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第4話:旅立ちしモノ

 炎が収まり、奴がいた場所を見るが何も残っていない。少しやりすぎたか。

「ヴィルト、お前のせいで何も残らなかった……褒美は無しだ」

 もっとも、食糧庫が位置する塔の上部が先ほどの光線で消えてしまったから肉はない。自分でも「肉が……」とか叫んでたしその辺は分かっているだろう。

「なっ約束が違うじゃないか、肉を貰うまで俺は帰らんぞ!」

「そんなことを言っても肉は無い。どうしても食べたければ森で兎か鹿でも捕まえればいいだろう」

「お前からもらわなければ約束の意味無いだろうが、くれるまでついてくからな」

「ついて来るのは構わんが……馬車馬の如く働かせるから覚悟するんだな」

「……肉追加だ。高級なやつ」

 意地でもついて来る気か、まあそのうち食わせてやろう。

 だがオルガのことも気になる。私が塔に籠っていた約二百年の間に何があったのか、あんなものを使役できる技術には興味がある。だがそれをここで調べるのは無理そうだ……なら取るべき手段は一つ。

「塔に戻る」

「あ? 塔には肉ないんだろ?」

「肉なんてものはどうでもいい、塔から必要な物を持ち出したら旅に出るぞ」

「何でいきなり……なるほど、流石のトリスも二百年間引き籠ってたから寂しくなったのか」

 口の端を上げてにやにやと笑ってるのはいいが気持ち悪いぞ。

 とにかく塔に戻り、これからどうするかを決めなくてはな。



 そして来た時と同じく塔まで飛翔して帰ってきた、ヴィルトは森の中を走って来させたが私より早く塔についていた。流石は犬だ。

 塔はそこだけ抉られたかのように上部が消えており、無事なのは結界を張ってあった私の私室と地下にある倉庫と書斎だけだった。

 とりあえず必要な物を探す。昔気まぐれで作った圧縮魔法を応用したバックを見つけた、これは入れるもの全てを圧縮して保存することができる。小屋一個分くらいの量が入れられるはずだ。バックに片っ端から物を詰め込む、魔導書や服……ドレスはいらないな。

 水は魔法で出せばいいし、食糧は町で買うか森で動物を狩ればいい。そう考えると必要なものは(ほとん)どない、結局入れたのはいくつかの魔具と魔導書、それに服だけだ。それに現金はないが大きな町で魔具を売ればそれなりの額は稼げるだろう。

 バックを持って塔を出るとヴィルトが木陰で待っていた。持ち歩く荷物がバック一つということに不安がっているのか眉を寄せている。

 おっと、大事なことを忘れていた。旅に出るならこんなものいらないな。

 想像するイメージは崩壊、細かく砕けて崩れ落ちる姿。

裂痕(クルレ)

 塔に細かな亀裂が走り、それが全体を覆い尽くすと音を立てて崩れ落ちる。旅に出るなら帰る場所などいらないからな、それに何者かがやってきて私の持ち物を漁られるなんて想像しただけで吐き気がする。

 ヴィルトは呆れ顔でため息をつきながらも微動だにしない。私のことを壊して当然とでも思ってるのか?

「待たせたな、行くぞ」

「で、どこに行くんだ?」

「大きな街、場所は知らんが道なりに行けば見つかるだろう」

 できれば大きな図書館があり、現在の世界事情がわかる情報発信施設がある所がいいが贅沢は言ってられまい。とりあえず人が沢山いる街ならある程度の情報を集められる。

 横でヴィルトがぐちぐちと文句を言い始めるのがそれはいつものことだ。苦情なんて無視してその背に跨る、小柄な私なら上で寝られるほど大きな背中。ふさふさの毛皮が心地よい。

「後は頼んだぞ」

 そういえば今日はまだ寝てないんだったな……ヴィルトに抱きつくようにして前に倒れこむと、襲ってくる睡魔にしたがい夢の世界へと向かう。

 ヴィルトの体から震動が伝わってくるということは文句を言いつつちゃんと歩いているんだろう、街に着いたら少しいいものを食わせてやろうかな。

 久しぶりに日光を体に受け、そう考えながら今度こそ本当の眠りについた。

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