10話 夏祭り
寒さも和らいできた気がして、春って感じですね。そろそろお花見シーズンですよ。
本編の方は、モミナ家の別荘のお別れと、お祭りの話しです。
あれから、フォーカムと料理長は最後の料理として朝食作りに取り掛かった。
そうして、出来上がったと共にモミナ家の別荘をフォーカムは出て行く。
警備隊のいる署へと向かい、直ぐに自首をした。時刻は八時を過ぎたばかり。
警備員が、事実確認をするために、洞窟のあった(今は倒壊した後)所に捜査隊を送り。
調べにに来た全員が、瓦礫を搔き分けて、あちらこちらで調べること数分。
「ボス。白骨死体と思わしき骨が見つかりました」
『分った』
発信機を使って、捜査隊の一人がボスと呼ばれる、係長のような男に連絡を取って報告したので
これによって、フォーカムは本当の意味で逮捕され。
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その頃、ヒョウガ達はと言うと、昨晩の戦いでの疲労が激しく、今も眠っている。
あの後、帰って来てやっと寝れたのが、皆深夜二時過ぎになっていた。
午前十時を過ぎた頃であろうか。
「ヒョウガ君。起きてよ」
「ん……⁉ はああ~元気だな、シナモンは!」
「だって、十悪の中で漆魔より全然強い猟魔を倒したんだもん」
「ん……⁉ ああ、そうだったな」
昨日の死闘を勝ち取った勝利を思う出してそう言う。
「皆もう起きたか見に行ってみるぞ」
と言って立ち上がって、ドアのほうに歩いて行く。
先ず向かったのは、カナミとアミリの部屋。
コンコン。ドアをノックする音がする。
「はああ~い。未だ眠いね。朝ご飯かな」
「はああ~も、もうこんな時間よ」
「俺だぞ俺。朝ご飯は十の昔に出来てると思うぞ!」
「ヒョ、ヒョウガ先輩だったわね」
大きな欠伸をして、伸びをしてから起き上がってきたカナミが、訪問者に返事を返す。
アミリは体を起こして、金時計を見て目を見開く。
冒頭が、オレオレ詐欺的ではあるも、アミリがヒョウガと分かってアミリが名前を呟いた。
「私もすぐに出るね。お腹ペコペコ」
「わ、私もそうよ!」
二人は出る支度、と言っても余りないが少しかかっていた。それから部屋を出て来ると。
三人は、ミューフィとサラの部屋に向う。
コンコン。
「はああ~。うとうと。未だ眠たいです」
「もうお昼かー」
ミューフィが、目を擦りつつウトウトして眠いと告げ。
サラは、ドアを叩くを音がして、跳ね上がるように起き上がって。
「んや、違うぞ! 起きてるかなと思って来ただけだぞ! それに、十時半ぐらいだからまだ昼じゃ無いぞ」
「そうだったかー」
「そうだったですか」
部屋のドアを開けて、サラが出てきて、遅れてミューフィも出て来ると。
「ア、アーティナさんは起きてるかしら」
「そうだね、行って見よっか」
と言う事で、ここに居ないアーティナの部屋に向う。
ノックするが返事がない。鍵も掛かってない。まるで殺人事件が中で起きてると言う、サスペンス物で有り勝ちなパターンみたいに。
心配になって入って見ると、そこには、いる筈のアーティナの姿が無い。
「いないね」
「そうですね」
「それも気になるけど、お腹空いたよー」
「んじゃあ、先に食べとくか」
てなわけで、食卓部屋へとやって来た。
部屋の扉を開け放つと、そこには、ルエル、、カレロ、執事の皆さん、其れからアーティナも食事を食べており。
「お友達の皆様。お先に召し上がっていますよ。何せ、皆さんとっても気持ちよさそうに眠ってらしたから、起すのは忍びなかったのでつい其の儘にしていました」
「私も呼びに行ったんですがね。ルエルさん同様、そっとさせて置きましたからですな。それで先に食べておこうと言う事になったんです」
ルエルとカレロさんが、俺達に事情を説明してくれ。
