった。黒いミニスカに白い花の刺繍のシャツ。麦わら帽子には黒いリボンがついていた。少し薄紅の化粧以外は着飾っていないが可愛い女性がそこには立っていた。


「ハヤト?………何も言わないの?」

「あっ……いや。すぐに支度するから。ちょっと待っててくれ」


 見とれていたなんて言えずにそのまま財布を取り。靴を履いて外に出る。玄関で小さな小物入れの鞄を持つ美少女が親友だと忘れてしまいそうになる。今日はあの夏祭りの光景も忘れようと思う。


「お待たせ」

「うん、行こっか」

「にしても…………服装のセンス良くなったな………」


 ルリの体を下から上へ眺めて感想を口にする。靴もヒールだ。金がそこそこかかっているのがわかる。


「気合い入れてきた。これでもう男なんて言わせないよ。どう?何点?」


 くるっと一回転し後ろに手を回してあざとく顔を近付ける。100点にしたいが………


「90点、胸になワンポイントでネックレスがあればなおいい。胸が寂しすぎる」

「得点高い!?どうしたのハヤト」

「いや!!普通に………綺麗だと思うぞ。元男なんて誰も思わんほどに。一瞬俺も忘れた」

「………………」

「ルリ?」

「ごめん………あっち向いてて」

「?」


 ルリが顔をおさえて背中を向けた。


「照れてるのか?」

「………」


 肯定。俺は悪い笑みを浮かべ。ルリの手を取り顔を向けさせる。


「へへへ!!親友の照れ顔見せ………」

「あっ………」


 頬を紅潮させ、目線を泳がせて。きつく目を閉じるルリ。正直にズルい仕草であり。男殺しと言う言葉を思い付くほどに破壊的だ。


「す、すまん」

「う、うう………」


 そのあと、俺たちは無言になり何故か気まずい雰囲気のまま。百貨店へ向かうのだった。








 正直言おう親友は異常に可愛い。最近特に可愛い。恐ろしいほどに俺の好みに近いと言える。


 茶髪の長い髪は某好きなゲームキャラに似ているし。睫毛や瞳。整った顔はアイドルよりも美人だし。纏う雰囲気も大人しい女性。タカナシさんも良いのだが。大和撫子のような凛とした瞬間も持ち合わせた親友は俺をただ立っているだけで攻め立てる。


「さっきから………ハヤトは無言だね」

「………お、おう」

「私が女で緊張してる?」


 蠱惑的な笑み。


「緊張してる。綺麗になりすぎだ。童貞の俺には親友のお前が眩しく見える」

「………」


 ルリが俺の裾を掴んだ


「ど、どうした?」

「本当?」


 ルリが真摯な目で俺の言葉を待つ。俺は照れ臭くなりながらも正直な意見だと念を押す。


「嘘言わない」

「うれしい……もう一回言ってもらっていい?」


 ルリが人差し指を一本立てる。


「恥ずかしいから言わない」


 可愛い催促だが絶対に言わない。


「わかった。でも………ありがとう。お昼食べた?」

「まだ」

「モスいきたい。時間的にまだ混む前だから」

「じゃ~先に飯にする?」

「うん!!」


 今日は本当に元気がいい。百貨店のチェーン店に足を運ぶのだった。頼む物もハンバーガーのセットだ。某チェーン店より値段は高いが。何故か母親からしっかりとお金をいただけている。頑張れとも応援され。変な気分になった。お会計を済ませ窓際の席に座る俺たち。時間が少したってからトレイを持った店員がテーブルのハンバーガーも持ってきてもらえる。


