9話 犯した罪の重さ (挿絵あり)
花粉が凄すぎて、鼻水が止まらない。この時期は嫌です。
本編は、遂に、幽霊の正体が明かされる。第二の悪魔との戦いの話しです。
手に持つ懐中電灯からは、灯火が照らす。
後照らす光は、空変えあ照らし付ける月光だけだ。
誰かに気付かれないか、そう危惧してたが、案の定気付かれずに済んだ。
そう、なので六人以外には、ここに居る事は知られていない。
茂みで待つこと一時間余り。
終わりは突然訪れた。―――誰かがお花畑へと入って来たから。
罠にはまったそいつは、仕掛けたタオルの匂いに誘われて来たのであろう。
「・・・・・・」
アミリのタオルを手に取ろうとした、その時―――
仕掛けておいた罠―――魔物撃退雲が発生。
そしてそいつへと、懐中電灯が照らされて。
「あんただったんだろう。昨日俺達がハイキングに行くのも知ってたし、洞窟を見つけるのも可能性的にあったと考えていた。だから、悪魔の下部達を送り込むように言ったか、送り込んできた。幽霊の正体もだぞ。そうだろう! フォーカムさんよ」
「まさか!? フォーカムだったんですの!?」
茂みの方から、真っ直ぐに歩いて行く。
彼らの目の前に居たのは、料理長の四番弟子―――フォーカムだった。
ヒョウガが推測を話して、アーティナも以外そうに眉を顰める。
「待ってせや! ここに来たんは散歩をしてたせや。そこで、偶然タオルを見つけただけせやよ。それに、僕は洞窟を崩壊させたりして無いし、指示してないせや!」
「魔物撃退雲が発生した時点で可笑しいぞ! それと、俺は一言も洞窟が崩壊した何て言って無いぞ! 洞窟を見つけたとしかな」
「あ……。参ったせや。上手く言ってると思ったせやけど。ここまでせやな。その通りせや。もう戻っていいせやよ」
ヒョウガが証拠を突きつえると、肩を竦めた。
そして諦めたらしく、降参と言わんばかりに手を挙げ。
そして戻るように言うと、彼の体から憑りつい悪魔が姿を現す。
「しゃあ、しゃしゃしゃ。デニアの名前は、猟魔<リューナ>。十悪率いる悪徳罪業団で十悪の一体。殺生から生まれたのしゃあ」
「バレたせや、リューナ。これを見られてしまっては生かしておく訳にはいかないせや」
「殺生から生まれた? この前戦った愚痴? から生まれた漆魔? の敵討ちってこと?」
猟魔と名乗った女の悪魔は狂喜しつつも、自己紹介をした。
フォーカムが已む負えぬと言って、指示を出す。
覚えていた名前を言うカナミが、猟魔に質問する。
「しゃあ、しゃしゃしゃ。それも兼ねてるしゃあ。場所を変えようしゃあ」
その言葉を最後に、見る見るうちにお花畑だった景色や周囲、立っている場所が、違うものに変わって行く。
そこは、現実世界とは一線を画す、そう文字通り―――異空間に他ならなかった。
―――まあ、安全防衛壁が張り巡らさせてるだけマシだが。
「何だ? この空間は?」
「しゃあ、しゃしゃしゃ。ここは、デニアが創った空間しゃあ。だから、ここから出れば傷は癒えるしゃあ。心の傷は癒えないがしゃあしゃあ」
ヒョウガの発言に、リューナは狂喜しながらも説明する。
「こんなことするってことは、話しても無駄そうだぞ! 全員、戦闘準備にかかるぞ」
ヒョウガの指示を受けて、全員が武装展開を済ます。
「僕の武器になるせや」
「しゃあ、しゃしゃ。勿論しゃあ」
そしてフォーカムの手には、禍々しく、悍ましい銃がリューナの代わりに出現し―――
「この銃は、何て呼べばいいんだせや?」
「フォーカムの自由で良いしゃあ」
「それなら、猟魔近距離銃にするせや!」
銃名を気にする彼に、リューナが自由で良いと言う。
なのでフォーカムは、センスのない名前で呼ぶ。
「じゃあ、始めようせや」
「んじゃあ、俺達も行くぞ!」
駆け出したヒョウガに続き、他の子達も後に続く。
「こちらから行くせや。
猟魔近距離銃技<怨念魂弾>」
突如にして刹那―――
フォーカムが、此方へ向かう彼らへ銃口を向ける。
