7話 ハイキング
一寸旅行をしていて、書く時間が取れなかったけど何とか書き上げれました。
本編は、ハイキングに、洞窟と言った話です。
アーティナ達が別荘に着くと、ルエルが恐らく二十代後半の男性と話していたのであった。
「あら、お早いお戻りですね。アーティナお嬢様に、お友達の皆さん」
「隣の人って、弟さんですか? それとも彼氏?」
「どっちも違います。こちらの彼は、モミナ家の別荘で料理長の四番弟子のフォーカムさんです」
「フォーカムせや。宜しく! 皆さんの美味しい顔して貰える様に、師匠と一緒に精一杯のおもてなしするせや」
ルエルがフォーカムを紹介すると、フォーカムが一歩前に出て自己紹介をする。
「では、ここでせや。今から夕食の準備を師匠とするせや」
そう言い残して厨房の方へと消えて行く。
ヒョウガ達は、其々部屋に戻って夕食までの時間を過ごすことに。
ヒョウガは少し疲れたのか、ベットで横になっていた。すると、
「ヒョウガ君。凄く楽しいですね!」
「シナモンか。そう言えば途中から見当たらなかったが、何処行ってたんだ?」
「え~とねー。登山て奴かな? この別荘の裏にある処を飛んでたんだよ。綺麗なお花畑もあったんだよ」
「飛んでたんなら登山とは言わない気がするぞ。それはそれとして、そんな物が有ったのか!?」
シナモンは海に居る時からいなかったのだ。
その理由が、登山みたいなものをしていた話をされて頷く。
お花畑と言う乙女にとって魅力的な物が有るよう。
その後も行ってきた場所の色々な話をする。
そんなこんなで、辺りはすっかり真っ暗になっていた。
―――俺は、カーテンを締めから、もう一度横になったぞ。
ヒョウガが行動の説明をする。
そして何十分かすると、誰かが部屋の前に止まり扉をノックした。
「ヒョウガ様。ご夕食のお時間でございます」
声の主に気付いた彼は、ドアの方に行き―――扉を開けると。
「お腹の空き具合はいかがですかね」
「可成り空いてるぞ!」
カレロは、廊下をある途中でそう尋ねて来る。
カナミ達の処にも、他の執事が呼びに来ていたよう。
「後は任せますよ。カレロさん」
そう一人の執事が言うと、
「分かりました。後はお任せください」
それを聞いて、他の執事が別の仕事をしに行く。
皆が揃うと食堂へと向かう。
―――矢張り立派な扉だな。
と、ヒョウガは思い。
扉を開けると、フォーカムと、師匠と思わしき人物が歓迎してくれた。
「アーティナお嬢様。お友達の皆様儂と四番弟子で真心こめて作ったので、美味しくお召し上がりくださる。では、儂と彼はこれで」
「ん・・・? 一緒に食わないんですか」
「その通りさる」
そう言うと、今度こそ出て行った。
「それじゃあ、戴きます」
「ああ。戴きます」
他の皆も食事の挨拶をして、食べ始めて。
「おお、超美味しいぞ!」
「本当ね。凄く美味しい」
「ホ、本当ね。このお肉凄く柔らかくて、ジューシーね」
他の人たちも同じようだ。
「このスープ美味しいです。何のスープです?」
「これは、アロエスープですの。生産業が少なくて貴重ですの」
「うん。美味しいな」
「ア、アロエスープなんて初めて飲んだわよ」
アロエスープの評判が高い。
他にもおいしい料理を食べて、お腹も満腹になる。
なのでご馳走様をすると、部屋に戻って行く。
部屋に着くと、ヒョウガはお風呂の準備をした。
——俺は風呂に入りに行くぞ。
ニ十五、六分ぐらいしてから戻ってくる。
寝支度をすると、ヒョウガはカナミ達の所に向う。
「来た、来た。ヒョウガ何しして遊ぶ?」
「んや、今日は眠いから寝るわ! そんじゃまた明日な。お休み」
「あ、うん。お休み」
「お、お休みなさい!」
ヒョウガがカナミアチの部屋に行くと、遊びに来ていた、アーティナ、サラ、ミューフィ。
―――遊びに誘って来るカナミに、ヒョウガは眠いからと言う理由で誘いを断って。
それからお休みの挨拶をした俺は、部屋へと戻って行く。
