俺の親友が女になったんですけど2
私は彼に手を振った。2階からコイワイ君とハルトは手を振り返してくる。
「彼がご親友ですか?」
「そう、右が宮崎春翔左は友達の小岩井君」
「紹介してくれるんですよね?」
紹介と言うのはそう。オタク仲間と言うよりも遊び仲間で紹介するのだ。タカナシさんは話を聞けば驚くぐらいにボッチだった。いつも誰にでも愛想を振り撒くがそれが本当の友達とは思えず悩んでいたそうだ。そう、心の中で話し相手を探していたのだ。TRPGに興味はないですかと私は聞いた瞬間の彼女の目の輝きは驚くほどにビックリした。
釣り針はすぐにかかったのだ。
「いつかは昼休みでやりたいですね」
そう、彼女の趣味を聞き出し。私は場を整えようと考えた。
「はい。学校で理解してくれる人がいるなんて感激です」
「フロム信者だからね」
「フロム信者?」
「ええっとブラッドボーンと言うゲームがねこう~啓蒙高いのかな?色々あるんだよ」
「面白いですか?」
「クテゥルフ好きならハマるかも」
私はゲームから元ネタにはまった口でリプレイを鑑賞する方だ。女の子同士の会話ぽくはないけど仲良くなるなら何だって良かった。
「………いつ遊びますか?」
「中間試験後でどう?面白いのあるよ」
「楽しみにしてます!!」
「だけど、その前に仲よくなろう」
私は頷き。何をするか言う。それに彼女は喜んで頷き返したのだった。
*
放課後。俺は待ち合わせ場所の下駄箱でルリを見つける。先に言っていると教室を出たあとの合流だ。声をかけようとしたのだが………俺は声が出なかった。
鞄を置いて、壁にもたれ掛かり。憂いを帯びた横顔でスマホを眺めている親友が少し。光とともに綺麗に見えたのだ。耳に髪をたくす仕草もお上品。
ここまで親友は変わった。でも、それでも俺の親友だ。深呼吸をし。声をかけようとした瞬間。
「あっ……ハルト」
俺に気付き、顔を向けて笑顔で返してくる。今さっきの表情と変わって明るく。可愛い表情。
「待たせたな」
「用事だからね」
「鞄……持とうか?」
「どうしたの?優しい」
「いや、まぁ今からでもさ。練習」
「そうだね。そういうところで好感持って貰わないとね」
「そそ」
俺はルリの鞄を持つ。ルリはまぁ嬉しそうな表情をした。本当に最近、益々女性ぽくなって男らしい所が一切無い。
「ありがとう。タカナシさんと中間試験終わったら遊ぼうって誘った。ワンナイト人狼しよう」
「マジか………友情崩壊するぞ」
「それまで仲よくなるためにご飯一緒にしようね」
「お、おま!?すげぇ!!どうやったらそこまで出来るんだよ」
「ふふ、だって親友でしょ。応援してるって言ったじゃん………ね?」
後ろに手を回して首を横に向けてあざとく俺に言うルリ。
「ありがとう。うれしいぜ!!」
「良かった」
そういうとクルリと回って背中を親友は見せる。面白いほどに髪が靡き、夕陽に照らされる彼女は美しくも何故か悲しい背中に見えた。俺は首を傾げてなんだろうかと思ったのだが。
「よし、今度の休日。遊びに行くことにした」
「ああ、来い来い」
そのまま、顔だけ振り返った彼女はいつもの親友だった。
*
休日の朝、俺は顔を上げて頭をかく。時間的にはもう起きてもいい時間帯だ。背伸びをする。その瞬間。
「おはよう、ハヤト」
「うわっ!?えっ!?いや!?へ?」
「クスッ………ハヤト起こそうとしたらちょっとね」
隣からルリが居て驚いて変な声を出してしまった。
「朝早く来るって昨日連絡したよね」
「そうだったが………いや………うん」
スマホに確かにそんなメールが入っていた。
「朝食。一緒に食べよう」
「お、おう。わかっ………おい。なんで裸エプロンなんだ?」
「ん!?裸エプロン!?」
ルリの服を見ると肩は解放されエプロン姿だがあまりにも卑猥な姿で目を逸らした。
「裸じゃないよ!!ほら!!」
クルッと後ろを見せる。綺麗なジーンズの短パンにレギンス。それに肩が見えるTシャツ。確かに今の時期暖かいがその姿はないだろうと思う。ビックリしたじゃないか。あと………綺麗な形のお尻だった。
