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契約は天使のキス  作者: 海鮮鍋/玉蜀黍
第四章 激動の交武祭典篇
30/33

23話 旅立ちは潜水艇で

忙しくて遅くなりました。


その分量大目にさせて頂きましたよ!


今回から第二部の本格始動ですよ!



北武装守護学園の入り口。


「では皆さん、お気を付けて行って来てくださいね」


「ああ、勿論だぞ!」


 先生に見送りの言葉を言われ、赤茶色の青年―――アリマ・ヒョウガは、先生達へ手を振りながらそう返す。


「ヒョウガ。必ず勝ち抜いて決勝まで行くんださよ!」


「頑張って来るだべえ」


「まあ、頑張れ」


 「グハハハハハ。闇に移りし影に呑まれぬようにな。愚者否、闇を払う強きチームよ」


「はああぁ~。眠い。皆眠気に負けず頑張って」


「・・・・・・頑張れ」


見送りに来たチームの一角。


ヒョウガの友―――ルゼイン・ディブと仲間がそれぞれエールを送ると。


「有難う。ルゼイン、それに皆」と言葉を返し。


もう一つの、チームで見送りにやって来たエデロアたちは。


「アーティナ、皆と協力して勝ち抜くんだよ!」


「お前達なら必ずいい結果を出せると信じているから」


「気持ち良くなってきて・・・・じゃなくて、自分たちの全力を尽くして、そして勝って来てね」


「カナミ、絶対勝って来てね!」


「皆キをツケテ行ってきて」


「目指せ世界一」


とそれぞれがルゼイン達同様にエールを送ると。


「ありがとう」


「が、頑張って来るわよ!」


「うん、心配ありがとう」


「勿論そうするつもりですの」


「はい、分かりました」


「そのつもりだよー」


其々が言葉を返す。


―――そして俺はエイトの元に行く。



「んじゃあ、言って来るぞ!」


「ああ、分かったよ。くれぐれも気を付けて、無茶な事もあまりしないでくれよ!」


「ん・・・・・・!? 分かったぞ! んじゃあ、行って来るぞ!」


「行ってらっしゃい」


 エイトに旅たちの挨拶をするや、彼は気づかいの言葉と、心配の言葉を掛けてくれ、その言葉を噛み締めた彼は分かれの挨拶を交わす。


「アミリちゃん、頑張ってきてね」


「授業があるから見に行けないけど、応援してるぜ!」


「ロ、ローゼン、チャリ、ありがとう。行ってくるわね!」


 アミリへと近付いてきた蜂蜜色の髪が特徴的な少女―――ローゼンとその隣に立つ鶯色うぐいすいろの髪の少女―――チャリが声を掛けてきて。


彼女は親友二人に、可愛らしい笑顔振り撒いたまま、そう言葉を返すと。


「「行ってらっしゃい」」


とローゼンとチャリが言い。


―――そ、それから見送られたから、私は手を振り返したわよ。


そして、皆の元へアミリは向った。


その頃ヒョウガは、彼の元へとやって来る少女に気が付いて。


「ん・・・・・・!? 誰だ?」


と彼が尋ねると、少女はおどおどしながら言葉を紡ぐ。


 「あの・・・・・・その~・・・・・・え~と、これを受け取ってください。このお守りは凄く効果があってとてもすごいんです」


「ん……。誰だか知らないけど、ありがとう。大事にするぞ!」


「此方こそありがとうございます。凄く凄く応援しています。絶対に勝ち続けて下さい」


紫色のお守りを、受け取ったヒョウガは右手にギュッと握り締めてお礼を言う。


するとその子の目がキラキラと輝き始めて、応援メッセージを送る。


その時、幼女が腕をグイッと引張って来た。


「妾の未来の婚約者フィアンセに気安く近付くんじゃないのじゃ」


「未来の婚約者ですか。こんな小さな子と⁉」


「否、違うぞ? 何て言えば良いのやら」


 とんでもないことを言い出す幼女―――リーフ・チェレヌのセリフを聞いた少女は、次第に憧憬していた彼の顔が、ばりっとひびが入りそして瓦解がかいしていく。


「そんな楽しそうにしていて、よく言えますよね。もしや、ヒョウガ先輩は幼女がお好きなんですね」


冷たい眼差しを向けてそう言い終えるや否、学生寮の方へと戻って行った。


 それはまあ良しとしておいて、沢山の人に見送られながら、二チームは男の先生と共に崖を下り、そこから都市内にある港へと向かう。


距離にしてに十分ちょい。


 そして港に辿り着いたときには、既に一隻の超巨大な潜水艇が浮かんで待っていて。


全員いることを確認するや、潜水艇のドアが開け放たれ―――。


「それでは、乗ろうか」


先生を先頭に次々と乗り込もうとするも、


「皆さん、お荷物をおお預かりいたします」


 長身の男性が、ヒョウガ達のと、リーフ達の荷物を受け取ると、艇の下部分にある空洞に入れて行く。

その後、先生らの荷物も積められてから。

彼らは船内に本格的に入り込んで、少しして出発する。


だからヒョウガ達は、外の景色が見えるテラス席にするり―――。


「ん・・・・・・!? 先に来てるチームがいるぞ!」


 テラス席について辺りを見渡したヒョウガは、ソファーで寛ぐ生徒と、椅子に座り仮眠をとる先生、チームの存在を口にすると。


「ん? あれか? あれは天空武装守護学園の代表チームと、北北東武装守護学園の代表チームだ」


と先生が凝視したまま教える。


それから直ぐに潜水艇が止まり―――。


 東の学園代表の二チームと、先生、運営委員。それに続いて北東の学園代表の二チームと先生、運営委員。北南東の学園代表の二チームと先生、運営委員が別々に乗り込んで来て。最後に乗り込んできたのは、東北東の学園代表の二チームと、先生らで。


物凄く潜内は広いが為、それぞれが好きな所で着くのを待つらしく。


そして潜水艇は西の港へ向かい。


 少しして到着すると、先ず西の学園代表二チームと、先生、運営委員が乗り込み。次に北西の学園代表の二チームと、先生、運営委員が乗り。その次に北北西の学園代表の二チームと先生、運営委員が乗ると。最後に西北西の学園代表の二チームと、先生、運営委員と、地下都市代表の二チームが別々に乗り込む。