部屋に戻ったヒョウガは、其の儘ベットに入る。
シナモンが、ヒョウガの布団に潜り込んできた。そして隣で横になった。
「んじゃあ、寝るぞ!」
「うん。お休みだね」
お休みを言うと明かりを消す。
そして、モミナ家の別荘初日は何事も無く終わる。
モミナ家二日目の朝
ヒョウガが目を覚ますと、金時計を見た。時刻は午前八時を指している。
「まだこんな時間か。もう一度寝るか」
寝ようとしていると、トントンとドアをノックする音が響く。
「ヒョウガ様。お目覚めでしょうか」
「ん……!? ああ、起きてるぞ」
「でしたら、朝食の用意が出来てるので来てください」
カレロの声が聞こえると、ヒョウガは体を起こして返事を返す。
——俺は、準備を整えて、外に出て其の儘食卓に向うぞ。
食卓に入ると、既に皆朝食を食べ始めてた。
朝食のメニューは、食パン二枚に目玉焼き、お味噌汁、サラダと言った和風の物が並ぶ。
「遅いよーもう食べ終わっちゃうよ」
「さ、冷めてるんだからね」
「ああ、冷めてても美味しいだろう。じゃあ食うぞ」
そう言って、先ず最初に口にしたのは、味噌汁。
「うん。冷めてても美味いぞ」
「それは喜んでいい物かな複雑だ」
「今日は一緒に食べてるんですな」
「朝だからね。儂とフォーカムものんびりと出来るさる」
それだけ言い終えると、味噌汁を口の中へと頬張る。
その次に目玉焼きを食べる。その後、齧りかけの食パンを口にした。最後にサラダを口に頬張って間食した。
「食った、食った。俺も歯を磨きに行くかぞ!」
洗面所に遣って来ると、丁度アミリが歯を磨き―――。
―――ヒョ、ヒョウガ先輩が来たわね。急いで終わらせないといけないわよ
ヒョウガが近付いて来るのに気付いて、アミリは急がないとと、歯磨きを急いで済まして、嗽をして、顔を洗う。それからタオルで顔を吹く。
「な、何よ。別にヒョウガ先輩が来たから、慌てて歯ブラシを払って、嗽をした訳じゃ無いんだからね。それに顔を洗ったわけでも無いんだからね。偶然よ。偶然の出来事よ」
「ん……!? そんな偶然が有るのか!? まあ良いぞ」
アミリの言葉を聞いて、何時も通りの反応をして見せた。彼女が洗面所を後にするのを、見届けた俺は急いで歯磨きを済ました。それから顔を洗う。
次に、皆の居る居間へと足を運ぶ。
居間
「今日は何しよっか」
「ん……!? そうだな」
「ハイキングはどうだー?」
「ああ、良いじゃないか。この別荘の裏にある深山なんてどうだ。そこの何所かに花畑が有るようだぞ!」
カナミがそう切り出すと、サラがハイキングを提案する。それに乗っかる様にヒョウガも言う。
そこで、昨夕にシナモンから聞いた花畑を皆に教える。
「そんなのが有るんですの⁉花畑が有るなんて気付かたかったですの。それならハイキングで良いですの。それにしても言って無い筈なのに何で知ってるんですの?」
「ん……!? そうだな。ルエルさんから聞いたんだぞ」
「ルエルから!? まあ、それなら納得も出来るですの」
——俺が咄嗟に、この場に居ない人たちの中の一人の名前を使って誤魔化したぞ。
アーティナは、驚くはするものの、信じて貰えて。
それからはアーティナが、料理長にお弁当を作らせるように命じて、をそして作られる。
料理長は、厨房に向うと、お弁当を作り始め。
―――何時ものようには時間を掛けさせずに、作り上げた。
そして出来上がったお弁当を、アーティナのリュックサックに入れて、更にそこに、水筒、敷物と勿論、お弁当箱には保冷剤を入れてある。
後は、其々水筒をリュックサックに詰めて準備完了だ。
そして―――玄関を出た所で、
「では、アーティナお嬢様、お友達の皆様。くれぐれもお気を付けくださいさる」
「ん……!? くれぐれも気をつける?なんか出るのか?」
「否、何でもないよ。気にしないでさる。唯、ハイキング中に怪我しないでと言う意味と危険が付き物と言う事さる」
ああ、それなら納得も行くぞ!