「本当だ。あれ、ファッション鍛えられてる」
「勉強したの……もう。女の子だからね」
「そっか………そうか。なれた?」
「うん、なれたよ。だから早く着替えてさご飯食べよう」
「へーい」
俺は寝巻きを着替え………
「部屋にいるのかお前?」
「?」
「はよ出ろ!!」
「肌を触れあった親友じゃない!!」
「それでも気恥ずかしい。お前はもう女だぞ少しは恥じらいを持ってだな」
「………恥ずかしい?」
「恥ずかしいから出てってくれ」
「……うん」
何故か親友は少し嬉しそうに部屋の扉を開けて出ていくのだった。なんなんだあいつは……本当に。
*
少しだけ私はカマをかけた。親友に対して恥ずかしいと彼は………ハヤトは言った。それは私に対して少なからず女性として見てくれている事がわかり。それがわかった瞬間。私の胸は暖かい物を感じる事が出来た。
確認出来ただけで良かった。親友には黙っておこう。そう、私は。僕は親友の宮尾瑠璃なのだから。
病気については近くの男子が居ると進行が早くなる事は聞いていたし。その男子に好かれるように変わるとも聞いていたし。何となくだがそうなるんじゃないかとわかっていた。だからこそ、この関係を崩したくない。この関係のままがいい。
「遅いよね………今さら。1年前ならなぁ~」
何故なら私は彼が誰を好きかを1年以上語って来たのだから。勝負にさえならないのだった。
*
朝食後。最近買ったゲームを二人でしようと言う話になり。俺だけ先にゲームを起動した。ルリはと言うと俺の母親の手伝いをしている。食器を片付けるだけだが。少しだけ遅れて俺の部屋に入った。
そして、座布団に女の子座りをし、綺麗なレギンスに包まれた太股に目を奪われたあと顔を上げると。俺のとなりでコントローラを持ち、待ち遠しそうにしていたルリと目が合う。綺麗な瞳だな~と思いつつ。喋る。
「これ2プレイ出来る?」
「出来る。前作できてたからな」
それからは本当にいつものいつもの親友との日常でフレンドリーファイアーも上等の行為をしながら。時間を過ごす。そして、1時間過ぎた時にルリがある一言を話し出す。震える声で。
「ねぇ………私たちって親友だよね」
「ああ、そうだ。中学から一緒だしな」
「だったらさ………約束して欲しい。ずっとずっと親友だって」
ルリがコントローラーを置いて俺を見つめる。吸い込まれそうな瞳に、俺は目線を剃らす。
「そうだな!!ずっと親友だろ?なんだよいきなり」
「じゃぁ………約束して」
ルリが小指を出す。俺はまぁ~疑問に思いながらその小指に俺の小指を絡める。高校生になっても指切りなんてするとは思わなかった。
「約束って。今さらどうして」
「……親友だよね?ごめん………私、女になる。それでも親友でいてくれるよね?」
真面目な顔で。真剣な顔で。綺麗な瞳を俺に向ける。もちろん答えは簡単だ。もう、女になると宣言されたが昔からずっと言ってきている。
「親友だろ?今でもずっとな!!」
「指切った……約束」
「変な事、言う奴だな~」
「変な事だけど………もう体は戻らないし、知らなかった日々に戻らないからね」
俺はよくわからず。ただただ、指切りした手を胸に押さえつけて大切そうにする仕草に何も言えず。黙々とゲームをする。今さらだが少しだけ………恥ずかしくなってしまったのを隠すように。
*
休日が過ぎ。中間試験も無事終わった。ルリの女
になると宣言した日から。彼女は変わった。大人になったのか少し、大人しい雰囲気を持つようになる。それでも親友であり続け、今度は俺の悩み相談をよく聞くようになってくれた。
どうすればタカナシさんと仲良くなれるかをアドバイスを貰い。昼休みは3人で食べる事が多くなった。たまに小岩井が入ってくるが俺にもツキが回ってきたのかトントン拍子で仲良くなれる。ワンナイト人狼とかやったり、TRPGとかを語れるようになると。タカナシさんの素顔が見てとれ。ああ、こんな感じの人だったんだと思うようになった。
タカナシさんは優しい。今まで一人だったのは優しさと妬まれる出来事があったからだと聞いたのだ。
「あのときは本当に辛かったです」