そしてそれぞれ別々に分かれて席に座り。


それから潜水艇が出発し、次の目的地である南の港へと向かう。


向かっている最中、ヒョウガ達が海の景色を眺めながら話していると。


「人が増えて来たな」


「そ、そうね」


 「あの~ご主人様! それにお嬢様‼ 愛情をたっぷりと詰め込ませて頂きました。ホットコーヒーと、カフェラテになります」


 何処からともなく現れた三人のメイドは、コーヒーをお盆から取り出し、彼らの前に差し出す。


「こんな所にもメイドガイるんだ!」


「ホ、ホント、そうよね。メイドなんかも付いてるのね」


「皆、メイド服可愛いぞ!」


 ヒョウガ達がメイド三人に注目する中、カナミ、アミリ、ヒョウガがそれぞれ思いを口にすると。


「そう言われると、とても嬉しい限りです。これをどうぞ! 私の作ったクッキーです」


 嬉しそうな表情を浮かべたメイドの一人は、バケットに入ったクッキーを彼らに渡す。


 「否、アタシらは潜水艇内ここのメイドじゃないですよ。この子も、その子も。アタシらは本当はメイド喫茶のアルバイトですけど」


「ボクは着たくて着ているんじゃない。だって男だからな!?」


「ん・・・・・・!? オトコの娘だったのか!? てっきり可愛らしい中等課の子かなと思ったぞ!」


「大事なところ、そこじゃないと思いですの! てことは、何処かのチームですの?」


 三人のメイドの中で一番背の高い少女の発言に、背の低いメイドの一人が痺れを切らし、自分の性別を暴露し、彼は辟易していた。


 それを聞いた彼は、本気で驚き、思っていたことの方も口にするが、透かさずアーティナは口をはさむ。


そして彼女の問いかけに、一番背の高いメイドが、こくんと頷く。


その反応を切っ掛けに、アミリが疑いの目を向けて問う。


「ま、まさかとは思うけど、このコーヒーに毒を入れてあるんじゃないわよね? 数減らしが狙いで」


「どうかな?」


 「もう意地悪は駄目ですよ。それじゃあ、信頼されなくなっちゃいますよ。安心してください! 中身は普通のコーヒーです。入ってるのは愛情だけなので安心して下さい」


 その問いを、ややこしくしようとした一番背の高いメイドは、小さなメイドに叱られてしまい。

そしてそのメイドが、安全であることをアピールする。


ズズズ―ッ、


「ん~ん。このコーヒー美味いぞ! それに‥‥‥ん~ん。このクッキーも超美味いぞ!」


「では、砂糖とミルクを貰うですの!」


「そうご主人様に言われますと嬉しい限りでございます。はい、お嬢様! どうぞ‼」


 ヒョウガがコーヒーに舌鼓を打ち、バケットからクッキーを三つ程掴むと、口に頬張り、率直な感想を伝えた。


 その様子に安心したアーティナは、前に置かれていたのがブラックコーヒーだったため、必要不可欠な二つをメイドに頼む。


すると、上機嫌になった小さなメイドが、彼女の前に砂糖とミルクを置く。


アーティナは砂糖とミルクをほぼ全部入れ、コーヒーカップを口に運ぶ。


「ふうふう。ん~ん。凄く美味しいですの!」


ズズズ―ッ、


 「どれどれ。ん~ん。美味しいね! こっちのクッキーは・・・・・・ん~ん。口の中でバターの甘みが引き立っていて美味しい」


 「では、ワタシも戴きます。ふうふう。ん~ん。このカフェラテ、とても美味しいです。このクッキーも戴きます。ん~ん。こちらはプレーンです。甘くて美味しいです」


ズズズ―ッ、


 「それじゃあ、ウチも飲むよー。ふうふう。ん~ん、ミューフィの言う通りだー。カフェラテ凄く美味しいよー。ウチもクッキー貰うよー。ん~ん。このココアの味のクッキーも美味しいよー」


 「そ、そんなに美味しい訳ないでしょ! どうせ嘘に決まってるわよ。でも仕様が無いから飲み食いしてあげるわよ! ふうふう。ん~ん。皆が言っていた通りだったわ!? クッキーも貰ってあげる。ん~ん。このチョコクッキー、物凄く美味しいわよ!」


 残りの四人も、メイドからいただいたコーヒーに舌鼓を打ち、五種類のクッキーから、三、四枚とって口に運び、それれか味の感想を言う。


褒められた少女はトビっきりの笑顔を浮かべ。


「褒めて頂きありがとうございます」


とお礼を言う。


「なあ、君がメイド喫茶のチームのリーダーか?」


―――クスクス。


と笑う小さなメイドは失礼を詫びて。


 「ご免なさい。ご主人様! 笑ってはいけませんでした。否、私はリーダーじゃありません。私がリーダーなんて勤まる訳有りませんから。彼方に居る先輩がリーダーです」


 そう言って指したのは、テラス席から見て真中の席でコーヒーを注いでいる、紅色にロングストレートの少女。


 「名前は、レゼリア。レゼリア・ヌーデル。一年生にしてリーダーを務める凄い人なんです。ちなみに私の名前は―――ロコ・エーゼルと言います。気安くエーゼルと呼んでください。中等課二年です」


―――リーダーの名前を教え、彼らに紹介して、ついでに自己紹介をする。


エーゼルという少女は、栗色の髪に、赤茶色の瞳を持つ。


そして背丈は、アーティナより少し低いくらいで。


「中、中等科二年にしては低いわね!」


「ま……まだこれから伸びるんです。多分」


アミリに痛い所を突かれたエーゼルは、目を×にして訴えかけて。


「そうそう。これから大きくなるからね! きっと」


「ああ、二人の言う通りだ。気にするな」


などと、メイドを主人とお嬢様から可哀想に思われる始末に。


 その光景を目の当たりにした一番背の高いメイドは、「次の所をやるんで」とだけ言い残すや否、二人を連れて別の所へと言ってしまい。


そしてしこへ―――


「ヒョウガ」


邪魔者はいなくなったと言わんばかりに、リーフがこちらへと歩み寄ってきて。


「妾以外の女との浮気なんて許さないのじゃ」


「別に浮気していた訳じゃ無いぞ! 本当だ」


「そ、そこじゃないでしょ!! ヒョウガ先輩はリーフの物じゃないに決まってるわよ!」


「未来の婚約者を差し置いて、一体誰のモノなのじゃ?」


 先程のアレを浮気と捉えてしまった幼女は、人差し指を立てて左右に揺らしながら叱り付け。言い訳にも捉えかねない言葉を言い放つ。


 が、その言葉にアミリはツッコミを入れ、正しくも言葉足らずな言葉を発するも、自称未来の婚約者のリーフは、返し辛い質問を返す。


その時、運良くと言うべきかは分からないが、南の港に到着し、潜水艇が止まる。


 そして、南の学園代表の二チームと先生、運営委員がまず乗り込み。次に南東の学園代表の二チームと先生、運営委員。その次に東南の学園代表の二チームと先生、運営委員。南西の学園代表の二チームと先生、運営委員が乗り込むと、その次に西南の学園代表の二チームと先生、運営員。西南西の代表二チームと先生、運営委員が乗り込む。最後に南西南の学園代表の二チームと先生、運営委員が乗り込んだ。