と、ヒョウガは思う。
―――リュックサックを背負って外に出た所で、料理長がそう注意を促す。
斯うして、今度こそ出発した。
ゆっくりと深山を登ってる。
―――あ、暑いわね。
とアミリは、汗を搔いて、扇ぐ仕草をする。
そして歩くこと何分かし、先頭を歩いていたヒョウガが、突然止まった。
止まった先にあったのは―――四か所に分かれた道。
「どれ行こうかー」
「そんじゃあ、左行くぞ!」
ヒョウガが選んだ道を皆も進んで行くことに。
半分ぐらい歩いた所で、休息を取る為に岩場に立ち寄る。
「凄く暑いですの。それに喉が渇いたですの」
「そうだね。ヒートショックにならないようにしないとだもんね。水分補給しないとね」
「ごくごく。ブハー。生き返ったぞ。それにパワーが漲って来たぞ」
「ホ、本当ね。これでまだまだ歩けるわよ」
「これでパワーが湧いてきました」
ヒョウガが水を飲むと、生き返ったと言う。
表情を見てみると、何だか生き生きしており。
アミリやミューフィも同じような事を口にして。
少し休憩をしてから、残り半分の道を歩き出す。
―――俺たちが歩いてる道は、草木が生い茂っている道だ。
と、ヒョウガは道の説明をした。
歩いていると、段々と暗黒に葬られようとしているのに気付いて、歩く足を止めて、そのいた場所からクルリと踵を返す。
分かれ地点に戻ると、
「そんじゃあ次は……」
「右にしようよー」
「わ、私は真中が良いと思うわよ」
「それじゃさ、二手に分かれよう。こうやって別れよう」
カナミが決めた二手は、ヒョウガ、アミリ、アーティナ。と、カナミ、ミューフィ、サラ、と言う感じに分かれ。
ヒョウガ、アミリ、アーティナは、真中を。カナミ、ミューフィ、サラで右に向う。
―――真中を進むヒョウガ達の方はと言うと、
同じような草木が左右に生い茂っていた。更に進んで行くと、霧がかかり始め。
―――す、進むこと数分が経った頃。私の鼻に湖の匂いがしてきたわよ。
と、アミリが鼻で感じたことを伝えると。
アミリがそう感じた直後―――左右に草木が生い茂っていた道が、晴れた。
そして何時の間にか、霧が消えており、代わりに現れたのは。
何と、とても大きな湖だ。
「こんなところに湖が有ったんですの!?」
「す、素敵ね。この湖」
「ああ、ホントだな。綺麗だぞ。それに広いぞ!」
アーティナが吃驚仰天してると、アミリとヒョウガが奇麗な湖を見て、感激していた。
「ん……!? あれは・・・・・・。 なあ、アミリ、アーティナ」
「な、何よ。何かあったわけ?」
「アミリの言う通りですの。どうかしたんですか?」
「ああ、あそこ見てくれ。湖の先に洞窟みたいな物が有るぞ!」
「本当ですの! あれは間違いなく洞窟ですの」
―――ヒョウガが指を差したのは、洞門の様なモノで。アーティナの言葉で確信を持つ。
「どうやって行くですの?」
「そ、そうよ。泳いでいくって言っても、この下、下着しか着て無いわよ。それが見たいわけ?」
「アタシもそうですのよ」
「んや、泳いでいかなくても良いぞ。何だ泳いで行きたいか?」
「そ、そんな訳無いでしょ」
「そうですのよ」
アーテナが生き方に疑問を抱えると、アミリが有らぬことを思い。それに便乗するかのように、アーティナが言う。
―――当の本人は、否否と言ったが、まさかと言う顔でそう言うと。
返事は勿論予想通りだ。
「それじゃあ。どうやって行くんですの?」
「周って行くんだぞ」
彼が最もな答えを言う。
そして、先来た道をぐるりと踵を返す。
右を進んで行った、カナミ達の方はと言うと。
先から、進んでも進んでも同じ景色が唯々続くだけ。
「ねえー、カナミ先輩。ここ先も通った道じゃん」
「そうなのかな」
「否、先の道と違う道です」
サラが痺れを切れて、通ってる道と同じだと言い出す。
それを聞いたカナミが、有り得ると言った。