「折角、フォーカムが料理長と最後に作った料理なのに、冷めちゃってるですの」
「ん……⁉ ああ、そうだったぞ」
「私もいただいておりますが、凄く美味しいですな。特にこのスープが気に入りましたな。フォーカムさんにあんなことがったとは驚きましたな」
アーティナが、料理の質が冷めた事により落ちたと言う。
ヒョウガは、昨日のとこを思い出したように呟く。
カレロが、スープの飲んで感想を述べる。フォーカムの名前を出す。
今更ではあるが、朝食のメニューは、ご飯、卵スープ、トマトサラダ、肉団子。
席に着くと、早速皆が食べ始めた。
「こ、この肉団子、今までの中で食べた中で一番美味しいわよ」
「ん……⁉ そうだな。凄く美味かったからもう全部食ったぞ!」
「は、早いわよ、食べるスピード」
他の子達はまだ食べ終わってない。あ、でも、アーティナも食べ終わる。
お皿は、食べ終わったカレロと他の執事さんが回収していく。
「んじゃあ、俺は歯を磨きに行くぞ!」
「アタシもですの」
二人は洗面所へと向かう。
ゴシゴシゴシゴシ。ゴシゴシ。
歯の隅々まで洗い終わると、口を濯いだ。
それが終わると、顔を洗って、タオルで拭く。これで完了。
他の子達も、遅れること十何分かしてからやって来た。
――先に、俺とアーティナは居間に向う。
全員が居間に集まるのを見計らって、アーティナが切り出す。
「今日はどうするんですの?」
「あ⁉そう言えば、明後日だったー。夏祭り」
「ん……⁉ そうだったか⁉」
「そうなんですの⁉ それでしたら、帰らなくてはいけないですのね」
これから何をするかと言う内容の話題。
サラが、夏休み世予定を決めた時に言っていた、お祭りを思い出したように言う。
ヒョウガも思い出したようで。
なので、アーティナがそれなら帰りますですのと言ったので、決定のよう。
「では、旦那様と奥様に言って参りますな」
「ならアタシは、料理長にお土産を用意してもらうですの」
カレロが旦那様の部屋に向う。アーティナの方は、厨房に足を運ぶ。
その内に、ヒョウガ達は帰り支度をする。
それが終わると、荷物を持って、厨房に集まると。
「どうぞさる」
「あ、ありがとうよ」
料理長が手に持っていたものは、日持ちの良い料理である。パックにそれぞれ分けられて収納している。
「それじゃあ行こうか」
「またいつでもお越しになり下さい」
「また来てくださいね」
「また来てくださいさる。フォーカムの事もああなったけど、ありがとうさる」
あれから、厨房を皆で出て、アーティナの両親と共に玄関を出るので、付いて来ていた、料理長、ルエル、カレロ、他の執事が見送りをする。
「本当に有難うございました」
「んじゃあ、本当にこれでだぞ」
「そ、そうね。また来てあげるわよ」
「じゃあ、又良ければ来ますね」
「じゃあ、来年は忙しいですが、空けてくるですの」
「お邪魔しましたー。また来たいなー」
ミューフィ、ヒョウガ、アミリ、カナミ、サラが別荘の人たちにお礼を言う。
アーティナの方は、来年は忙しいも時間を作ると約束を交わし。
それを言い終えると、魔法車に乗り込む。
――手を振ってくれるから、俺達も振り返したぞ。
魔法車での話。
「夏祭りって何があるんですの?」
「ん……⁉ 知らないのか⁉ 隣町である夏祭りは、屋台とか、花火があるくらいの普通の祭りだぞ!」
「あ、あそこの花火は綺麗よ。凄く!」
アーティナが、夏祭りの話題を吹っ掛けて来ると、ヒョウガが説明する。
アミリも魅力的だと伝えた。
「今年は浴衣着て行こうかな」
「ウチも着てくよー」
「わ、私も浴衣着て行ってあげるわよ」
「皆持ってるんですの⁉アタシは持ってないですの」
「うフフフ。楽しそうね」
アーティナの母が、会話を聞いてい嬉しそうに。
それからも、夏祭りの話題で持ち切りだった。
ふと気が付くと、もうヒョウガの家の近くまで来ていたおり。