「好きだった人がタカナシさんを好きで逆恨みは大変だったな」
「本当にそれな………あいつの事幻滅した」
「タカナシさん。それから一人らしいですね」
俺ら男二人は握り拳を作り。絞めるかと言い合う。昔の事だからとタカナシさんは宥めてくれて俺らはそれにああ、天使だ~と言い合い握手した。
「それよりも、本当に二人は付き合ってないんですね」
「そりゃ~な」
「そうですね。恋愛感情はないです」
「変ですよね。一緒にいるのに」
「一緒に居すぎて倦怠期なんだよこいつら……手も繋がないしな」
「繋がないな確かに」
「そうですよね」
「まぁ~そんなことより人狼やる?トランプ?」
「大富豪。負けたらパシり」
「いいですねやろう。ハヤト」
「じゃぁ~配るわ」
そんな、平和な日々が俺らの周りでは続いているのだった。
*
夏の日差し強く。夏休みが目の前に迫り期末試験と言うボスに立ち向かおうとする時期。ルリの告白の手紙が増えている。元々数枚だった物が増え。夏休みの前に彼女を作ろうとする運動が目についた。
そのなかに小岩井のも混じっており。教室の前で断られていたのは笑ってしまった。直接言いなさいと怒られてなお、断られるんだから可哀想より面白かった。
「はぁ、きびしいよミヤオさん~」
「何度断れば気が済むんですか?」
「ミヤオさんが振り向いてくれるまで」
「一生ありません」
「ルリがここまで言うんだ。諦めろ………」
「それよりも~ハヤトはどうするんです?」
「お、おれ?………おれは……まだいいかな」
「ヘタレ」
「ヘタレですね」
「うっせ!!」
タカナシと少しは仲良くなった気がするが。まだ踏ん切りがつかない。
「仕方ないですね。8月夏祭りがあります。そこで二人きりにしますから。頑張ってください。私の親友は………勇気ある人と信じてます。それか期末試験後の駅前にある観覧車で決めてくださいね」
「お、おう」
ルリが立ち上がり。タカナシさんに会いに行くと言って教室を出ていく。何かムッとした雰囲気であり。おれは何か悪いことをしたのではと考えたが何も思い付かなかった。
「なぁ、やっぱルリ。お前に気があるんじゃないか?みーんな告白、玉砕してるよ」
「なんだよ。そいつら………接点ないのに頑張るな」
「お前が一番接点あってあれだから百合説もあるぞ」
「………もしかして。タカナシの事を」
「噂だけどさ」
おれは腕を組んで悩む。クーラーの効いた教室の中で俺はウンウンと唸る。もし、そうなら強敵だと。
「まぁでも、違うそうだけどな」
「ん?」
「ミヤオルリちゃんは自分で死ぬまで一人だって言ってたからな」
「そうなんだ………」
なんか少し格好いい。
ピロン!!
「ん?」
スマホから報告が上がってくる。祭りと観覧車。誘い大丈夫だったらしい。俺はなんともスゴい親友だと思い小岩井に報告した。すると………
「………」
難しそうな表情で小岩井が悩んでいた。何がどうしたのだろうか?
「小岩井、どうした?嬉しくないのか?」
「うん、ちょっとな……楽しみだが………うん」
女と遊べるの事に喜びそうな小岩井が悩んでいるのに違和感を持ちながら。俺は母親にどうやっておこずかいをいただくかを悩むのだった。
*
期末試験が終わり。駅前の百貨店に顔を出した。制服姿で遊ぶのは御法度な校則なので外で先生に見つかったがルリが先生の耳に何かを囁き見逃してもらえる。流石は優等生、先生を味方に入れる。早く帰れと怒られはするが何故かニヤニヤしていた。
「何を話したんだよ」
「耳かして………ハヤトが観覧車でタカナシさんい告白するんだよって伝えたんです。で、お願いしたんです見逃して欲しいですと」
「せ、先生は?」
「どうなったか後で教えますと言いました」
「お、おう………」
身売りされた気分だが。帰れと言われずに行けたので今回は不問にした。恩をいっぱい貰っているからな。
「さぁ~観覧車乗ろうぜ」
「私は小岩井と乗るね」
「俺もミヤオちゃんに用事があるから丁度いいわ」
露骨なような、露骨じゃないような。小岩井がその気らしいのは知っていたが。