―――だが、ミューフィが待ったっを掛けて。
「どうしてそう思うなかな? ミューフィちゃん」
「それはですね。鳥が言ってるんです。この先を行けば大丈夫。そう言ってます」
ミューフィが言う鳥とは、先から歩いてる所にいる鳥を指す。
そして、ミューフィの能力の一つ『鳥話声聞』を使っているから。
―――鳥話声聞とは、鳥と話しとり、声を聞いて色々伝えたり出来る能力だ。
鳥に言われたとおり進んで行くと、先までとは違い彩り豊かな花が咲いていた。そう――― お花畑だ。
「綺麗なお花が沢山咲いてるよね」
「そうですね。アミリ達とあの集合場所であったら、ここでお昼御飯にしたいです」
「お~良いな。それ‼」
綺麗な花を見てそう決める。
「でも、日射しが強い」
カンカン照りにより、呟くように言う。
ぐう~ぐう~と、誰かのお腹が、かわいらしく鳴ると。
「お腹が空いてしまいました」
「ウチも少しお腹空いたー」
「じゃあ、ミューフィちゃんもサラちゃん。先分かれた道に戻ろっか!」
ミューフィがお腹空いたことを打ち明けると、サラも同感の御様子。
なのでカナミが、早く分かれた地点に戻ろうと促す。
それを聞いたサラが、「ウチも良いよー」と賛同した。
「ワタシもです」
ミューフィも反対の行動を見せず、賛成の趣の様。
―――と言うことで、来た道を引き返しす。
一方 ヒョウガ達三人は、洞窟の前まで来た。
少し躊躇いながらも、洞窟の中に入ってく。
―――お、思ったより、全然暗くないわね。入口はあんなに真っ暗だったのに‥‥
そうアミリが、外と中で、明るさが違うと感じる。
「アミリ、立ち止まるんじゃないぞ! 置いて行くぞ」
「ま、待ちなさいよ。本当に置いてくなんて酷いわよ」
―――何か居たのか?
とヒョウガ疑問に思ったが、アミリを置いて先を歩き出す。
彼らが手探りで岩壁を伝って歩いていると、何かがこちらに近づいて来るではないか。
「ん……!? 何だあれ?」
「「ぎゃあああ」」
と、咄嗟に叫び声をあげる二人は、その場にしゃがみ込んでしまう。
「大丈夫だぞ! 唯の蝙蝠だぞ」
その正体に気付いたヒョウガが、それを知らせたため、二人は安堵し、
「びっくりしたですの」
「べ、別に私は驚いた訳じゃ無いんだからね」
「分かった、分かった。んじゃあ、次進むぞ」
―――進むに連れて、段々と広い道になって行く。
更に奥へ進んだところで、下に続く道を発見してから。
下に下りてみると、行き成り大きな水溜りが行く手を阻む。
「これじゃあ、先には進めないですの」
「なら、俺の体に摑まれよ」
「そ、そんなこと……分かったわよ」
こればかりはお手上げと、アーティナが諦めモードになってると、ヒョウガが俺の手に摑まれと仕向け。
躊躇っていたアミリも、観念したか彼の体に摑まる。
「そんじゃあ、行くぞ! 能力<暴風>‼」
「ちょ、一寸速過ぎるわよ」
「でも、気持ちいいですの」
洞窟の中にも拘らず、可成り凄まじい風が、彼から吹き荒れてきた。
そして天井が低いが故に、上がった風が返って来て、そして風が交差する。
其の儘、大きな水溜りの上を文字通り―――猛スピードで駆け抜けて行く。
「あ、あっという間だったわね」
「ん……!? 行き止まりだぞ」
アミリの独り言を無視して、歩いていた道を右に回ると壁に突き当たって。
来た道を引き返していると、未だ通って無い道の存在に気付く。
「んじゃあ、出口に戻るぞ!」
「あ、あそこに通って無い道が在るわよ!」
「ん……? ああ、在るな」
見ている内に―――何故かは解らぬが、そちらに足が勝手に進んで行く。
「この感じ!? この先に何か居るみたいですの」
「ああ、そうだな。多分、蝙蝠とは全然違うやつだぞ」
何か異様な気配を感じたのか、そうアーティナが言うと、彼も核心を抱く。
―――こ、蝙蝠とは違うやつ? 一体何なのよ!
