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豆腐屋の異世界転生物語  作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
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お部屋の異世界転生

世にはあまたの「異世界転生」が存在する。

伝説の聖剣を抜く者、最強の魔法を操る者、魔王として君臨する者――。

だが、問いたい。

**「豆腐一丁で異世界を制覇した男」**を、君は知っているだろうか?

これは、しがない豆腐屋の青年・九条拓海が、チートスキル【豆腐無双】を手に異世界で暴れ回る物語である。

硬度を「鋼鉄」に変えて魔獣を打ち砕き、「絹ごし」の滑らかさで最強の剣技を受け流し、時に極上の冷や奴で傷ついた英雄たちを癒やす。

大豆の可能性は無限大。

さあ、前代未聞の「大豆ファンタジー」、開幕だ!

第1話:絹か木綿か、それが問題だ

目が覚めると、見渡す限りの大森林――ではなく、見慣れた四角いシンクと、手古摺てこずるほど重い水槽の中だった。

「……まじかよ。トラックに跳ねられたはずなのに」

俺――九条くじょう 拓海たくみ、26歳。実家の『九条豆腐店』を継ぎ、毎朝3時起きで大豆と格闘していた男だ。昨夜、深夜の仕込み中にコンビニへ走った帰り、突っ込んできた暴走トラックから幼馴染を庇って死んだ……はずだった。

手を見る。掌のタコも、長年の水仕事で荒れた皮膚もそのままだ。だが、着ているのはエプロン姿ではなく、見覚えのない上質な麻の服。そして何より、目の前には水に浮かぶ真っ白な大豆の塊と、浮遊する半透明のウィンドウがあった。

【固有スキル:豆腐無双】

豆腐生成 (Lv.1): 召喚した大豆と水から、瞬時に極上の豆腐を製造する。

硬度変化 (Lv.1): 豆腐の硬度を自由に変更可能。(※現在は「木綿」から「鋼鉄」まで)

栄養・回復付与 (Lv.1): 摂取者の魔力・体力を微回復する。

「豆腐無双……? 勇者の剣とか魔法じゃなくて、豆腐?」

思わず頭を抱えた瞬間、森の奥から地響きのような唸り声が響いた。

木々をなぎ倒して現れたのは、体長3メートルはあろうかという巨大なイノシシ――魔獣オーク・ボアだ。真っ赤な目を走らせ、凄まじい速度で俺に向かって突進してくる。

「っ、やば――!」

逃げる時間は無い。武器も無い。俺の手元にあるのは――水槽の中に浮かぶ、出来立ての『木綿豆腐』一丁だけだ。

「ええい、やけくそだ! 【硬度変化:鋼鉄】!」

俺はスキルを叫ぶと同時に、掌に乗せた豆腐を突進してくる魔獣の額めがけて思い切り叩きつけた。

――ドォン!!!

激しい衝撃音とともに、木々が揺れる。

鋼鉄と化した豆腐は崩れることなく、魔獣の分厚い頭骨を真っ向から撃砕していた。巨体が派手に転倒し、地煙を上げて動かなくなる。

静まり返る森の中、俺は手に残った無傷の豆腐を見つめた。

「マジかよ……これ、世界最強の豆腐屋になれるんじゃね?」

こうして、異世界における俺の「豆腐無双」の物語が幕を開けたのだった。

ご愛読ありがとうございます!

まさか「豆腐」で異世界を救う日が来るとは思いませんでした。木綿の硬度、絹ごしの受け流し、そして麻婆豆腐の破壊力……大豆の秘めたる可能性を少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

これからも拓海と豆腐たちの「美味しく強い物語」をお届けしますので、ぜひブクマ・評価で応援よろしくお願いします! 次回、「油揚げの分身術」でお会いしましょう!

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