4. 凋落の騎士と象牙の塔
騎士がその塔にやってきたのは、彼が領地を追われて数年が経った頃のことでした。
彼は正義ゆえに、自らの首を絞め領地を失ってしまったのです。
領地を追われた騎士は、各地を旅していました。
そして、その名も無きの塔へと辿り着いたのです。
塔に入ると、不気味なほどの静寂が騎士を包みました。
中には見たこともない草や薬品がずらりと並べられています。
そしてその中心に、広く空間が開けていました。
そこには、大きな砂の山がありました。ところどころに大きめの塊が埋まっています。
それに近づくと、どうやら人の顔の様であると思います。
騎士は驚愕します。よく見ると、顔の他にも腕や足のような身体の一部が山から顔を出していました。
恐る恐る、その顔――少女の、美しくも不気味なその顔に触れると、それは幻のように、砂となって崩れ去ってしまいました。
これはどういうことだろうか。騎士は頭を悩ませますが、結論は出ません。
しばらく考えて、上の階を目指しました。何かわかるかもしれないと考えたからです。
そして、騎士は出会います。
美しい――砂に埋もれていた美しい顔、そのままの少女に。
それは人間なのだろうか。騎士は思います。美しく、しかしどこかあどけなさを残すその少女に心を奪われます。
全く動かず、目を閉じて椅子に腰かけている少女をどれほど見つめていたのでしょう。やがて、疑問が生まれました。
見たときには生きていると何故か確信したが、彼女は本当に生きているのだろうか。微動だにしない少女に近づき、そして手を触れます。
そのとき、少女は目を覚ましたのです。
長い、長い眠りの淵から。その知識を携えて。