と、アミリが疑問に思っていると、二人共、顔を強張らせて息を呑む。
急いで武装展開を済ませて、武器を手に持つ。
こちらの攻撃態勢が整い、後は相手が来るだけ。
同時刻 カナミ達の方はと言うと、
ヒョウガ達と別れた、分かれ道にやって来ていた。
「戻って来てないですね」
「そうだね。戻って来そうにないし見に行こっか!」
「良いよー」
「ワタシもです」
心配そうに言うミューフィに、カナミが提案を可否して。
二人の賛成が出たので、真ん中の道に行ってみることに。
「同じような草木が生い茂ってるね。霧も出て来たし。大丈夫かな?」
「大丈夫です。鳥がこちらをずっと進んでると、広い所に出ると言っています」
「あ、本当だ! 広い所が見えてきた。あれ湖じゃない」
「その様ですね」
今の状態を話し、不安になるカナミ。
それをミューフィは、鳥が言ってるから間違いないと言う。
「可笑しいです。何処にも三人の姿が在りません」
「一体どこに行ったんだろう?」
「これは事件だよー」
サラの口から思った通りの言葉が出て来る。
そして、ヒョウガ達の所の現在。
角頭から生えた奴が、ヒョウガ達の目の前に複数体現れた。
「来やがったな、悪魔。んじゃあ、始めるぞ!」
「い、良いわよ」
その悪魔たちは、何も喋る事無く迫って来る。
「食らうんですの!
武装魔術〈水竜切り〉!」
虚空からアーティナは、突如として水で創り出された竜を出現させる。
その創り出された水竜が、十一、二体の悪魔に襲い掛かり―――。
一体残らず殲滅すると。
新しい悪魔が、虚空から出現した。
「そんじゃあ、俺も行くぞ!
武装二刃剣奥義〈風林火山斬り〉‼」
突如吹き荒れた四種の風は、黄緑、緑、赤、青の三つである。
襲い掛かろうとした悪魔五体が、四種の風の刃で切り刻まれて行く。
切り刻まれた悪魔らは、勿論ながら殲滅された。
なのに、又もや悪魔が出現。
「これじゃ切が無いぞ! こいつらを、送り込んで来てる親玉は何所だ!?」
周りを見渡すも、探している十悪の幹部と思わしき人物はいない。
——今いるのは、俺、アミリ、アーティナ、十悪率いる悪徳罪業団の悪魔のみだ!
アミリは悪魔に銃口を向け、引き金を引く。
―――バンバン。
「こ、これでも食らいなさい!
武装魔銃術〈火炎弾〉」
放たれた弾は、燃え上がる炎だ。
そして、一ミリたりともズレることなく十五、六体の悪魔に直撃し、絶命した。
送り込んできた親玉が、相手をしても無駄と分かり送り込むのを止め。
「ん……!? 増やして来なくなったぞ! 良し、これで決めるぞ! 武装二刃剣奥義<風神の二撃>!」
呼び出された風神は、残りの悪魔を二つの剣で切裂く。
十一体を消し去るのに成功した。
が、運良く避け切った奴にアミリがまた銃口を向け、引き金を引く。
―――バンバン。
「こ、これで終わりにするわよ!