そして、突然魔法車が停止する。
「着いたよ、皆」
「ああ、有難うだぞ! 後、じゃあなだぞ。それともう一つ、午後五時に俺の家の前に集合だぞ!」
「有難うございますだね。明後日の午後五時ね」
「有難うございました。それでは、五時までに伺いますね」
「ありがとー。じゃあ、明後日の五時なー」
到着を知らせると、皆が降りる。
そして、お礼を言う。
「そ、そのさ、アーティナさん。明日私の家に来なさい! 私の家にある浴衣を貸してあげるわよ」
「良いですの⁉ 分かったですの」
「そ、それじゃあ、また明日よ」
「また明日ですの」
ヒョウガ、カナミ、ミューフィ、サラがそれぞれの家に帰って行く。
その場に残っていたアミリが、アーティナを呼んでたので、魔法車の出発を止めさせ、内容をアミリが話す。
斯うして明日の予定が埋まった。
次の日の午後。アミリの家でのこと。
「アミリの部屋って、思った通り可愛いですの! それに散らかって無いですの」
「そ、そう? ありがとうよ。じゃあ浴衣取って来るわね」
アミリの部屋は、白がベースであって、カフェ風の小物が幾つもあって、程よい甘さ。
部屋を出たアミリは、母の部屋に向い。
「お、お母さん、浴衣」
「分かったわよ。サイズはどれ位?」
「エ、Sよ」
「分かったわ。確かここに…あったわ、ホイ」
―――へ、部屋に入って来た私に、お母さんは、浴衣を四つ投げる掛け声して、普通に渡してきたわよ
それを持つと、アミリは自分の部屋に戻って行く。
持って来たのは、赤とピンクの花柄の浴衣、紫、黄色、水色の花柄の浴衣で。
他の二つは、市松ウサギ柄と牡丹色の柄だ。
「ま、待たせたわね。持って来たわよ」
「良いですのよ」
クッションに座って寛いでいたアーティナが、声を掛けて来た。
「それじゃあ、これから来てみるですの!」
そう言って手に取ったのは、市松ウサギ柄の浴衣で。
そして、着てる服とか、ズボンを脱いで浴衣に簡単に着替える。
服の下は、暑いので何も来ていない。
「どうですの?」
「に、似合ってるわよ。カワイイ」
鏡の方へ誘導して、鏡で自分を映させる。
「本当ですの! 次はこっちを着てみるですの」
選んだのは、赤とピンクの花柄の浴衣。
今着てたのを脱いで、赤とピンクの花柄の浴衣に着替え。
「シ、シンプルだけどいいわよ。私はそう言うの似合わないけどね」
「そうは思わないですの。アミリだってきっと似合うですの」
「そ、そうかしら。仕様がないから来てあげるわよ!」
アミリが、アーティナの今着ている浴衣の感想を言うと、自分は似合わないとはっきりと言う。
にも拘らず、アーティナはアミリも似合うと言ってくる。
なので、アミリは今着ている服と、スカートを脱いで浴衣に着替えた。
アミリの方も、服の下は暑いから何も来ていない。
「ほら、思った通りに合うですの!」
「ホ、本当ね。似合ってるわ⁉」
「ヒョウガも、これを見たらキュンてなるですの」
「きゅ、キュンてなるの。それは良いわね」
アーティナが来ていた浴衣を、来たアミリを見てそう言い放つ。
(ホ、本当になるかしら、ヒョウガ先輩がキュンなんて、試さぬ価値は無いわね。うん、試すわよ)
「で、でも、こっちの浴衣も良いわよ」
そう言うと、着ていた浴衣を脱ぐ。
次に、牡丹色の金魚柄の浴衣を試しに着る。
「こ、こっちも良いと思うんだけど、私的には、出もこれじゃあ振りむかないかしら」
「アタシも良いと思うですの。ヒョウガなら、振り向くですの。きっと」
そして、それから二人が迷う事、数分。
「この紫色の花と黄色、水色の花柄のにするですの」
「わ、私は、牡丹色の金魚柄の浴衣ににするわよ。」
二人とも浴衣が決まった。勿論、先着てた浴衣は脱いであって、最初に来ていた服に着替えている。
アーティナは、借りた浴衣を持って家まで帰って行く。
