4.エイナ・トワードとデータ採取
強きものが上に立つザナ帝国。その辺境では今日もエイナ・トワードとヴィル・アリナがなんでも屋を営んでいた。
なんでも屋という名の通り、2人は依頼を受ければあらゆる事をこなす。故に、この日やって来た珍妙な客人の願いもまた等しく叶えようとしていた。
「こんにちは。ハザーさん。私は、」
テーブル挟んで向かいにいる客人、ハザーにエイナは自己紹介をしようとした。しかし、当のハザーは手を前に持ってきてそれを制止する。
「名乗る必要はない。」
「あら。私の名前くらいは知っていたかしら。」
「当然だ。僕にはデータがあるからね。」
薄いレンズのメガネを押し、得意げにハザーは言う。
「君達の名前がエレタ・フォワードとヴァル・レリルである確率、100%だ。」
「ちげぇよ!オレはヴィル・アリナ!で、こっちがエイナ・トワード!」
「何!?僕のデータが通用しないというのか!?」
「名前ぐらいちゃんとデータ取ってこいよ!?でなけりゃデータなんか捨てろ!」
「くっ…。予想外のデータも取っておこう…。ちなみに今、僕が驚いている確率は100%だ。」
「知るか!!」
早速疲れたヴィルは肩で息をし、自身を落ち着かせる為に咳払いをする。
「で。ハザー。オマエの依頼内容は?」
「よく聞いてくれた。僕の依頼内容はフィールドワークの手伝いだ。目的地が少し危険なところでね。護衛を頼みたいんだ。」
「オーケー。分かったわ。それじゃあ早速行きましょうか。」
「あぁ。話が早くて助かるよ。今、僕が安堵してる確率は100%だ。」
「いちいち報告いらねぇよ…。」
「あら。奇遇ね。私のやる気がある確率も100%よ!決まったなら早く行きましょう!」
「………………オマエらの会話が馬鹿っぽい確率も100%だろうな……。」
話が済んだ3人は早速、フィールドワークの為に件の森へと移動した。森、というよりジャングルのような印象を受けるそこは人間と同じ背丈の草が生い茂っており、どう考えても人の踏み入れる場所ではなかった。
「は、はぁ。ここ、視界悪すぎだろ…。」
「だがその分、良いデータが取れる。固有の植物や動物は観察しがいがある。君達が未知の存在と出会う確率100%だ。」
「オマエにとって確率は100パーしかねぇのかよ…。」
「そうね。ハザーさんの確率が100%しかない確率は100%、といったところね。」
「これ以上意味分かんねぇこと言うな……。」
各々好き勝手を言いながら、森の奥へと進む。時々先頭のハザーは立ち止まり、手にしていた紙へ何かを書き走っていた。恐らく彼の言うデータとやらなのだろう。
その間、ヴィルは暇を持て余し周囲を忙しなく歩き回る。
彼の足が湿った土を踏んだ瞬間、ヴィルの体が真下に落ちた。
「!?な、なんだ!?いてて…。」
落とし穴だったようで、まんまと穴に嵌ったヴィルは上を見上げる。そこからはハザーとエイナが顔を覗かせていた。
「これは…落とし穴の確率100%だ。」
「どっからどう見てもそうだろうが!!」
「…………助手1号が助けを必要な確率も100%ね。……そうだ。落とし穴のデータも取っておいたらどう?深さとか場所とか。」
「それはいい。僕が賛成してる確率100%だ。」
「んなこと言ってる暇あんなら早く助けてくれよ!!」
ヴィルの悲惨な叫びに呼応し、エイナとハザーは2人で彼の体を引き上げる。
「さて。良いデータも取れたし先に進もうか。」
「ま、まだ取んのかよ…。」
「助手1号が疲れてる確率100%ね。私がおんぶでもしましょうか?」
「いや…遠慮しとく。」
「そう?はっ!まさか私のデータが合っていなかったの!?」
「生憎大当たりだよ。………つぅか、オマエはそもそもデータ集めちゃいねぇだろ…。」
気が付けば日は傾いていた。ハザーは満足気に片手の紙束を叩く。
「ふふっ。僕のデータは完璧だ!君達には感謝するよ!」
「そりゃ、良かったな…。」
ヴィルはヘトヘトの身体でそう呟くのだった。