武装魔術奥義〈寸裂災弾〉!」
放った弾は、目に見えぬ速さで飛んで行ったのは勿論弾。
―――その弾は最後の悪魔の居る場所へ。
当たった途端に、ずたずたに裂け、全てが終わった。
「お、終わったわね。ボスが出て来ないのは可笑しいけど」
「ああ、終わったな。確かにアミリに同感だぞ」
アミリはほっと胸を撫で下ろすも、気掛りな点が有ると言う。ヒョウガも同意見。
「この先も進むんですの?」
「ん……!? ああ、そうだな。奴らが探してた物が有るなら何か知りたいしな」
「そ、そうね。仕様が無いから付き合ってあげるわよ」
「アタシも別に構わないですの」
アーティナの言葉を聞いた彼は、うんと肯いて続きを話す。
——アミリが俺に同行を添うと言い、アーティナもそのつもりのようだぞ。
右に進んで行くと、宝箱はすでに開け放たれて、空っぽで。
「な、何よ。空っぽじゃない。折角ここまで来てあげたのに・・・・。報酬も無い訳? それより何してるのよ! ヒョウガ先輩」
「ああ、こんな所に骨が有ったんだぞ。人間の骸骨みたいだぞ」
「「きゃあああ」」
アミリが、宝箱の先に居たヒョウガに声を掛けると、骸骨と一緒にいるヒョウガを見ると。
二人の絶叫がハモって、洞窟中を木魂する。
少し休ませることにする。
落ち着きを取り戻した二人が、立ち上がり。
「あの骸骨は、誰のモノですの?」
「そんなの知るか。まあ、死後一、二年以上は経過してるぞ」
「そ、それよりも、この洞窟から出るわよ。って、何よ、この揺れは?」
そう言った途端。強い地震が来たかのように揺れ始めた。止まる様子は微塵も無い。
「これ、ヤバいんじゃないですの?」
「ああ、多分な。これも奴らの仕業な気がするぞ」
「そ、それよりも早く逃げるわよ。あ、あれを観なさいよ! もう残された時間は無いわよ」
―――こ、これ絶対後十分も持たないわよね。こんな所で死にたくないわよ。
アミリは今の状況を凝視し、今いる洞窟を指で指して思う。こんな所で死にたくないと言う事を。
アーティナが不安気な様子をしている。
―――俺も同感だと伝えたぞ。この、倒壊の原因が十悪の仕業だ!
と確信して思い。
――アミリの言う事はもっともだ。
と、ヒョウガは渋い顔をする。
現在の状況は、次々洞窟の上の方から崩壊し続けていて、天井には、地下一階にも拘らず穴が開いて折り、事態の深刻さが見て取れる。
「少し揺れが治まった気がするぞ! 今の内に俺に摑まれ!」
「この事態なら、それが最前線ですの」
「や、已む負えないわね!」
―――二人の承諾を受け、俺は此の前習得した、奴を試すことにするぞ。
「しっかり摑まっとくんだぞ! 神風‼」
吹き飛ばした風の神のお陰で、外への脱出に成功。
が―――しかし、降りる方法は覚えておらず、地面へと墜落して行く。
「能力<毛糸座布団>」
アーティナの能力の一つを使った。
―――どんな状況でも、毛糸でクッションを作れると言う能力だ。
毛糸のクッションが、落下してきた三人を迎えてくれて。
「ん……!? 助かったぞ」
「ホ、本当ね。ありがとう」
「否否。無事でよかったですの」
お礼を言う二人に、アーティナは何々と言い。
「それよりあれを見てですの」
「き、危機一髪だったわね」
アーティナが指した先は、洞窟の方だ。
そう言った訳は―――洞窟が完全に崩壊していたから。
そして、逃げて行く悪魔達を遠くながら目に留まる。
「逃げて行ったな」
「そうですの」
「そ、そうね」
逃げて行った悪魔を見て、そう呟く。
「んじゃあ、カナミ達と別れた所に戻るぞ!」
「そ、そうね。急いであげないと」
「そうですの。お腹も空きましたですの」
「べ、別に私は……ぐう~ぐう~・・・」
お腹が空いて無いと強がるがアミリだが、お腹の方は素直な為、顔を赤らめてしまう。
―――お、お腹の音聞かれちゃったわよ。は、恥ずかしいわ。
お腹を押さえて恥ずかしそうにしている。
それなので、分岐地点に急ぎ足で戻って行く。
次回は、仕掛けた奴と、幽霊登場。