(わ、私はアーティナと別れたから、お母さんの所に持って行ったわよ)
「楽しそうね、アミリ」
「楽しいに決まってるわよ。お母さん」
楽しようにしているアミリに、母はそう言った。
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夏祭り当日。
十六時四十分。先ず最初にやって来たのは、アアミリとアーティナ。
「き、来たわよ。まだ私とアーティナさんだけね」
「そうみたいですの」
ヒョウガの家の、周りを見渡したアミリが二人だけであると断言した。
二人は、昨日選んだ浴衣を着ていて、靴は、下駄をはいている。
十時四十七分。カナミがやって来た。カナミも浴衣を着ていた。靴は、白色いサンダルだ。
カナミが着て来たのは、全身に咲き乱れる椿が鮮やかな印象の浴衣。
「お待たせしちゃったね。まだ二人だけなんだね。急いで来なくてもよかったね」
「わ、私とアーティナさんは、七分前には来ていたわよ」
「あまり変わらない気がするですの」
カナミが急いだと、タオルで汗を拭いたうえで言うと、アミリが七分前には来ていたと言う。
アーティナは、あまり変わらないと言う。
十六時五十四分。ミューフィとサラが急いでやって来た。
ミューフィは、紫とピンクの紫陽花がデザインされた白い浴衣だ。靴は、黒い下駄を履いている。
サラは、ブルーの鹿の子朝顔の浴衣なのである。靴は、白色の下駄。
「遅れてしまいました。済みません、浴衣の着付けに手間取ってしまいました」
「ウチは、お母さんに着付けしてもらったから遅れたー」
「そうだったんだね」
「だから遅れたんですのね」
ミューフィとサラは、遅れた理由を言った。まだ十七時ではないのにそう言うので、恐らくもっと早く来るつもりだったんだろう。
気にすること無かった三人であったが納得する。
十六時五十六分。ガチャッ、玄関のドアが開いた。そしてヒョウガが出て来た。
ヒョウガは、マルチボーダー七分袖Tシャツ(ブラック)に、ジーパンである。靴は、普通の白いサンダルだ。
「んじゃあ、皆揃ってるな。行くぞ!」
「ねえねえ、ヒョウガ。アミリちゃんが浴衣の感想が欲しいだって。言ってあげてね」
「そ、其れ言わないでよ。もう。で、どうなのよ」
「ん……⁉ そうだな。牡丹色の金魚柄か。凄く似合ってるぞ!」
「ホ、本当に言ってくれてるわけ⁉ べ、別に嬉しくないわよ。でも、ありがとう」
早速、行こうと言うしてる所を呼び止めたカナミが、アミリが浴衣の感想を伝えてと言う。
アミリは、顔を少し赤らめて内緒の約束だと言い、だがしかしヒョウガに聞いてみる。
ヒョウガは、浴衣の中が見えるのではと位、ジッと見つけて感じた事を口に出す。
アミリの方は、そんなに見詰られて恥ずかしく。
返事を聞いて嬉しそうにしていて、隠し切れない笑顔で偶にいうセリフを言う。
そして、隣町の夏祭りに向かって行く。
辺りはまだ夕日が沈んでいない。
歩くこと三十分一寸で、目的地に到着。
ごちゃごちゃ。ざわざわ。
「人が多いぞ! 皆迷子には気をつけるんだ……て既にいないぞ!」
ヒョウガが、こうして注意を促す間にも人混みに埋もれる始末。
仕方ないからヒョウガが見つけに行くと、直ぐに全員が見つかった。
「次からは手を繫いで於けば大丈夫だね」
「そ、そうね。少し恥ずかしい気もするけど」
「んじゃあ、まず何処から行くんだ?」
ヒョウガに助けられた、カナミ達が次からは気を付けるために、手を使って繋ぐ仕草をして伝えた。
ヒョウガが、皆に向かって言ったのだ。すると、
「ウチは焼きそばが食べたーい」
「わ、私は唐揚げが食べたいわよ」
「んじゃあ、二手に分かれるぞ! カナミは焼きそばの方を任せるぞ! 唐揚げの方は俺が行くぞ! 待ち合わせ場所は、あの丘で良いな」
――俺が指した丘を皆が見て、あそこなら花火が奇麗に見えると思ったんだぞ!