「じゃぁ。私はミヤザキ君と乗るね」
「ミヤザキ。変な事するなよ」
「ハヤト、変な事しちゃいけないよ?」
「やるか、アホ」
こいつらは………とため息を吐くが。俺は心の中では感謝をする。順番待ちから、自分達の番となり観覧車のゴンドラへ乗った。そして俺は目の前に憧れていた人と乗るのだ。おお、やっぱ可愛いぞ。だが、何を喋って見ればいいかがわからない。
「うわぁ~上がってくね」
「は、はい………」
「クスッ緊張してますね」
「えっと……はい」
気が付いたのだが…………そういえばこう二人っきりになるの初めてだった。
*
私は小岩井君と同じゴンドラに乗る。久しぶりに乗り。うわぁ~上がるねと歓喜していた時。小岩井君にしては珍しい顔で質問を投げ掛けてきた。
「ミヤオさん。ちょっと話いいかな?」
真面目な顔で喋るとこを初めて見たとき。ああ、この人。いつもこうならモテるんだろうなと思いつつ。応答した。
「なんですか?」
「ミヤオさんはミヤザキの事………好きでしょ?」
真っ直ぐに確信を持った一言に私はそんなことないよ!!と言いそうになったが。彼のただらなぬ雰囲気に押されてため息を吐く。
「どうしてそう思ったんです?」
「距離感、昔より距離を取っている気がする。勘だけど。一生独り身って親友が他の誰かとくっつく前提で言ってるからかなって。それに親友のため、親友のためと言い一生懸命にくっ付けようとするのを見てると。無理してる気がして」
「…………はぁ。分かりやすい?」
「すごく。なんで告白しないんだ?それがわからなかった」
私はゴンドラの椅子にストッと座り。膝の上に手を置く。
「1年前からタカナシさんの事さ、いいなぁ~って二人で言い合ってたんだよね」
「知ってる俺も言ってた」
「でさ、女になるときさ………どうなに変わっても私は私で親友のまま居てくれるって言ってくれてたんだ。それがさ嬉しくて………安心できて………変われたんだよ」
「………仲いいなぁ」
「そうそう。で、また約束したんだ親友のままでいよう。絶対にずっと親友のままって」
「恋人じゃなくていいのか?なんかそっちの方がいい気がするが?」
「今のままの関係でいい………崩したくない」
「崩れるか?崩れないと思うが」
「崩れるよ………意識するとね多分遠くなる。距離をもっと取ってしまう」
「………はぁ~めんどくさ。俺ならささっとコクって終わりだわ」
「そういう方が楽かもね。でも!!応援したい気持ちは本当だから!!………だってさ………幸せになって欲しくない………好きなら」
「………」
コイワイが顔を上げたあと。頭をかいてむずかゆそうに話を聞いていた。そして、私を見て……正直な言葉を口にする。
「めちゃ惚れそう。なんでこんないい女がいて。タカナシさんなんだよ。俺にくれよ」
「フフフ、私が忘れたら………靡くかもね」
「じゃぁ~もしタカナシが付き合ったら………付き合おうぜ?」
「えぇ………」
「すぐじゃなくていい。いつかでいいからな………それまで誰とも付き合わないし告白もしないからな」
「………考えとく、忘れられるならそうする」
「そのときは忘れられるように頑張るさ」
コイワイの真面目な姿にちょっと引きぎみで答えを先伸ばしにした。私はなんでこの時期にモテ期が来てしまったのかを神に恨んだ。
男の時に来てほしかったと思うのだった。
*
観覧車に乗ったあと。タカナシさんと一緒に買い物を済ませた帰り道。タカナシさんとコイワイが同じ帰り道らしく。結局、私はハルトと帰ることになる。ガックリと肩を落としたハルトに私は慰めの言葉を紡ぐ。
「大丈夫。脈無しだったかもしれないけど………次があるよ」
「い、いや……そうじゃなくて緊張してさ。何も喋られなかったんだ」
「そうなんだ。ハルトは慣れてないんだね」
「そうなんだよ。俺さ………女と話した経験が低くて。上がってしまった」
少し、私は女じゃないのかとか。私とは会話できてるよねとか。文句を言いたかったが我慢して飲み込む。親友と言う区切りだからこそなのだろうと無理矢理納得して。大きく背中を叩いた。
バッチーん!!
