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第1話:眠り妨げしモノ

お待たせしました本編です。

 目が覚めたら、まずは眠いのを我慢して体を起こす。

 そして視線を上げて窓を見る――いや、窓の向こうの夜空を見るのだ。

 そこに映る星たちの儚さに人間たちを重ねて一つの言葉を口に出す。

「あの人間むしけら共め」

 ああ、これを言わないと一日が始まった気がしないな。

 一つ満足げに頷いてベッドを出る。いくら一人で暮らしているとはいえ習慣を壊すのはいけない気がするからだ。

 塔の外にある井戸へ顔を洗いに来たのだが、井戸の水が思ったよりも冷たい。もうすぐ冬が来るんだと感じてしまう。

 長い間この塔に住んでいるが冷たい水には慣れない。

 冬なんて大嫌いだ。暑苦しい夏も嫌いだが……

 顔をしかめながらも顔を洗い終えてタオルでふく。いかんな、せっかくの美貌がしかめっ面などしていたら台無しだ。

 一人冷たい水に文句を考えていたせいか、気がつけば空高くまで月が昇っていた。 

 塔の中に戻り、書斎で魔導書を広げる。

 夜中は基本的になかば生きがいとなっている魔法と悪魔の研究をしている。最初は人間どもに復讐するために魔法のことを調べ始めたのだが、今となってはそれが趣味になってしまったのだ。特に召喚した魔人や魔物をいじめるのが楽しくて仕方がない。

 その間口にするものと言えばかめに汲んである水と森で採ってきた果実くらい、別に一週間くらい食べなくても死なないがおなかは減るのだ。

 だが睡眠はしっかり取っている、取っているというか……朝日が昇る頃になると眠くて起きていられない。完全に昼夜逆転しているが、別に他人と接することもないので気にしない。

 それに何より静かだってことが大事。うるさい街の中に住んでたらキレてしまうだろうし。

 魔導書をめくりながらこれからのことを考える。

 魔力も今では賢者と呼ばれる奴らにも負けないと思うし、そろそろ復讐を始めてもいい気がする。しかしそうなったら研究を続けることもかなわないだろう。

 今は復讐なんてどうでもよくなっているのかもしれない、それよりも研究を進めたいという気が強いと感じる。なによりこの生活をしていれば人間なんて気にしなくてすむし。

 ……いかんな、今日は無駄な事ばかり考えてしまって研究が進まない。

 書を開いてから結構な時間がたっていたがたいした成果が出ない。こんな日はこれ以上やっても無駄だろう。

 机の横に置いておいたリンゴをかじりながら部屋を出る。

 階段をトコトコ上がればすぐに私室だ。ベッドしか置いてないけど私にはそれで充分。

 まだ日が昇るまで時間はあるが寝てしまおう、一つ手をたたけば服が一瞬でネグリジェに代わる。空間転移を応用した魔法で便利なのだが、消費魔力が多いので普通の人間が使うことはないと思う。

 窓のカーテンを閉めて横になる。だんだんと眠くなってきて、完全に寝付く瞬間――轟音が響いた。

 驚いて飛び起きてしまった、いったい何事だろうか。カーテンを開けると朝日が顔を見せて世界を照らそうとする中、地上の一部が赤く染まっていた。

 あの辺は……たしか町があったはずだ。それなりに大きな町だと思ったが、今では街のいたる所で炎が上がり爆発が起こっている。

 まったく人間とは争いが好きなものだ。

 勝手に殺しあうのはどうでもいいが……私の睡眠を邪魔するのは許せん。少しお仕置きが必要だな。

 部屋の壁にかかったマントを身にまとい、私は不機嫌さを隠すことなく荒々しい足取りで塔を出た。

 さて、どんな坊やがいるのだろう。そう考えながら、私は町へ向かって飛翔した。

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