それから少しして出発しようとすると。


 「え~と、皆さん、先ほど潜水艇内を捜索中、怪しいバッグを発見しました。安全の為に一度外への避難にご協力ください。安全が分かり次第にすぐに出発するよう指示してきますので」


 乗組員の男性の一人が血相を変えて指示を出すので、慌てふためく人も、驚く人も、理解が追いつくのに手間取っている人も冷静な人も皆、急いで外へと逃げて行く。


そして乗組員のうち三人と、運転手も一時避難を行い。


「あの慌て様は最高だ。さてと」


本性を現した長身の男性の乗組員―――鍵は、元学園長へ連絡を入れ、


「では行こうかのう」


「了解でしょう」


「分かったメア」


 元学園長―――セロラン・リュードの合図で、偸盗から生まれた悪魔―――盗魔〈ムフィード〉と、両舌から生まれた悪魔―――裂魔〈ヒアイ〉と共に、誰の目にも触れぬ事無く艇の下部にある荷物入れへ潜り込む。


そして発覚バレぬよう上手く隠れることに成功。


「これで後は最後まで乗っているだけじゃのう」


「では念のために気を付けましょう」


「確かに必要メア」


などと一人と二体はそれぞれがそう口にし。


 「皆様、お待たせ致しました。唯のタイマーとクッションでした。誰かの悪い悪戯でした。でももう大丈夫そうなので、潜水艇に戻って下さい」


 乗組員の長身の男性は、全員の目の前に現れ、予め用意しておいたタイマーとクッションをバッグから取り出して見せつけ、安心させてから他の乗組員や運転手も戻って行き、已む無く潜水艇は出港する。


そして最後に離島へと向かう。


「それにしても驚いたのじゃ」


「ああ、まあ、絶対危ない物だと思ったから、安全なものでよかったぞ!」


「そ、そうね。それにしても一体だれが何のために仕掛けたのよ?」


 先と同じ綺麗な景色が眺めれるテラス席に座り、リーフが早速口を開く。それを聞いたヒョウガは危惧しすぎていたと口にした。アミリは仕掛けた人物の理由を気に掛けていた。


「確かに気になるね!」


「何事も無ければいいですの」


「ワタシも同じことを思いました」


「なんだかその言い方だとフラグにしか聞こえないよー」


 カナミがアミリの気掛りを尊重するように言うと、アーティナとミューフィはこれからの事を危惧し始め。そのセリフを聞いたサラはフラグだと喚く。


「みんな心配のしすぎなのじゃ。唯の誰かの脅かしに決まってるのじゃじゃ」


「リーフのそう言う所が、俺は好きだぞ!」


「や、やっぱりヒョウガ先輩は、私よりも積極的でこういう子が好きなのね……」


「ん・・・・・・!? 何か言ったか?」


「な、何も言って無いわよ。聞き間違いでしょう」


幼女が彼らに少し強くそう言うと、彼は大胆にもそのような発言をする。

 唇を噛んだ彼女は、自分にない物を持つの事を妬み、椅子地下疎ましく思う悪い自分がいるではないか。


アミリのつぶやきにヒョウガは感応し、聞き返して来た為、咄嗟に誤魔化す。


 そんな事をしている内に、何時の間にか離島についており、その島の代表二チームと先生、運営委員が乗り込む。


全学園代表が揃ったので、潜水艇は―――いよいよ海の中へと潜って行く。


すると早速、辺り一面に沢山の魚が現れて。


「奇麗ですの」


「本当ですね」


「あのお魚可愛いよー」


「ホ、本当ね」


「お魚が一杯なのじゃ。奇麗なのじゃじゃ」


 魚の群れを見たアーティナ、ミューフィ、サラ、アミリが見た率直な思いを述べ。リーフは見るのが初めてだったのか、大燥ぎをし、喜ぶ。


「ねえねえ、ヒョウガ君。お魚が沢山泳いでるよ」


「そうだな」


―――本当、普通の子供みたいだぞ。


とヒョウガは天使―――シナモンの燥ぎっぷりを見て本音を心の中でのみ漏らす。


そこで、元学園長らですら予期せぬアクシデントが起きてしまう。


 ―――その原因は、潜水艇を囲むように三頭の鮫がこちらへと襲い掛かって来たから。


ドォォオオン! ドォォオオン! ドォォオオン!