と、ヒョウガは心の中で思っていた。
ヒョウガとアミリは唐揚げ屋さんに向う。
何人もの人が並んでいた。自分達も並んで、番が来るのを静かに待つ。
何分か経つと、漸く番が来た。
「唐揚げ二つ下さいだぞ!」
「分かりました。八百円ですよ」
ヒョウガとアミリは、自分の分である四百円づつ払う。
「丁度ですね。どうぞ!」
店員のオジサンが唐揚げを手渡して来る。
「どれどれ。ふう~ふう。パクッ・・・ん~ん。美味いぞ!」
「ホ、本当! ふう~ふう。パクッ・・・うん。熱々で美味しいわね」
唐揚げ屋さんの近くの、ちょこっと座れるところがあったので、二人は今かった唐揚げを食べる。
二人ともとても美味しそうな顔をする。
「其れ貰うぞ! 捨ててきてやる」
「そ、その、ありがとうよ」
「ど致しましてだぞ!」
ヒョウガに、空の紙コップを渡す。それから、戻って来るのに気付いてアミリは立ち上がった。
――そ、そう言えば今更だけど、ふたりきりになるのって一緒に……寝た時以来よね。意識するとすごく緊張するわね
すると、アミリが少しほっぺを桜色に染まっていく。
「んじゃあ、次はどこ行こうかだぞ!」
「ふぇ⁉ ああ! い、今のは何でもないわよ。忘れなさい。そうね、ライスボール屋さんがある。買って来るわね」
「ん……⁉ ああ、分かったぞ!」
アミリの慌て振りに、何も聞かないで於いたヒョウガ。
左右を見回しながら、次はどの店に行くか聞くと、アミリが、買いたいものを見つけた。
なので、少ない列に並ぶ。
待つこと数分。ライスボールを買えて戻ってくる。
「其れ、美味しいのか?」
「美味しいに決まってるわよ! 一口上げるわよ」
「ふう~ふう。パクッ・・・ああ、確かに上手いぞ! イケる」
優しいアミリが、一口呉れたので食べてみると、癖になる味。
勿論だが、残りは全部アミリが食べた。
カナミ達の方はと言うと、
「今頃、アミリちゃん達も楽しんでるだろうね」
「そうだよー。先ずは、焼きそば買おう」
と言う事で、焼きそばの屋台に向っていく。
「焼きそば一つくださーい」
「はいよ。三百円だよ」
列に並んで何分かして、サラの番が来た。
サラが注文を言うと、焼きそば屋のお兄さんが値段を伝える。
「これでー」
「はい、丁度ですよ」
隣で焼きそばを焼いていた、お姉さんがプラスチックの容器に入れて、箸と一緒に渡して来た。
「私も食べよっかな。お兄さん、此れください!」
「はいよ。三百円ね」
「済みません。五百円でお願いしますね」
「はいよ。二百円のお返しですよ」
ピッタリないカナミは、五百円を出す羽目に。
そしてお釣りの後で、焼きそばと箸を受け取る。
座れる場所を、サラが見つけていて、そこで焼きそばを二人は食べる。
紅生姜と青海苔の香りが強い。
「美味しー」
「うん。美味しいね! やっぱお祭り来たら、焼きそばだよね」
「カナミ先輩の言う通りだよー」
サラが味わって出た感想に、カナミも同じように感じた。お祭には欠かせない物だと付け加えていた。
それを聞いたサラは、共感を得たように言う。
食べ終わると二人は、ゴミを捨てに行く。戻って来ると、四人は動く出す。
「次は、どこに行きましょう」
「アタシ、あれ買ってくるですの」
そう言ってから、アーティナはたこ焼の屋台に並びに行く。
並んで後、六分が経過すると、番が回ってきた。