冷や汗でもかいてたのか湿っていた背中を大きく叩いた。いい音が道路に響く。
「うが!?いってえええええええ!!」
「気合い入った?頑張ってセッティングしたんだからね」
「………つうぅ。悪かった。物に出来なくて」
「いいよ、これで今度は大丈夫だから。何度だって背中押すよ」
「…………本当にありがとうな」
感謝する優しい声。私はクスッと笑い。それをしっかり胸で聞き取る。その言葉だけで幸せだと信じて。
*
夏休みが始まる。そう、怠惰の時期が始まるのだ。恐ろしいほどに時間があり。惰眠を貪ろうと思っていた。だが………俺はある声に起こされる。
「ハルト、起きなさい。ハルト」
「んあ………あと5分………ルリ!?」
俺は飛び起きて、エプロン姿のルリに驚く。
「なんでここに!?」
「これ」
ルリがスマホの画面を見せる。そこにはなんと母親の文面で2泊3日の旅行の間。息子をお願いしますの文面が書かれていた。
「合鍵も貰ってるから」
「お、おう!?お前、いつの間に母親と仲良くなってたんだよ!?」
「買い物とか、色々なところで会うの。朝食後で買い物行くから何か食べたいもの教えてね」
「えっ?お前………料理できるの?」
「女になるって言った。だから………練習してるの母親と一緒に」
ちょっと照れたように鼻を掻くルリ。驚きはしたがまぁ………その。
「信じてないね。不安そうな顔だよ」
「信じれない」
「………うん。一発殴らせて」
「ああ!?ごめん!!」
「わかればいいよ。さぁ~起きて。買い出しにいけないから」
「わ、わかった!!自分で脱ぐから!!脱がそうとしないでくれ!!」
「………これちょっと汗臭い。洗濯もするから篭に入れといてね」
「わ、わかったよ」
ルリが俺から離れて部屋を出る。俺は慌てて着替え。汗臭いと言われたシャツを洗濯篭に投げ捨ててリビングに顔を出す。
「早かったね?」
「まぁ、うん」
俺は席に座る。するとコーヒーと目玉焼きとパンを用意しくれたあとに。ルリはエプロンを外し。テーブルの向かい側に座った。肘を立てて俺を見ている。
「な、なに?」
「食べ終わるの待ってるだけ」
「そ、そう。めちゃめちゃ見られてて食べずらい。ルリは食べたのか?」
「うん、とっくにね。もう9時だよ。お昼ご飯どうしよっか?」
なんと言うか。親友は美少女なのでちょっと変に気を使う。
「あーリクエストだよな………」
「何でもいいよ。ただ、何でもできないよ」
「それ、何でもじゃないなぁ……」
「何がいい?」
首を傾げて俺に聞いてくるルリはやはり可愛いと思う。
「じゃぁ……カレーがいいな」
「わかった。じゃ、買い物行くけど何かいる?」
「えっと……いらないかな」
そのまま、食器を片付けた後にルリは買い物に出掛けるのだった。俺もついていこうかと悩んだが。何か、デートみたいだなと意識してしまい。自室に籠るのだった。
*
ベットの上で寝転がり。下でルリが帰ってきた音が聞こえたので1階へ降りていく。リビングではテーブルに材料を置いて。口に輪ゴムをくわえ髪を後ろで束ねている姿のルリを見つけた。
ものすごく、なんとも言えない程にグッと来るものがあり。慌てて目線を反らした。首のうなじとか色が白く。大人っぽい。
「ん、ハヤト。待っててね今から作るからちょっと昼過ぎるかも」
「ああ、うん」
エプロンをつけて材料を台所に持っていき。お米を先に洗って炊飯器にセットしたりと手際よく調理していく。俺は、テーブルに座り………スマホで調理している背中を画像におさめた。
何やってるんだろ俺。
「ふ、ふふ~ん♪」
ルリがスマホで好きな曲を流しながら鼻歌を交えて料理していく。幸せそうな横顔に俺はついついみとれてしまう。本当に親友は可愛いと思い。もし、親友じゃ無ければきっと……理性は保てなかった気がした。
体の線は本当に女の子だ。気がついたら……ミニスカートを履いている。綺麗な健康そうな足が見え。少し俺はリビングを後にした。
目に毒だと思うのだ。
「2階行っちゃうの?」
「ん?なんかある?」
「………なんにもないかな。出来たら呼ぶね」
「…………」
「…………」
目線が合い。こう、親友が寂しそうな顔をしていたので俺は頭をかいて元の席に戻る。