ガブリガブリと鮫の牙で噛み付かれてしまい。


 鈍い音と、その直後に来る大きな衝撃により、艇がバランスを保たれなくなってしまい。


 『皆様、お分かりかと思いますが、鮫の攻撃を受けて、墜落して行ってます。慌てず、足ら、または丈夫な何かにしっかりと捕まっていてください』


―――落下していかざるおえない。


『ぎゃあああぁ~』


彼方此方こちらから悲鳴が木霊する。


 そして海底ギリギリのところで、まるみのある声音で一人の少女がこのタイミングで技を発動する。


「精霊術<精霊ナンフール ・ディりジャンスき>‼」


そう少女が唱えた直後―――潜水艇の自由落下が止まり、独りでに動き出した。


―――否、違う。


とヒョウガが思ったのもその筈だ。何故なら彼は目にしてしまったから。


 彼らが乗る潜水艇が、トラのようにもに抜ける精霊により、目的地へ文字通り―――導かれようとしている所を。


 そして精霊使いの少女の技により、創り出された誘導線と、トラ型の精霊により目的地を目指す。


そして後、六分が経過したその時、


「これが海底楽園都市ライシス何だね!」


そうカナミが呟くと。


 目の前に現れたのは、都市全体が水の結界に覆われ、彼方此方に娯楽施設や遊園地があり、中央にはコロシアムの様な物が有り、他にもいろいろとあって『楽園』と呼ばれるのも分からなくもない。


「ん・・・・・・!? 此処がそうなんだな。中々良い所だぞ」


「確かにそうなのじゃ。沢山遊んで、戦うのじゃ」


「あ、遊んでばかりは駄目なんだからね。特訓もしっかりするのよ」


 ヒョウガがどうやら気に入った様子で、リーフも同じらしく、予定を決め、アミリが内容に対して注意をすると。


「では皆さん、到着いたしましたので、皆さん降りて下さい」


と乗組員の長身の男が全員に指示を呷ると、続々と外に出て行く。


―――水の中でも、結界の中の為普通に歩けるらしく。


 全員が外に出ると、乗組員の長身の男は準に荷物を取り出し、それぞれ荷物を持つと、そこへ責任者らしき人と、二チームがやって来た。


 「ようこそ! 皆さん、無事に辿り着いて頂けました。海底王に仕えるものの一人です。そしてこちらの二チームが、海底楽園都市ライシスの代表チームです」


海底王に仕える男性が紹介した直後、キャプテンと思わしき人物が口を開き―――


 「本当はもう一チームのキャプテンお話があったんですけどね、時間の都合上そのキャプテンの話は割愛させて貰います。アタシ―――グレナ・マイゲラット率いる、チーム<混種多族ハーフ・エヴェン>。こちらがジャーラ率いるチーム<魚人ルイシュメンファ>です。どうぞ! 宜しく」


