-KJDとKHD-
「泣いてんの?」そんな言葉とともに現れたのは真っ白な青年だった。青年、ナチュラルは持ち前の"お馬鹿"で徐徐に深紅を自分のペースに乗せていく。そんな時、ナユラルは"KJD"という"神にそむいて人の寿命を長くする団体"というなんだかよくわからない単語を口にする。"KJD"って何?と思いつつも話題は変わっていき…。
「オレさーいっつもこういう人を助けなきゃいけないわけ。」
突然自分を語りだしたナチュラルを少し迷惑だと思ったけれど静かに聞くことにした。
「深紅はKJDって知ってる?」
「ケージェー…ディー?」
うん!とナチュラルは人懐っこい笑みを浮かべた。それぞれの場面で全く違う笑い方をする彼にしばし見惚れる。
「"神にそむいて人の寿命を長くする団体"て意味なんだよ。」
「……。」
どうでもいい…なんて流石に言えない。だってすっごい笑顔で話してるんだもん。その笑顔をぶち壊すようなマネ、私にはできない。
「……でも、それちょっとズレでない?」
「え?なんで?」
"KJD"、"神にそむいて人の寿命を長くする団体"。それを頭の中で意味もなく繰り返しているとふと気になることがあったのだ。
「だって普通…"神"にそむいて"人"の寿命を長くする"団体"――つまり、"KHD"じゃない?」
「あー………ねね、オレお腹すいちゃたんだけど何か持ってない?」
(話題変えた!?)
もしかして自分が考えたのかな?
ぎゅるぎゅるぎゅる――
「!?」
「やっべ、死にそう。」
腹の虫だった。もの凄く大きな腹の虫がナチュラルのお腹から産声を上げた。
「うぎゅぅ。」
変な声を上げる彼は地べたに寝転がり、まるまっている。いくら芝生の上だと言ってももう夜だ。今の季節、夜になれば気温が下がってくるから芝生に転がれば一気に体が冷えてしまうだろう。……あぁ、そういえば彼は分厚そうなパーカーを着ていたか。それならば寒くはないだろう。
「深紅さん。」
「何ですか。」
「このオレの姿に同情するなら、食べ物を与えてはくれませぬか。」
「しばし待たれよ。」
なんなの、なんなのこの会話。会って間もない、しかもちょっとおバカなこの人のお喋りの空気読んでる私ってなんなの。
とりあえずカバンをあさってみる。私は家に帰っても勉強しないので基本、教科書は入っていない。入っているとすれば弁当箱やパン、ポーチや筆箱、ケータイ、小説など。しかしこういう時に限って弁当は完食(毎日残さず食べているけど)、パンは弁当のボリュームが大きくて買わなかった(案外大食いだったりする)。
「餓死する~。」
「……。」
ほうっておけばいいのだろうけれど、そうすれば本当にこの優雅な屋上庭園に死体が転がっていそうなので諦めずに再びカバンをあさる。
「―――あ。」
良かった。死体が転がるという事態は免れた。私は買ったまま飲み忘れえいた牛乳をナチュラルに渡した。
結局はKJDというのが何なのか、よくわからずに終わってしまいました。しかし安心してください。そのうちハッキリわかります←