「野菜たっぷりたこ焼をくださいですの」
「毎度有り。お一つですね。四百五十円になります」
「分かったですの。確かあったような。一、二、三百。百円足りなかったですの。済みませんが、五百円でお願いですの」
「はい、五十円のお釣りです」
お財布に五十円玉を仕舞って、たこ焼を受け取る。
後ろの所で待つカナミ達の所に戻り、しゃがみ込む形で食べ始めた。
「ふう、ふう。パクッ、・・・・ん~ん。熱い。でも熱々で美味しいですの」
凄く湯気が立ってるので、吹いて、少し冷まして口に入れ。
野菜の甘みと、蛸の旨みが引き出されて口の中に広がって行く。
あっと言う間に間食した。
立ち上がって、近くにあったゴミ箱に捨てた。
「それじゃあ、この後は、どこに行こうか!」
「そうですのね」
カナミが聞くと、アーティナが悩み込む。
ヒョウガとアミリの現在はと言うと。
射的屋の中に居た。
「む、難しいわね。思ったより。私の武器は銃だって言うのに、もう~。何で全然当たらないのよ」
「こういうのは、コツがいるんだぞ。こうやってだな‥…」
前のめりになって、的を狙うアミリであったが、どれだけ狙っても当たらない。凄く悔しそうにしている。
その光景を、直ぐ近くで見ていたヒョウガが、腕を使って体で教えた。其の時。
バンッ、ポトン。
アミリが、何度も狙っていたウサギのぬいぐるみに命中して倒れて落ちて行く。
「そ、その、ありがとう。教えてくれて」
「ああ、どう致しましてだぞ!」
キュンってしてしまいそうなほどに可愛い微笑みで、ぬいぐるみを抱きしめる。
――ん……⁉ 何だ、この胸が締め付けられるような感じは?
何時もの様に、ヒョウガは言葉を返したのだ。
だが、心の中ではそう言う気持ちになっていた。
「んじゃあ、次はどこ行きたいんだ?」
「そ、そうね。チョコバナナが食べたいわよ」
「んじゃあ、俺も食おうかな」
なのでチョコ花なので店を探すこと数分。ついに見つけた。
そして少しの列に並ぶ。
「チョコバナナを二つくれだぞ!」
「そ、その・・・・・・一寸待ちな……」
「はい、七百円になります。どうぞ、チョコバナナ二つ」
ヒョウガが財布を出してるので、アミリが言おうとするも店員がそれを邪魔して、奢ってもらう事に。
アミリがチョコバナナを二つ受け取る。
「ひ、一言も奢って何て頼んでないんだから。で、でもありがとう」
「俺の気持ちだから良いぞ!それに、どう致しましてだぞ」
確かに最ものことを言うアミリ、気持ちでしたことだと言う。
「は、はい、これ」
「ああ、ありがとだぞ」
ヒョウガがお礼を言うと二人とも食べ始め。
「パクッ……うん。ん~ん。う、美味いわね」
「ああ、美味いぞ!」
二人は同じように感じていたのだった。
「チョコ落ちたぞ!」
「あ、ホ、本当ね。やっちゃったわよ。浴衣の上じゃなくてよかったわ」
「そうだな。浴衣の上だと、後で大変だぞ!」
チョコバナナのチョコの部分が落ちたので、ヒョウガが言った。浴衣の上じゃなくてよかったと安心していた。
ヒョウガは、アミリの顔へと近付いていく。手も一緒に。
――な、何よ。ま、まさかキスするつもり? 人目が無い事を良いように。で、でも急すぎるわよ。未だ告白もまだされて無いんだから
口にチョコついてるぞ! 気付いて無いぞ! 仕方ないから取ってやるぞ!