 亜人の少女―――グレアが、予め了承を得た上で自己紹介とチーム名を口にして、話を終わらす。


それから、海底王に仕える男性に又バトンを託し。


 「では、これからの話をさせて頂きます。一先ず、皆さんが宿泊する選手専用のホテルへ案内します」


 彼の後に続き、全員が三十分ほど歩いた所に建つ、選手専用には似つかわしい豪華な高層(宿泊施設)に向う。



 人気が無くなったことを確認した元学園長は、二体の悪魔と共に荷物入れから出ると、目的地である丘の上に立つ小屋を目指して歩き出す。


到着までの時間は―――一時間ちょい。



<交武祭典>《アルージェフェート》参加者専用のホテル前。


「では、先ずこちらの説明からさせて頂きます。部屋割りはこちらになります」


海底王に仕える男性が、部屋割表を全員に見せ。


 「この通り、部屋には学園名とチーム名。それから男子と女子と書かれています。では、一度荷物をお気に言って下さい」


と言うことで、荷物を置きに行く。


 カナミたちの部屋は、二つのホテルの内、右側で、エレベーターで二階に上がり、その真中だ。

そしてヒョウガの部屋は、その二つ隣りらしく。


 部屋の窓からは、今は賑やかな街や店が見え、更に遠くの方には丘の様な物も見える。


「ほら! ヒョウガ、行くよ」


「ああ、そうだな」


 カナミの呼びかけにそう返すと、部屋を出てエレベーターで一階に下りて、出口へと戻って行く。


 彼らが戻ると、他のチームも全員揃っていた為、海底王に仕える男性が、口を開き―――。


 「それでは、簡単に説明します。二日後の午前十時より、コロシアムにて開会式を行います。其方で海底王様から詳しい説明があります。それで迄の間は、ご自由にお時間をお過ごしください。最後にお食事についてですが、今晩は祝宴場にて十九時となります。尚、明日につきましては、部屋食で七時になります。これで終わりです」


説明を一通りした所で、自由時間となって。


               ♢ ♢ ♢ ♢


「お腹が空いたですの!」


「んじゃあ、何処かで食べるお店を探すか」


「妾も一緒に食べるのじゃ」


ヒョウガ達が歩きながら話してると、さり気なくリーフが付いて来ていた。


「な、何で私達に付いて来てるのよ!?」


 「それはなのじゃね。コロネが『折角だから、未来あの婚約者ひとと食べてきたら?』って言ってたのじゃじゃ」


「んじゃあ、一緒に食おうな」


「ムッ」


透かさず反応を見せたアミリに、コロネに言われたことを口にし。


話を聞くや、彼はそう優しい声を掛けるのでアミリは不満を漏らす。


―――ぜ、絶対にリーフみたいな幼女より、私の方を振り向かせるんだからね!