そこから放たれた銃丸は、強い怨念がどっぷりと詰まっているが、スピードは遅い。
放たれた弾が遅いため、こちらの仕掛ける時間がかなりある。
なので俺は、能力を発動することにした。
「これで消し去ってやるぞ! 〈暴風〉!」
包み込むように彼の周りを吹く風が、強烈に吹き荒れて消し去ろうと試す。
しかし、何度やっても消えない。
「残念やね。この怨念塊弾は、どんな強力な攻撃を受けても消すことが出来ないせや。相手に当たるまでは消えることが無いぞ!」
「何ですって!? そんなの反則です」
「ミューフィ、来るぞ、避けろ!」
ヒョウガが、ミューフィへ叫ぶも、ことが遅く。
振り返った直後に弾が体を直撃。
「ぐはあ~~~」
ミューフィは呻き声を上げ―――
「ゔあああ~ワタシとした・・・・・・ことが・・・こんな目に遭ってしまうなんて……」
呪いかかった彼女が、必死に口を動かすが思うようにいかない。
なので、当然ながら上手く会話が出来ない。
手足の方も言うことを効かず、完全に金縛り状態と言うべきか。
―――否、それ以上に酷い状態に陥っているではないか。
脳は普段通りの働きを発揮していた。心臓の方も、普段よりかは鼓動を打つスピードが遅いも、死に至る事は無論無いだろう。
「よくも、俺の大切な仲間に呪いを掛けてくれやがったな。許されるとは思うんじゃないぞ!」
「アタシも同じだから、行くですの。
武装魔術<聖光魔斬り>!」
覆うような光が、アーティナの周りを包み込む。
聖なる光は、剣の方にも達していた。
そして光り輝く魔剣が、フォーカムに斬りかかったのだが―――、
「残念だけど、この銃は盾としても最適せや!」
「そんじゃあ、俺の攻撃は防ぎきれるか!
武装二刀剣奥義<炎交刀の風>‼」
フォーカムは、斬りかかる寸前で、猟魔近距離銃を構えて撥ね退ける。
そのタイミングを見計らいヒョウガが、二つの刀剣を構えるる。
そして有るはずも無い炎が、何処からともなく現れて、更に風も吹き荒れててきた。
斯うして、炎と風が交じり合い炎風となると。
炎風の刃が、フォーカムへと斬りかかって―――。
「ぐはあ~熱いせや。ゔあぁ~中々やるせやな」
彼の炎風が、銃を盾にしようとした隙に斬り付けて来た。なので諸に食らう。
「はあはあ、僕の攻撃せや。
猟魔近距離銃奥義<呪縛霊魂の弾>‼」
多少はダメージを受けたフォーカムが、左手で猟魔近距離銃を構える。
そして彼は、動きを止めたサラへと銃弾を放つ。
二人の間の距離は、おおよそ七、八メートルだろう。
放たれた銃丸は、人、動物などの魂。
更にそこには、猟魔の持つ呪縛が込められ、それは尚に恐怖でしかない。
食らえば唯では済まない。
避けようとしたサラへ、容赦ない容赦ない攻撃が襲う。
「グわあ~凄く痛いよー。ゔぁ~体が動かなくなってきた」
打ち込められたサラは、ぐったりし、そして猟魔の呪縛で体から自由を奪い尽されていく。
「そ、其処までよ!
絶対の絶対に許さないわよ。武装魔銃奥義<怒焔弾>」
アミリは銃口をフォーカムに向け、指引き金を掛く。
バンバン。
―――放たれた弾は、怒りの焔で燃え上がった強力の弾なのだ。
その後、カナミも発動した。
「私も行くね!
武装想像<不動明王>‼」
彼女が想像したのは、何とあの五大尊明王の一つ。
怒りの相手をし、右手には、降魔剣、もう片方の手には捕縛の縄を持って、背中に火炎を背負って座っていて。
フォーカムへと、そいつはアミリの技と共に向かって行く。
その弾が彼に命中し、そこへ右手に持つ降魔剣で切裂かれてしまい。
「ぐわあ~ど……どうしてせや。、リューナ。守ってくれなかったせや」
『しゃあ、この剣はヤバいしゃあ。デニアでも敵わないしゃあ』
、
放たれた弾を防ぎきれずに食らい、そこへに不動明王の攻撃が来た。
今度こそ防ごうとしたが、その剣が危ないと分かり、ギブアップを掛けた。
それが原因となって、フォーカムもダメージを食らう。
「ヴぇ~中々やるせや! 此れで決めてやるせや! 猟魔……ツ」
「んじゃあ、決めてやるぞ!