アミリの妄想を余所に、頬っぺたに着いたチョコを見て、ヒョウガは思う。
アミリは、キスの衝動を待つが一向にやってこない。代わりにほっぺに手が触れた。
「な、何したのよ。今!」
「何って、ほっぺについてたチョコを取っただけだぞ。パクッ・・・・・・」
「な、何してるのよ。た、食べたわよね。今!? か、間接キスよね」
「もったいないから食ったぞ。間接キスでも良いぞ!」
目を開けてみると、ヒョウガが指にチョコをつけて口に入れ。
何も気にする様子が無い。
アミリは頬を赤らめて恥ずかしそうにする。
――ど、どういう事? 間接キスで良いって? 間接キスで良い? 間接キスで、間接キスで良い? 間接キスで良い? どういう事よ。
アミリは、頭の中で何度もその言葉を繰り返すが、どう意味か分からない。
そして、二人は動き出す。
途中で棒をゴミ箱に捨てた。
辺りが真っ暗になったからではない。花火がもう直ぐで始まるから。
丘の方へと、彼はアミリの手を引っ張って急ぎ足で行く。
「ぜえ~ハ~ぜえ~ハ~。急いだから疲れたぞ!」
「はあ、ハア。つ、疲れたわね。腕引張り過ぎよ。痛いわよ。後、もう離しても良いわよ」
「ああ、分かったぞ」
ヒョウガが、急ぎすぎて疲れてると、アミリも疲れている。それに引張り過ぎと怒った。
だから分かったと答えた。其の時、
ヒュ~~~~ドン。ヒュ~~~ドン。
「は、始まったわね。花火大会」
「ああ、そうだな」
「き、奇麗よね」
「そうだな。凄くキレだぞ!」
二人共、花火に魅了されている。
「二人ともいい感じでね。それに花火が奇麗」
「そうですの!」
「此の侭そっとしておきましょう。花火が凄い綺麗です」
「そうだよー。花火凄いよー」
ヒョウガとアミリに気付かれぬよう、後ろでカナミ達は花火を見ていた。
二人のことと、花火の感想を話していた。
「玉屋~だぞ!」
「た、玉屋~よ!」
花火が上がったのを見て、掛け声をするヒョウガに釣られて、アミリも掛け声をかけたのだ。
綺麗な花火が次々打ち上がって行く。
夜空に上がる花火は、数秒間と言うわずかな時間で消えるのに、人々の心には焼き付くので、儚くも美しい。
などと思いながら見ていると、激しさを増していく。
ヒュ~~~~~ドン。ヒュ~~~~~~ドン。パチパチパチパチ。パチパチパチパチ。ど~~~~~~ん、ど~~~~~ん。パチパチパチパチ、パチパチパチパチ。ヒュ~~~~~ドン。ど~~~~~ん。
「す、凄く綺麗よね。先よりも凄い花火よ」
「ああ、凄く綺麗だぞ。そうだな。こっちの花火、気に入ったぞ!」
「サラ、凄いですね」
「そうだよー。今見た中で一番いい」
「とても素晴らしいですの」
「凄いね!」
ヒョウガとアミリが前で見てるので、気付かれぬように話している。
ヒュ~~~~~ドン。パチパチパチパチ。パチパチパチパチ。ヒュ~~~~~ドン。パチパチパチパチ。パチパチパチパチ。ヒュ~~~~~ドン、ドン。パチパチパチパチ。パチパチパチパチ。パチパチパチパチ。パチパチパチパチ。
いよいよ、クライマックスに差し掛かっている。
「もう直ぐで終わりだから、今まで以上に凄いぞ!」
「す、素敵ね」
ヒョウガが感じたことを言うと、アミリがそう呟いた。
「凄い迫力だね」
「そうですね。素敵です」
「もう直ぐクライマックスだー」
「凄く楽しいですの」
カナミ達も思い思いの事を言う。
「やっほ~~~」
「サラ、其れは何か違うですの」
「其れは、山の麓で叫ぶ、山彦です」
サラが叫んだのが、花火の掛け声ではないと気付いた、ミューフィが、其れは山彦と言う。
その代わりに、サラの叫び声に気付いてヒョウガとアミリに気付かれ。
「い、何時からいたのよ? 其処に」
「何時からって言ったって、ずっといたですのよ」
アミリが近付いてきて、思ったことを言う。ずっといたと、アーティナが答え。