アミリはリーフを凝視し、闘志を燃やすのであった。


「なあ、リーフ。何が食べたいんだ?」


「妾はね‥‥‥」


「わ、私は温かいものが食べたいわよ!」


「温かい物か。グラタンとか、ドリアとか?」


「そ、そうよ!」


「ん、分かった。んじゃあ、行くぞ!」


という訳で、グラタンやドリアのあるレストランを探していると。


「ねえねえ、ヒョウガ。あそこなら条件に合うんじゃない?」


そう言って指を差したのは、ラ・ヴァイアと言うグラタンとドリアのお店で。


「確かに良さそうですの!」


「確かにそうです」


「ここ良いよ~」


「んじゃあ、入るぞ!」


 後ろを歩いていたアーティナ、ミューフィ、サラがショルダーケースの中にある食品サンプルをのぞき込んでそう言い。


店内へと入店した。


「いらっしゃいませ! 七名様ですね。どうぞこちらへ」


ウェイトレスの女性に案内された所は、両方共がソファー席で。


「どうぞ! メニュー表です。ご注文が決まり次第お呼び下さいませ」


 そう言ってメニュー表を二つ渡すと、一度別の場所へ行き―――水を二回に分けて持って来てから、別のお客さの元へと向かう。


 ―――今更だが、座る順番は奥川にアミリ、ヒョウガ、リーフ、そしてアミリの前にミューフィ。ヒョウガの前にサラ。リーフの前にアーティナ、カナミだ。


「何にしようかな」


とカナミが、メニュー表を捲っていると。


 「アタシはランチメニューにある、海老と烏賊イカのシーフードドリアのAセットにするですの」


アーティナが頼むAセットには、ワンタンスープとサラダが付いて来る。


「んじゃあ、俺は牡蠣カキのドリタンのスープセットにするぞ!」


 ヒョウガが選んだ牡蠣のドリタンは―――牡蠣がたっぷりと入っているドリアグラタンのこと。


「妾は何にしようかなのじゃ。全部美味しそうで迷っちゃうのじゃじゃ」


彼からメニュー表を見せて貰ったリーフは、彼方此方を見て可成り悩む。


「わ、私はランチメニューの奴に決めたわよ!」


アミリが選んだのは、茸と舞茸のクリーミーがラタンのAセットらしく。


「よし、私はこれにしよう」


 とカナミが選んだのは、アーティナと同じで、海老と烏賊のシーフードドリアのAセットを選ぶ。


「では、ワタシはランチメニューにある、パンプキンドリアのBセットにします」


ミューフィの選んだBセットには、パンとサラダが付いてる。


「それじゃあ、ウチはチキンドリアのサラダとワンタンスープセットにするよー」


とサラも決まったらしく。


 「妾も早く決めないといけないのじゃ。ん~ん、ん~ん。迷うのじゃじゃ。ん~~~ん。じゃあ、これにするのじゃ」


幼女は迷いに迷った挙げ句、シチュードリアの単品を選んだ。


「済みません!」


その声に反応したウェイトレスの男性が、注文を伺いにやって来て。


「ご注文をお伺いします」


 「え~と、海老と烏賊のシーフードドリアのAセットを二つと、牡蠣のドリタンのスープセット一つ。茸と舞茸のクリーミーグラタンのAセットを一つに、パンプキンドリアのBセット一つとチキンドリアのサラダとスープセット一つ。シチュードリアを単品で一つ下さい」


 「注文の確認をします。ランチメニューの海老と烏賊のシーフードドリアのAセットを二つ。牡蠣のドリタンのスープセットが一つ。ランチメニューの茸と舞茸のクリーミーグラタンのAセットをお一つ。同じくランチメニューのパンプキンドリアのBセットをお一つに、チキンドリアのサラダとスープセットがお一つと、シチュードリアの単品がお一つ。以上でお間違いありませんね」


