星藍学園高等部
予告編のようなものです。
季節は春。淡い桃色の花びらが舞い落ちる。
ここ、星藍学園高等部に新入生が入学した。
この日は入学式。
一般的な新入生達は期待と不安を背負ってこの日を迎えるであろう。
しかし、この学園の新入生達は慣れた様子で正門をくぐり会話しながら校舎へと向かっていた。
まるで、以前もこの学園に通っていたかのように。
その不思議な集団のなかで一人不自然な少女がいた。周りを見渡しながら目を輝かせ、スキップをしている少女だ。
この学園の新入生のなかでは少々浮いているが、一般的な新入生としては普通・・・いや、浮いているかもしれない。
そんな不自然な少女も道を間違えることもなく、校舎へと向かっていった。
この星藍学園は、幼等部・小等部・中等部・高等部で構成されている寮生活必須のエスカレーター式の学校だ。
この学園の特徴は
【中等部と高等部からの入学生徒は受け付けていない】
ということだ。
つまりこの学園の生徒は皆、幼等部・小等部からこの学園に在籍しているのだ。
しかし、高等部に関しては少々特別だ。
募集はしていないが、高等部には一学年にたいして、
高等部からの入学の生徒が十人ほどいる。
それは、この者達はある事情で入学を許されているからだ。
その理由とは……
『芸能人』ということだ。
この学園は別名『芸能人育成所』と呼ばれる。
その名の通り、この学園は将来の芸能人を育成するために作られた学校なのである。
幼等部・小等部で、芸能界で生きていくための基礎を学び
中等部では、それぞれコース(目指す職業)に分かれてそのコースにあった特別授業を受ける。
そして、高等部では分かれていたコースが再び合同となり、現在の実力を図りながら立ち位置、将来の為のつてを作っていく。
中等部で新入生を募集していないのは、芸能界で生きていくための基礎がないためだ。
この基礎が中等部入学までにできていなければ、入学は難しいと言われている。
何故なら、この学園は中等部卒業と同時にデビューすることとなっているからだ。
その為に専門の教育を受けることになるので、新入生に割く時間などないのだ。
高等部で入学を許可しているのも、芸能界での経験のあるデビューして間もない者たちだ。
この学園に入るために行われる幼等部・中等部での入学試験に合格できなければ、入学できる可能性は残っていない、と言ってもようだろう。
そして、星藍学園の倍率は毎年どんどんあがっていく。
今年の小等部の倍率は、約50倍となった。
それは全体の平均だ。
試験は希望するコースごと違っている。
一番高かったのは、この学園の花形『アイドルコース』だ。
この学園を卒業し、国民的アイドルになった者も多くいる。
その難関コース20名様枠に対しての倍率は約70倍。
受かるためにはとてつもない努力が必要だ。
ちなみに同じ学園の幼等部での今年の平均倍率は
40倍、アイドルコースは60倍だった。
その倍率をくぐり抜けて合格した者は、誇りと夢、希望を持って12年間または15年間寮生活をおくる。
中等部卒業と同時にデビューするために、彼らはハードな生活を送るのだ。
今年度、120名の生徒が中等部を卒業しデビューした。
海外でデビューする者、路上ライブからスタートし経験を積む者、テレビ出演からスタートする者。
道はそれぞれだ。
その中でデビューしてから1ヶ月。早くも花が咲き始めた者たちがいる。
それは、昨年度アイドルコースを卒業した7人組ユニット。
その名は『フェアリードリーム』
彼らのことを皆は『フェアドム』と呼ぶ。
この7人組は幼等部から在籍している学年のトップクラスのメンバーたちだ。
いま一番注目されているグループと言っていいだろう。
そんなグループの中でも、一番注目されている少女がいる。
フェアリードリームのリーダーである藤堂冷香だ。
彼女は昨年、星藍学園中等部で生徒会長を務めた。
そして、生徒会を中心として中等部で革命を起こした。
その革命はのちに『星藍の静け』と呼ばれることとなる。
中等部でコース別になったことで対立があり、
高等部では、それが原因で問題になっていた。
それを彼女率いる生徒会が中心となり、仲を取り持った。
6つのコースから1人ずつ選ばれて作られた生徒会。
その中でトップにたった彼女は
『星藍の女神』
そう呼ばれるようになった。
革命を起こし生徒会を引退した後
6人のメンバーはそれぞれ自分の道を歩み始めた。
俳優コース
声優コース
歌手コース
芸人コース
ダンサーコース
そしてアイドルコース
一度夢を求め別れた友が再び交わる。
そんなお話。
誤字等ありましたら是非教えてください。