それ以上は、アミリも問い質して来ずにいる。
ヒュ~~~~~ドン。パチパチパチパチ。パチパチパチパチ。ヒュ~~~~~ドン。パチパチパチパチ。パチパチパチパチ。
遂に、フィナーレを迎えてしまった。
「終わったですの」
「ホ、本当ね。一寸寂しいわね」
「そんなの又こればいいんだぞ! 皆で‼」
「そうだよー」
アーティナが儚く感じてると、アミリも哀愁が感じ取れるような顔をしていたのだ。
その嫌な雰囲気を、ヒョウガが崩す前向きの事を言う。サラもヒョウガと同じことを思っている。
「そう、ですのね。それが良いですの」
「ヒョウガの言う通りだよ。前向き、前向き!」
「そ、そうね。去年までとは、花火が違ってたわね。楽しかったわ!」
「ああ、俺も楽しかったぞ! 他の子達も同じようだぞ」
ヒョウガの言う通り、皆なも楽しそうだ。
「そんじゃあ、この後何処行くんだ?」
ヒョウガが聞くと、
「私は帰るね」
「私も帰ります」
「ウチも帰るー」
カナミ、ミューフィ、サラは、帰るよう。
「んじゃあな」
「またね!」
「お休みなさいです」
「またなー。後、お休みー」
「じゃ、じゃあねよ。三人共」
「カナミ達、サヨナラですの」
カナミ達にお別れをするヒョウガ達。
因みに、ヒョウガ達も帰るのだが、方向が違う。
「もうこんな時間だぞ!」
彼が時計を見ると、午後九時十一分を指していた。
「家まで送ってやるぞ」
「べ、別に良いわよ。帰れるんだから」
「アミリの言う通りですの。お構いなくですの」
「こんな真っ暗だと危ないぞ! 護衛として付いて行ってやるぞ!」
今歩いてるのは、帰り道。
そして、最初の道に出たんで、ここから四、五十分歩いた。そこにあったのは、アミリの家。
「ま、またねよ。それと、お休みなさいよ!」
「んじゃあな、アミリ。お休みだぞ!」
「またねですの。それとお休みなさいですの」
アミリは、ヒョウガとアーティナにお別れを言うと、家の中に入って行く。
「そう言えば、初めてですのね。二人きりになるの」
「ん……⁉ そう言えばそうだぞ!」
何時もだと、色々邪魔とか、何かが入って二人きりになることは先ずない。
「なあ! アーティナ」
「何ですの?」
ヒョウガ振って来たので、聞き返してくる。
「そう言えばだけど、卒業後はどうするつもりなんだ?」
「突然ですの⁉ そうですのね。就職するですの」
「そうか! 具体的にはどんな仕事をするつもりなんだ?」
「そうですのね。この機会だから教えるですの。お母さんの仕事を手伝うですの。と言っても、何時か自立して、一人で仕事するですのよ。最終的には有名な、ファッションデザイナーですの」
「ん……⁉ 良い夢じゃないか! それが叶いと良いぞ。若しかなったら、俺の服を最初に作ってもらうぞ! 勿論応援するぞ」
「そうです⁉ それは嬉しいですの。勿論いいですの。有難うですの」
アミリが、この人を好きになるのも分かるかもですの。顔は、恰好良いですし、勉強もすごく出来て、料理も上手。それにとても優しい。噂とは全然違って、真面目ですの。まあ、アタシの好みではないですの
アミリが、彼に好意を寄せるのも分からなくもないと、アーティナは感じる。
――アーティナの将来の夢は凄いぞ。其の為にアシスタントからする何てな。尊敬するぞ!
と、ヒョウガは思う。
それからも少し歩いてると、急に足が止まった。アーティナの家に到着した。
「それでは、さようならですの。それに、お休みですの」
「んじゃあな! 後、お休みだぞ!」
アーティナは言い終えると、門の中に入って行った。そして、其の儘家の中に入って行く。
ヒョウガも、自分の家の方へと足を向かわせた。
斯うして、夏祭りの日は終わりを迎えた。
次回は、夏休み定番のアレの話しです。
どうか次回もお付き合いください。
何と、後二話で二章も終わりになります。