 注文を伺い終えると、厨房へと向かって行き―――注文をキッチンスタッフに伝える。


 それから何分かして二つが運ばれてきて、更に十分かして二つ運ばれてくる。それから何分かして二つ運ばれてくると、それから何分かして一つ運ばれてきた。


流石のヒョウガ達も、こんな大勢の客の前だと、食事の挨拶はせずに食べ始めて。


「戴くのじゃ。ふうふう。ん~ん。ハアハア。あっ、あっ。熱いのじゃ。でお、美味しいのじゃじゃ」


「そりゃ、ドリアだかっら熱いに決まってるぞ!」


 早速フォークですくい上げたドリアを、軽く吹いて口に入れたリーフは、熱いが故に舌を絡ますも、美味しそうな顔をし、


 その光景を見て、当たり前のように言うヒョウガだったが、美味しいなら良かったと言う。


 「ふうふう。パクッ、ん~ん。この牡蠣のドリタン。牡蠣の甘さが、ホワイトソースと会って美味いぞ!」


「わらわにも一口頂戴なのじゃ」


 ヒョウガがフォークにほわーとソースの乗った牡蠣とドリタンを吹いて少し冷ますと、口の中に頬張り、味の感想を率直に言う。


リーフが口を開いて催促してくると。


ふうふうと掬い上げた分を冷まし、口の中へ放り込む。


「ん~ん。美味しいのじゃ」


「だろ!」


その光景を横で食べらがら観ていたアミリが、羨ましそうに見ていると。


 「ん・・・・・・!? アミリも一口入るか? その代わりにそっちのも貰うぞ!」


彼女は辺りを見渡し終えると、口を開け。


 「ん~ん。か、牡蠣の旨みがホワイトソースと絡まって美味いわよ! はい、ヒョウガ先輩!」


 と言ってアミリは、彼に茸と舞茸がタップリと乗ったグラタンを、口の中へと放り込んで来て―――。


パクッ、


「ん~ん。美味いぞ!」


「そ、そうでしょ! 茸と舞茸が凄くクリーミーソースとご飯絡んで良いわよね」


ヒョウガの味の感想を聞き、嬉しそうにそう言ってから、自分も感想を言う。


パクッ、


 「ん~ん。何度食べても美味しいですの! プルプルした海老と、パキツっとした烏賊がシーフードソースとご飯に合って、とても美味しいですの!」


「私も同じだよ! 凄く美味しいね!」


アーティナとカナミも美味しそうに食べて感想を言う。


パクッ、


「ん~ん。パンプキンドリアも想像以上に相性抜群です」


「ウチのチキンドリアも、普通に美味しいよ~」


ミューフィとサラも食べた感想を率直に言い。


ゴクゴク、


「ん~ん。このワンタンスープも美味いぞ!」


「ちょ、一寸冷めて来たけど美味しいわね!」


「本当ですの! こんなに美味しいのは、アタシも飲んだこと無いですの!」


「こんな美味しいのも飲めて満足だね!」


「ホントそうだよー」


ワンタンスープを飲む五人が其々感想を口にしてると。


「サラダも美味しいです」


とミューフィがそう零すが、五人とも既に知っており。


「此方のパンも美味しいです」


 と大満足そうなミューフィが食べ終わり、他の子達も次々と完食していくが、ただ一人を残しては。


「ふうふう、もうお腹一杯なのじゃ」


「まだ少し残ってるね」


「仕方ないから、アタシが食べて上げるですの!」


もう満腹な顔をし出すリーフに、カナミがそう口にして。


 するとアーティナが、幼女の残した分を食べてあげると言うことで、皿ごと自分の前へ持って行く


そして残った少しを、ぺろりと間食し。


「ありがとうなのじゃ。完食してくれて」


「どう致しましてですの」


少しでも、二人の仲が縮まれたと言えるのではないか。