「いただきます」


 ルリは真面目に手を合わせる。その仕草にいつも昔の親友の影を見つけて懐かしい気持ちになった。熱々なハンバーガーを一生懸命ほうばって食べる女の子は可愛いい。


「ん………ハヤト。まって」

「なんだ?」

「ハヤトはハンバーガー食べるの致命的に下手だよね」

「なんだよ!!」


 ルリがハンカチを取り出して手を伸ばし頬をに触れる。俺はその優しいお姉さんみたいな雰囲気に動きが止まる。


「ほっぺについてる」

「!?」

「はい、とれた。もう少し落ち着いて食べなよ。親友」

「おう……」


 何故か俺は意識してしまい。食事中にずっと沈黙することになったのだ。





 服と下着を選ぶのに付き合わされ。身心が疲れきった。昔も同じように買い物に付き合ってたが………恐ろしいほど疲弊した。何故か前よりも辛い。


「次は………何処行こっか?」

「や、休ませてほしい」

「どうして?」


 可愛くイタズラっ子のように聞いてくるルリに頭を押さえる。


「高校生に下着売り場は拷問だぁ………」

「知ってる。だから誘った」


 クスクスとルリは楽しそうに笑う。幸せそうに。そして、裾を引っ張り優しく言う。


「最後のお店は喫茶店だよ」

「ああ、終わったんだな………戦争は」

「白くならないで………その一緒に来てくれない?」


 俺は二つ返事でその店に向かう。やっと落ち着けると思い。その店に行くと………戦争はまだ終わってないんだなっと思う事になる。百貨店から少し離れた場所にその店はあり。離れている割りに客足は多い。店はすごく雰囲気が良く。コジャレたお店だ。


 店に入り可愛い店員に案内され。席に座る。メニューを開いて。ルリは苺パフェを素早く頼んだ。まるで最初からそれが狙いだと言わんばかりで。俺はブラックコーヒーだけを頼む。


「ハヤトは………コーヒーだけでいいの?」

「俺は大人だからな」

「本音は?」

「………周りが気になってやばい」

「気になる?」

「い、いや………なんでもない」


 なんでもないわけがない。そう、この入った喫茶店。黒板にも書かれていたからもしやと思ったのだ。カップルばっかりがいる!!


「ごめん。ハヤトお願いがあるの」

「ああ、どうせ黒板に書いてあった事だろ?」

「うん!!」


 ルリが手を合わせる。黒板に書いていたのはカップル連れのパフェ200円引きだ。そう………ルリはカップルを演じてほしいとお願いされたのだ。


「ありがとうハヤト。男の時でもずっとずっと気になってたんだ。でも、親友と来るなんて変だし。勇気もなかったし。それに………女になっても一人で来るにはね?」

「本当に苺大好きだな」

「すきぃ~♪」

「へほげほ!!」

「だ、だいじょうぶ!?」

「むせた……だけ……げほ」


 俺はルリの唐突の攻撃にむせた。


「げほ、まぁ……うん。好きならよかったじゃん」

「うん。きっと………パフェを食べるために女になったんだよ」

「そ、そこまで言うか………」

「言うね」

「……………」


 ルリはそのあと。ソワソワしだしてパフェが来たときは目の中が星でも入っているかのように喜び。一口一口笑みを溢しながら、おいしい幸せを連呼する。静かに食べれと俺は言うが………その姿は目に焼き付いてしまう。


 それほどに………親友は可愛い。何度でも言うが可愛いかった。









 デートもどきを決行した夜に。私はコイワイと連絡を取り合う。


「それでね!!一緒に店に入ってくれたんだ」

「……なぁミヤオさん。その甘い話は何処まで続く?苦しんだけど」

「ご、ごめん。嬉しいのを誰かに言いたくて」

「親友にどうぞ」

「……言えないからコイワイに言ってるの」

「めっちゃ2番手でワロタワロタ。でっ……俺の言った通り。少しは楽しめただろ?」

「ありがとう。背中押してくれて」

「まぁ~これぐらいは」

「………うん。いい思い出になったよ」

「そっかよかったじゃん」

「よかった………いい夢がみれました」

「……………2学期楽しみだな」

「うん」


 私は正直にそう、言葉にする。






 2学期、夏の暑さは健在な日々。いつもの学校生活が始まり。俺はコイワイと親友の関係を気にしながらも楽しい日々を過ごしていた。


 そんなある日。ルリはコイワイに体育館裏に誘われ。俺はタカナシさんに屋上に呼ばれた。何か話があると言う。しかし、俺はどうしてかルリが体育館裏へ向かったのが気になってしまう。


