第6話:語り合いしモノタチ
「マスター、これまでの経緯はヴィルトから聞きましたがこれからどうするんですか? ヴィルトに聞いても大きな街に行くとしか答えなくて……犬は子供並みの答えしかできないから困りますよね」
「ん? ヴィルトの言う通り私たちは大きな街を目指している。何かおかしいところがあるか?」
「え!? いや、何もおかしくないです! ただヴィルトがおどおど話していたので詳しい目的地を私に話せないでいるのかと思いまして、説明下手なヴィルトが悪いんです!」
なるほど、確かにヴィルトはリーリカに対して怯えているようにも見えるな……こんなおとなしい奴に怯えるなんて本当に魔物か?
「道なりに行けば街に着く、そこが小さな町でも次の街は大きいかもしれない。いつかはたどり着くだろう」
「さ、さすがマスター ご聡明です!」
そんなに焦らなくてもいいだろうに……私が聡明なのは当たり前だ。
「それよりもお前に聞きたいことがあってな」
「はい、何でしょうか?」
ヴィルトにはあえて聞かなかったが上位の悪魔であるこいつなら知っているかもしれない……
「おまえは魔力を感じられないようにすることができるか?」
「あ、例のオルガって人の技術ですね。 申し訳ございませんが私はそんなもの聞いた事もないんです、お力になれずすいません」
ふむ、つまりあれは魔界の技術ではないということか……しかしあれが人間の技術とは思えん。だとしたら人ではない何者かがもたらしたということか、それとも……
「……しもーし、マスターきいてくださーい!」
「ん、すまん。考え事をしていた」
「――ボケたんじゃねえのか」
今まで黙っていたヴィルトが突然口を開いたと思ったら馬鹿な事を。
「おい馬鹿、そんなことを言ってると「ヴィ・ル・ト! あなたマスターになんてことを言ってるんですか! こんな若々しくかわいらしいマスターがボケているはずないでしょう、そもそもあなたは口のきき方が……」」
いきなりリーリカがすごい剣幕で――顔は笑ってるけど怖い目で怒り出した。私が馬鹿にされたのにここまで怒るとは……あいかわらず理解できない行動をする。それに事実とはいえ褒めすぎだ。
怒られているヴィルトはというと尻尾を丸めて座り、俯いたまま微動だにしない。なぜ私に刃向かうくせにリーリカには服従するんだ、納得できない。
「リーリカ、馬鹿は無視しろ。それより今後のことだがお前の意見を聞きたい、何か案はあるか?」
「あっはい、特に意見はないのですが……大きな街に着き次第聞き込みをするのは私にお任せください。それよりもマスターはオルガがどのようなものかをすでに見て知っているのですから、オルガ自体を探していただいた方がいいと思います」
なるほど……たしかにオルガがまだ存在するのであれば今度こそ捕まえて調べた方が早い、やっぱり頼りになるなメイドは。
「わかった、そうしよう。とにかく次の街が小さくても大きくても、まずは魔具の売却、あとは食糧の購入だ」
「はっ肉だ肉! 忘れてないだろうな、高級肉だぞ!」
うるさい犬め……とにかく街に着かなくては話にならないだろう。だいたい歩きながら話していたから疲れているのに何でこいつらは平気そうなんだ、犬は分かるがリーリカまで。二百年塔に閉じこもってたから運動不足だったのか……いや、私じゃなくこんな長い道を作ったやつが悪い。見つけたら殺そう。
「マスター!街ですよ、結構大きいです!」
確かに街が見える、やっと着いたか。それにしても長かった、早く街に入って休まなくては。
「なにを愚図愚図している! はやく行くぞ」
「っち、いきなり元気になりやがって、こんなに時間かかったのはお前がのろのろしてたからだってわかってんのか?」
「ヴィールート? マスターにそんなこと言っちゃ……」
うるさい二人は無視して先に行くか、相手にしてたら日が昇ってしまう。
見た所門は閉まっているが何とかなるだろう、自然と走ってしまうのは気のせいだ。別に大きな街が久し振りで嬉しいわけじゃない。
「マスターおいてかないでくださーい」
慌てて二人が追ってくるのを確認し、私はさらに足を速めた。
何度も言うが別に楽しんではいない。
だが運動不足の私が二人より早く走ることができないのは言うまでもなく、すぐに追い抜かれてしまった。悔しい。
戦闘のある話しに比べますとそれ以外の話しは短めです、更新は出来るかぎり遅らせないようにしますので応援よろしくお願いします。