 ―――り、リーフって、本当はしっかりできる子じゃない。唯ヒョウガ先輩の事が好きで、他の人はどうでもいいって思っている訳じゃ無いのね。これなら普通に仲良くなれるかも。


リーフへの印象が、アミリの中で少しずつ良くなっていくのに気付いた。


 全員が食べ終わり。水で一息吐くと、布巾で口を綺麗に拭き終ってから、レジに向う。


その内に、カナミ達はお店の外に先に出て行き―――。

待つこと数分して、会計を済ましたヒョウガがやって来てから。


「んじゃあ、これからどうする?」


と彼が問い掛けると、皆が悩み込む。


時は同じくして、丘の上にた佇む小屋の中では。


 現在ここには、紺色の清楚ロングウェーブヘアの少女―――ネチスィア。その弟で双子の兄―――オム。双子の弟―――マル。そして、祖父―――せロラン・リュードと、ルームメイトと別れてこっそりとやって来た最後の仲間。

彼の名は―――モリヤマ・レクト。ヒョウガの従兄妹だ。


因みにムフィードと、ヒアイは外で見張りをしている。


「少し遅くなったけど、お昼ご飯だからね♪」


「ほお、クリームシチューかのう」


「外は寒いと思ったんだ♪」


 ネチスィアがお昼ご飯を知らせた途端、真っ先に孫の作ったものを見て、そう言う。


 すると、その料理にした理由を伝え、それを聞いたリュードは「確かに冷えていたから丁度良いのう」と、嬉しそう伝える。


「それじゃあ、食べよう♪」


「戴こうかのう」


「「戴きます」」


「戴きます」


そう言って食べ始め。


パクッ、


「ん~ん。美味しいのう。久し振りの愛孫の手料理はやっぱ良いのう」


パクッ、


「ん~ん。初めて食べるけど、とても美味しい」


 祖父が孫の作ったシチューを美味いと褒めてから、レクトも美味いと表情一つ変えずに言うも。


「美味しそうに見えない」


「ご免。感情移入が苦手で、どうしてもこうなるんだ」


「それなら仕方ないよ」


弟のマルの指摘を受け、訳合いを話したことで理解してもらい。


 シチューが無くなり、ご飯も食べ、サラダを間食し、兄のオムが皿洗いをして、席に着き―――。


「では、本題に入ろうかのう」


そう切り出した彼は。


「早速今晩にでも、ターゲットの一人を狙ってもらえるかのう」


「しっかり発覚バレないようにしてくれれば、条件を出さなくても、良いさ!」


「それに関しては、大丈夫じゃよ」


 そう言って取り出したのは、暗黒色に包み込まれたマントと、本格的な狼の被り物とに、刀剣一つ。


「で? 誰を狙えばいいのさ?」


「それはじゃのう」


祖父は懐から一枚の写真を差し出す。


「了解」


こうして彼は仕事を受け取り。


「お爺ちゃん。私たちは♪」


「今は無いのう」


「分かった」


「それなら、分かった」


「早くしたいね」


「そうだ♪ 私たちの出番の時は思いっ切りやろう♪」


「そうだね」


「思いっ切りって好いね」


 張り切って聞いた姉だったが、リュードはその一言を言い放つと、ネチスィアはしょぼくれてしまうが、弟たちは冷静な声音で返事を返す。


そして姉も思いついたようにそう口にし、元気を取り戻す。


姉のセリフに賛成するように、弟二人がそう言い放つ。


「では、頼むからのう。レクト」


「はい、リュードさん」


そう言った直後、彼は小屋を後にする。


 <交武祭典>《アルージェフェート》の裏で悪しき者たちが、尚に動き出そうとしていることなど、誰として知り得ることなど無いではないか。

   

次回は早めに頑張りますよ!

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