西暦2800年代中期
序
人類史上初の宇宙戦争となった第三次世界大戦の終結から、十年が経った。
地球からの支配を抜け出すために、宇宙移民が一丸となって地球に戦争を仕掛けてから三十年。
結局のところ、戦争の決着はつかず、いつまでも続く戦争に嫌気のさした先進国の国々が、地球連邦の脱退を表明した事が原因となり、宇宙移民の国々とは、要望に対して幾つかの条件を飲ませる事で和解。
グダグダの結末と共に、世界は平和になった。
しかし、世界は依然として変わらなかった。
否、やはり変わったのかも知れない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー但し悪い方へと。
宇宙空間から爆弾を落とされた街は、未だに国ごと閉鎖されたままだし、闇市の多くなった大通りでは、マフィアとギャングが一層幅を効かせるようになった。
戦場帰りの徴兵達は、戻って来たら家族を失ってるのが殆どで、大抵は荒くれどもに混じるか、薬にのめり込んで死んでいる。家族が生きてた奴らも、大概の場合は、戦場での殺し合いで精神ヤられた事が原因で、子供や妻を殺しかけて離婚していた。
スラムでは、ギャングにもなれずに行き場を失ったガキ共が群れて、新たなギャングになり、街角や路地裏では売春婦が叩き売りされてるように列をなしている。
麻薬、ドラッグ、覚醒剤が、そこらに吐き捨てる様に売り捌かれ、薬のやり過ぎで死んだ奴らが道端に石ころの様に転がっている。
街中で戦闘用の搭乗式ロボである「バトルギア」を見ない日は無い。
つまりは世界はあいも変わらずクソッタレで、生きるだけで全員吐き気がしていたんだ。
俺はそんな世界の中で希望を見出す事が出来ず、適当に生きて、適当に死にかけて、そして何処か適当な所で死ぬんだろうと、そう思っていた。
あの日までは。