武装二刀剣技<風神天斬り>‼」
彼が技を発動するより、ヒョウガが先回りをして技を発動。
突如天空に風神が出現。
二つの刀剣で斬る仕草をした彼の合図に、風神が強い風と風の猛刃を降り注がす。
斯うしてフォーカムは、降り注がれて斬られてしまう。
「ぐわああぁ~げホっ、げほ。もうこれ以上はヤバいせや!げホっ、げホ。…」
『しゃあ、しゃしゃ。体を借りるしゃあ。後は、デニアがやっておくしゃあ』
回避しようと銃を構えるが、駄目で大ダメージを食らい、血を吐き捨てる。
そしてギブアップした彼へ、リューナは任せておいてと言い放つ。
その直後悪魔は、一度本来の姿に戻ると、フォーカムの体の中に入って行く。
「しゃあ、しゃしゃ。人に憑りつくって良い物しゃあ。これで思う存分楽しめるしゃあ」
「と、憑りついてきたわね」
「危ないというのは、物凄く伝わってくるですの」
「そうだね!」
突如狂い始めたフォーカムに、アミリには直に危ない事が伝わり―――。
アーティナもヤバいと言う事が感じ取れたようだ。
カナミも同じようだ。
「出番だぞ! シナモン」
「誰に言ってるの?」
「任せてください! ヒョウガ君」
「しゃあ、しゃしゃ。漆魔が言ってた天使使いってお前だったのかしゃあ」
誰も居ない方にヒョウガは、合図を送ると。
カナミが首を傾げて尋ねてしまい。
呼びかけられた彼は、カナミの声を恰も無かった様にスルーして。
ヒョウガに呼び掛けられた天使は、光の中からの登場。
「行くぞ! シナモン」
「うん。分かった」
彼がシナモンに合図を送ると、シナモンが頷いた。
そして天使は、見る見るうちに姿を変えて、一本の剣<天使光魔剣>へと変化して行き―――。
「なんしゃ!? まあ良いしゃあ。
猟魔技<鬼火刃>!」
「これでも食らいやがれだぞ!
〈天翼の光斬り〉‼」
『フォーカム』は鬼火を出現させ、その火が刃となって彼の方に飛んで行くが。
ヒョウガの方も、攻撃を発動。
天空に向い剣を掲げ、合図を送ると。
天使が現れて、それが翼を広げると、無数の光を創り出す。
其の儘それを受け取ったヒョウガは、天使の光共に、『フォーカム』の居る所へと斬りかりに行く。
何と天使が、彼の方へ向かっていた鬼火を消去してくれて。
「ぐはあ~~~。しゃあ、しゃしゃ。流石は天使しゃあ。
だがまだまだしゃあ。 猟魔奥義<呪殺の牙>」
生物を呪殺することが出来る恐ろしい牙が、彼ではなくアミリ目掛けて襲い掛かった。
想定してなかったため、アミリは技を発動する余裕などはない。
しかし何とヒョウガは、一瞬の内に少女の前に現れると、衝撃を与える前にけ消し去る。
「ん……!? 俺を狙うのを止めたのか!? アミリに一本でも手を出したら、許してもらえると思うんじゃないぞ!」
「しゃあ、しゃしゃ。その通りしゃあ。天使の強さが分かったからしゃあ」
「て、天使って何よ?その力の源??」
彼の先と今との違いから、アミリはそう推論付けていると。
「んじゃあ、そろそろ終わりにするぞ! この戦いを」
アミリはなんとなく理解したが、他の二人は話の流れに付いて来れずに、茫然とその場に立ち尽くす。
「しゃあ、しゃしゃ。デニアも負ける訳にはいかないしゃあ。絶対‼」
そう言って本気を出したリューナは、火の玉を体に纏って威力を挙げ。
「しゃあ、しゃしゃ。この火の玉の力で終わらすしゃあ。
猟魔奥義<怨霊の仕返し>」
火の玉を纏ったリューナが、技を発動。
死んだ者らの憎悪が、恨みを晴らそうと襲い掛かって来ると言う技で。
フォーカムのゼロ距離に移動したヒョウガは、右手に持っていた天使魔刀剣で切裂いく。
リューナが発動した技は、先までいた所に放たれていた為、意味が無くなってしまう。
「ぐホっ、げホっ、げホげホ。しゃあ、しゃしゃ。火の玉を纏っているのにげホ……食らうとはしゃあ。デニアがここで終わっていいわけが無いのしゃあ」
「んや、終わってもらうぞ! ミューフィとサラに掛けられた呪いを晴らして貰う為にもだぞ!」