「ありがとう」
「……」
何も言っていないのに。何もしていないのにお礼を言われ。照れ臭くなり鼻を掻いた。仕方ないじゃないか………
「にしても。本当に料理してるよコイツ」
「意外でしょう?」
「意外」
「………頑張った成果を見てね」
「おう」
俺はそう返事をすると黙々と料理していく彼女をずっと見ていた。沈黙。だけどそこまで、居心地が悪くはなかった。少しずつカレーのいい匂いがする。これを嗅ぐと本当にお腹が空いた気がして……好きだ。いつだって嗅いでも。美味しそうな匂いだ。
「ん………出来たかな?」
「出来たか?」
「味見する?難しくないから普通のカレーだよ」
「どれどれ」
席を立ち台所に向かう。小皿に少し取ってもらいそれを渡してくれる。エプロン姿のルリが笑顔で渡してくれる。
「うん。普通のカレー」
「よかった。ご飯用意するね」
「ああ……うん」
「どうしたの?」
「本当に女になったんだなぁ~って」
「………そうだよ。誰かのせいでね」
「ん?」
「なんでもないよ。さっ食べよう」
そう言って皿にご飯を盛り付けていく。俺も気にせず。ごはんは多目についでもらった。結局、おかわりしたのだったけど。親友のカレーは普通に美味しかったのだった。
*
私は午後。洗濯物を頼まれていたので篭の中の洗濯物を洗濯機に入れる。今日、臭いと言ったシャツも篭に入っていた。臭いと言ったが………それは嘘で。少し……ハヤトの匂いと甘い何か香水のような匂いがする。
「………」
少しだけ………いいよね?
「ん」
ハヤトの今朝脱いだシャツをちょっと嗅いだ。ハヤトの匂いが………する。そしてやっぱり私は好意以上に彼を想っている事を実感した。
「おーい。洗濯機まだ回さないのか?早くゲームしようぜ」
「あっ!?」
私はシャツを勢いよく洗濯機に投げつけた。
「俺のシャツを投げいれられてる!?」
「えっと……臭かったからね」
バレたかな?
「それで………いちいち臭いを確認してたのか。やめろよ。気分が凹むんだぞ」
「ご、ごめん。でもね………気のせいかなって思ったけどやっぱ臭かった」
「凹むんだぞ!?」
ショックの顔をする。彼、嘘をついている罪悪感はあるけど。本当の事を言うのもそれは……良くないと思う。親友でいるんだから。
「ごめん。回したらすぐ行くね」
「待ってるぞ」
「……うん」
私は洗濯機に洗剤を入れて。スイッチを押す。
「はぁ……いい匂いだったなぁ………」
少しだけ残念に思いながら。2階へ上がるのだった。
*
夕方、晩飯もカレーの残りで済ませ。風呂に入る。食器の片付けをルリに丸投げしてしまっているが。ルリがやると言い。先に風呂に入らせて貰っている。後で、クーラー効いた部屋でのんびりしようと考えたとき。
トントン、ガチャ
「は?」
「背中、流しましょうか?」
背後からルリの声が聞こえてきた。
「ええええ!?ええええ!?」
パコッ!!
頭を優しく叩かれる。
「うるさい。どうしたの?叫んで?」
「い、いや!?ま、まて!!」
「………ん?」
慌てて俺は股間を隠す。そして、諭すように俺は喋り出した。
「お前女。俺男。わかるよな」
「わかるよ」
「恥ずかしいから背中、流さなくていいから!!」
「………昔さ親友の背中流してあげたのに………そうだね。ごめんね。うん………親友のままじゃダメだよね」
「あああああ……わかったよ。背中頼んだ」
「……うん」
俺はぶっきらぼうに頼む。後ろでズルよねと言う小言と一緒に泡を立てる音が聞こえた。ドキドキしながらも待ってると。
ピトッ
柔らかに手が触れられ背筋がビクッとした。
「ごめん……冷たかった?」
「い、いや」
「………ハルトの背中。大きくて堅いね」
「男だからな」
俺はドキドキしながらも背中を擦ってくれる親友に見ないようにした。しかし、鏡で………親友の谷間を見てしまい。俺は頭が真っ白になる。ダメだこれ。
「すまん。ルリ………もういいよ。ちょっと気恥ずかしいわ」
「……ん」
「ありがとうな」
「じゃぁ……洗い流すね」
「それもするから」
「わかったよ。じゃ………2階にいるから出たら言ってね」
「おう」
そういえば泊まりだったなと思いだし。息子をどうにかして静めるのだった。