 ルリはモテる。しかし体育館裏まで行くことはない。直接断ることをせず。手紙で断っているのだ。だが今回は………体育館裏まで行く。


 その小さな事だけで。俺は気になってしまい……タカナシさんの呼び出しに正直、喜べない。


「タカナシさん、お待たせ。話ってなに?」


 俺は最近、ルリと深く関わることで女子との会話を楽に出来るように成長したのだった。下着売り場に連れていかれるよりはマシだ。


「ミヤザキくん。来たね………実は話って言うのは」

「……ゴクリ」


 夕日に照らされた金髪の美少女が恥ずかしそうに話始める。しかし、俺はルリの方が綺麗だな~と思いつつ頭を掻く。まぁ親友だけど。


「あのね、勘違いならあれなんだけど」

「…………」

「その、私に好意を抱いてるなら………ごめんなさい」

「………!?」


 俺はてっきり告白かと思えば。逆で告白よりも告白しないでと釘を刺された。


「えっと………」

「ごめんなさい」


 沈黙。予想外な結果で俺は絶句する。だが………あまり。ショックは受けなかった。


「それにミヤザキくん。ルリちゃんとずっと一緒だしね」

「そりゃ~親友ですし」


 他に何言えばいいだろうか?


「………ルリちゃん。どうするんだろう」

「コイワイと付き合うんじゃないですか?」


 何故か振られた話なのに全く関係なさそうなルリの話にタカナシさんは持っていく。


「本当に付き合っていいのかな?」

「いや………でも………一緒に見たですよね?抱き付いてるの?」

「見たのですけど。ルリちゃんは………親友以上にミヤザキと仲がいい気がして」

「………親友以上?」

「鈍感ですよね。ミヤザキくん」

「鈍感って………」

「………本当は気が付いてるんじゃないのですか?」

「……………」


 プルルルルル


「あっ、コイワイから」

「どうぞ」

「すいません」


 俺は謝って電話に出る。


「ミヤザキ。今どこだよ………」

「屋上。タカナシさんと一緒」

「そっか………お前も告白したぜ。うまくいった」

「そうか俺は振られた」


 何故かコイワイの報告に俺は泣きそうになる。胸に針が刺さったように痛い。ああ………何故なんだろうな。


「泣きそうな声出すなよ。嘘だよフラれたよ」

「………………」


 嘘っと言った瞬間。痛みが引く。


「ルリちゃん教室で待ってるぜ」

「ルリちゃんとか軽々しく言うな」

「………お前なぁ………素直になれよ」

「…………親友って約束した」

「それが?ずっとお前はそのままでいいの?」

「…………」


 見ないように見ないようにしてきた事をコイワイは突きつけてくる。


「どうしたらいいだろうな………この関係がずっと続けばいいのにな」

「俺なら告白して女々しいことはしない。それよりもさ………お前、気づいてるだろ?好意に」

「…………気づいてるさ。流石にな!!」

「ならさ………行ってこいよ。教室にいるぜ」


 俺は通話を切る。そして、タカナシさんにお辞儀をして謝り。屋上を後にしたのだった。







 ブブ


 私は彼氏の電話にすぐに出る。


「はや!?」

「だって、かけてくると思ったから用意してた。急いで屋上を去ったよ」

「いや~やっとだよ」

「長かったね」

「全くだ。でっ………今日は何処へいく?」

「いかない」

「そっか~コバトもお疲れ。名演技だったんだろう」

「やっぱ。話したいから家に行ってもいい?」

「もちろん。待ってるぜ」


 彼氏の通話を切り。私も屋上を後にするのだった。

























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