フォーカムは、口から血を吐き出しながらも、負けるという行為自体を拒む。
しかし彼は、それは困ると、二人の姿を目に移す。
「はあはあ。
これで終わりにするぞ! 天使光魔剣奥義<天界の光輝>」
天界から物凄い輝きが放たれた。
彼が立つ場所に、その凄まじい輝きが降り注がれて行く。
その中でも、最も集中するのは、天使光魔剣だ。
「<光魔の煌斬り>!」
光り輝く光魔が、剣全体からフォーカムの心臓を切り裂いた。
「ぐわあ~~~~。じゃあ、憎ましき人間しゃあ。げホっ、げホ。人間の体は不便しゃあ。これ以上は、人間の体は無理なのしゃな。あの二人の少女の呪いを解いて、元の世界に戻してやるしゃあ」
血を吐き捨て、人間への恨みを言い捨て、人間の体の不便さを知ら閉められて。
―――これによって、ヒョウガ達の勝利は決した。
ミューフィとサラに掛けられていた呪いも、見る見るうちに晴れて行く。
それを見て、他の子達は、ほっと胸を撫で下ろす。
更に、世界がだんだんと翳んで行き―――その次に見えて来たのは、最初に居たお花畑。
「戻って来たんですの? 本当のホントに・・・・・・」
「ん……!? ああ、そうみたいだぞ!」
「しゃあ、しゃしゃ。フォーカムともこれでお別れしゃあ。さよならしゃあ。デニアは帰るしゃあ」
アーティナが戻って来たことを確認すると、ヒョウガが間違いないと言う。
―――リューナが、フォーカムとの永遠の別れをして、リューナはフォーカムの体から出て行く。
空の方へと消えて行く。
それからヒョウガ達は、フォーカムの方へと駆け寄り。
「フォーカムさん、目を覚ましてくれだぞ」
ヒョウガは、フォーカムの体を上下左右に思いっ切り揺すってあげると、
「はああ、アーティナお嬢様に、お友達の皆さんせや」
「戻って来たですの」
「フォーカムさん、聞きたいことがあるぞ。俺達も見た人間の骸骨とリューナについてだぞ」
「・・・・・・分かったせや」
問い質してくるヒョウガへ、少し間を空けて話し始める。
「あの骸骨は、料理長の二番弟子せや。そして僕が殺した」
それを聞いていたメンバーの中で、アーティナが特に驚く。
骨の身元を明かすフォーカムは、淡白と自供し始め―――。
そして続きを話し始めた。
「一年半前せや」
「一年半前?」
「 そうせや。其の時は、まだ僕は、モミナ家の別荘に来たばかりだったせや。二番弟子の彼奴が、教育係を名乗って、右も左もわからない僕に色々教えてくれたせや。悪い関係ではなかったせや」
哀しい顔立ちで、ここに来てからの事を語り続け―――。
「ところが、ある日せや。彼奴が言って置きたいことがあるって言って来たんせや。『近い内にでも、料理長の座は貰いだな』とせや。その時は、何をしようと思ってるか分からなかったせや。それから二日後。彼奴が、料理長の飲んでいたお茶に何かを入れたの見たせや」
「そんなことが有ったんですの!?」
「中身が毒だと察しがついた僕は、すぐに摩り替えたせや。それで彼奴が僕の所にやって来て、『何邪魔して呉れとるんだ。邪魔するならお前も同じく消えて貰うぞ。お前まで消えれば、確実に料理長の座は確実だからな』こいつは本気だ。此の侭生かしていたら、必ず料理長も僕も殺される。それだけじゃない。邪魔する奴全員殺されかねない。だから早い処手を打つために、人目の少ない所に呼び出して、後ろから近付いて首を絞めて、洞窟に遺棄したせや」
―――料理長が殺させかけた事を知ると、アーティナが心底驚く。
それからフォーカムは、動機についても話し出す。
「ん~・・・・。そうだったんだな。分かったぞ! だからって、人を殺めたら駄目だろ。理由が何であろうだぞ! 他に良い方法があったらろう」
「そ、そうよ。料理長さんが喜ぶとでも思った訳?」
「なら、どうすれば良かったせや?」
―――フォーカムさんの動機を聞き終えると、俺は子供に教えるように当たり前のことを言ってやったぞ!
―――な、何て動機よ。分からなくは無いわ。でも実行に移したらで目に決まってるわよ!
ヒョウガもアミリもそう思う。
フォーカムが逆ギレをし。
彼は、人差し指を立ててこう言い放つ。
「シェフなら、シェフらしい方法だろ! 弟子だろうがこれしかないぞ!」
「料理せやな」
「まあそうだぞ。だって、フォーカムさんの料理は心がこもってるんだぞ! あんたの方が次の料理長に合ってると、料理長さんも思ってるぞ!」
ヒョウガの言葉を聞いていたフォーカムは、瞳孔を上げる。
フォーカムの流す涙は、感動の涙でも、感激の涙でもない。
―――この涙は、犯した罪への後悔と、取り返しの付かない事をしてしまった事への憐れさ。そして自分の浅はかさからくるものが含まれているに違いない。
「うおおおおおお~。ジャネムさん。御免なさいせや。本当に御免なさいせや」
彼は、料理長の二番目の弟子の名前を叫んで、遅すぎる懺悔の言葉を口に出す。
それを見ていたヒョウガ達は、何かを言うのではなく、唯々立っているだけ。
「それとだぞ! 何時リューナと出会ったんだ?」
気掛りだったことを、ヒョウガはもう一つ聞くと。
「それはせやな。一週間前せや。最初に会ったときは、悪魔だったからびっくりしたせや。でも、悪い事をしてくる処か、話を聞いてくれたせや。それで、とても話が分かってくれる奴だったせや」
最初は驚いたと言うフォーカムも、危害を加えないと知り、段々と打ち解けていったのだと分った。
―――十悪にも人の心が理解できる奴がいるんだな。
と、ヒョウガは思っている。
「今日中にでも、警備隊の所に行くせや」
「その前に、料理長に言いたいことがあるんだろう」
何かに気付いたフォーカムが、後ろを向いた先には料理長が居た。
「如何いう事さる? 何で皆様ここに居るさる?」
「済みませんでしたせや、料理長。二番弟子は僕が殺したせや」
「本当かさる? 本当にジャネムを殺したさる? 失踪じゃなくて」
フォーカムの突然の告白に、取り乱しながら料理長が真偽と問い質す。
その答えとして――――うんと、肯いて見せて。
その答えを受け取った料理長は、怒りを抑えきれず、手が出ようとするが。
透かさずヒョウガは、料理長の手を受け止めて、止めさせようとしてから。
「料理長さん。あんたを守る為に罪を犯したんだぞ。愚かだろうが!」
「そうだったんさる!? それは嬉しいさるが馬鹿さるな。フォーカム。君を次の料理長にしようと思ってたさる。そう思ってたさるのにな」
「そんなことを考えてたせやか。僕は……何てことして……」
「待っててやるさる。帰って来るのを何時までだってさる」
「ゔおおおお~。グスグス。こんな僕を待っででグレルぜヤああ~」
ヒョウガに言われた料理長が、彼に向けて思いの丈をぶつけ―――。
それを聞いた彼は、自分の愚かさを知る事に。
フォーカムの体を、ギュッと抱き締めた料理長は、希望のある言葉でいて立ち直るのに必要な勇気を感じ取れるような言葉を掛けた。
また涙を流しす彼は、腕の中で泣きじゃくって言葉を振り絞ってを返す。
この涙は、とても暖かい涙なのは間違いない。
その光景を唯々見ていたアミリ達の方は、
「グスグス」
「ん……!? 泣いてるのか、アミリ」
「べ、別に泣いて何か……汗が目に入っただけよ」
―――アミリは涙ぐんでおり。
ポンと肩を叩かれて、ヒョウガがそう声を掛けて来ると。
何時もの口調で言う。
泣いて無いとうが少女だが、汗が目に入った位でここまでにはならない。
―――他の子も同じように涙ぐんでるだろうか?
と思いヒョウガは、他の子に目を向けて。
案の定感涙しているらしい。
―――ん……!? 何だ、これは!?
彼も気付くと、目から一滴の滴がたれているではないか。
そう、彼も貰い泣きを。
「良かったら、最後に又儂と料理するさる」
「はああいせや」
そう言う事で、皆で別荘へと戻って行く。
*デニアとは、日本語で私という意味です。
次回は、モミナ家の別荘の話しの完結と、夏休みの話しの終盤です。




