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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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7 限界おじさん

「トモカーやっぱり冒険者に戻ってくれない?」

「ごめん戻れないよ、もうあんなに怖い思いは懲り懲り」

「わかるけどー」


 多分解ってない、死の瀬戸際だったんだ。

 すごい緊張感の中で震えを抑えようとしても止まらなくて、どうにかなってしまいそうだった。

 あの時あの人が来てくれなければ今こうして平和に学校にも来れていない。


「無理強いは良くないぞ?」

「ダンジョンは自己責任、やめるのも自由だよ」


 同級生の男子が助け舟を出してくれた。

 私達は仲の良い同級生4人でパーティを組み、ダンジョンに潜っていた。


 小早川こばやかわ智花ともかは静岡県内の学校に通う高校3年生。

 ちょっと発育不足のメガネっ子、守ってあげたくなるタイプの女の子だ。


「私は元々体力も無いし、最初から無理だったんだよ」

「えーでもレベルは6まで上がったんだからさー、今は一般人より体力あるでしょ」


 一般人の中ではね。

 冒険者の中では平均をかなり下回っていたと思う。


 私のステータスの大部分は運に偏っている。

 運と言う効果の解りにくい不確定な要素。

 これに頼って冒険者を続けたいとは思えなかった。


「お金は稼げるけどさ、やっぱり命があってこそだし、誰かが死んじゃったら皆も続けられないでしょ?」

「まあ間違いなく親はやめろって言うよな」

「俺は今も言われてるよ」


 それが普通、大事に育てた子がある日突然居なくなるなんて。

 私ももう少しで親を悲しませるとこだった。


「3人共恵まれてるね、私の親は私の稼ぎをあてにしてるよ」


 …そういう親もいるのだ。

 これが未成年でもダンジョンに潜れる理由の一つである。

 未成年のダンジョン探索に反対している勢力もあるのだが、その議論はずっと平行線なんだよね。

 最近はAIに仕事を取られて働ける場所自体が減ってきてるから尚更だ。

 若者に就職先を確保できる保証のない日本政府としては、早いうちからダンジョンに慣れたほうが良いという名目のもとに、15歳以上なら潜って良しの姿勢を貫いている。

 でも政府の本当の狙いは資源だって皆気づいてるんだけどね。


「はあ、トモカが駄目なら新しいパーティメンバー探す?」

「いや、取り合えずしばらくは3人でやってみようぜ」

「そうだな、焦って変な奴を入れたくは無いし」


 みんなごめんね?私には気を遣わないでいいからね。

 良い人が居たらどんどん迎え入れてくれていい。それが安心にもつながるし。

 嫉妬はしないから大丈夫だよ。



 -------------------------------------------



 な、なにこれ、無茶苦茶おいしい!


 CIAのエージェント、ケイトリン・リリー・フィリップス。

 先日日本に降り立ち、最初に向かったのは四国、道後温泉だった。


 鯛めし?最初は生卵に生魚なんて狂ってるの?って思ったけど。


 名物と聞き、目についたお店に入ってみた。

 食べ方が解らず、ネットで検索してはみたものの、理解が追い付かない。

 日本へ来たことを少し後悔するところだった。


 ライスもそんなに好きではなかったけれど、生卵と合わせるとこんな味になるのね!


 一口一口、さじを口へと運ぶたびに幸せが広がる。

 日本へ来てさっそくこんなに美味しいものが食べられるなんて。

 はあ、これは絶対にアメリカでは食べられないわね。


 最後の一口を口に運び、惜しむように堪能する。

 これほどまでに充実した食事があっただろうか。


 もう一杯くらいなら食べられるけど、そろそろ予約の時間。


 後ろ髪惹かれる思いで席を立ち、向かうのは由緒正しき温泉施設。

 改修されて奇麗になったばかりだと聞くけれど、私を満足させてくれるかしら?

 ん?あの派手なお店は何?特殊浴場?ここも温泉なのかしら?

 解らないわね。後で聞いてみようかしら?


 予約の時も思ったけど、古風なつくりの素敵な建物ね。

 入場券を買い、建物の中へ。

 日本人と一緒に入浴するのよね?ちょっと緊張するわ。

 ええ?こんなに狭い階段を下りていくの?不思議な作りね。

 ここは脱衣所よね?服を脱いで良いのよね?

 タオルは湯舟に入れないのがマナーだったわよね、よし大丈夫!


 う、うわあ、素敵!石造りのお風呂なのね!

 これは大理石?いや違うわね、白くてとても奇麗。

 体を洗って、さあ入浴!

 ああ!とろけるような感触!なんて素晴らしいの!

 美人の湯なのよね?私これ以上美人になったらどうしましょう!


 CIAのエージェント、ケイトリン・リリー・フィリップス。

 日本に来てさっそく浮かれポンチになってた。



 -------------------------------


 熱海ダンジョン 348層


「うーん、今の俺ではこの辺が限界だな」


 ダイエットの為にダンジョンに潜り始めたが限界が見えてきた。

 このまま350層の小ボスに行ったら死ぬと思う。


『あまり無理はしないでください』

「ありがとう、バク子」


 隣に佇むバクに似た精霊に話しかける。

 精霊と契約する時には契約者が名前をつけてやるのが通例となっている。

 雑な名前つけたなと思われるかもしれないが、いくつか却下された後に本人が一番気に入ったのがこの名前だったのだから仕方がない。

 なんでこれが良かったんだか。


『ワシが手を貸せればな、実体のない我が身がうらめしい』

「いや、ダイエットで来てるんだから無理する必要は無いんだよ。ありがとうな、ゴリ左衛門」


 今のはゴリラに似た精霊、名前については以下略だ。


『しっかし主がまたダンジョンに潜り始めるなんてな。もうすっかり俺達の助けなんて必要ないんだって思ってたぜ』

「必要無いって事は無いよ。家ではお前達の姿に癒されてたし」

『かみさんと仲わりぃもんな』


 今のはレッサーパンダに似た精霊、名前は文太ぶんた

 もうちょっとかわいい名前をつけたかった。


『主、向こうに敵が2体いますがどうしますか?』


 バク子の加護はサーチ能力だ。

 迷路のようなダンジョンの構造を読み取り、敵も見つけてくれる。

 ナビゲートもしてくれるから迷い知らず、とても頼りになる存在だ。

 この前トモカを見つけてくれたのもバク子のお陰だ。


『必要ならいつでも強化するぞ』


 ゴリ左衛門の加護は筋力強化だ、バフの事だな。

 ここぞという時に頼りになる。

 若い頃は無理もしたから彼の加護には本当に助けられた。

 加護が無ければ死んでた場面も何度かあったと思う。


『さっさとレベル上げて先に行こうぜ』

「だから今は攻略したい訳じゃなくてだな」

『それじゃあ俺の加護が意味ねぇだろうが!』


 文太の加護は経験値アップ、この加護は自動発動型だから常に効果が出ている。

 怒ってるけどその姿も滅茶苦茶かわいい。

 解った解った、じゃあゴリ座衛門、バフかけてくれ。

 サーチしてもらった敵をやっつけに行こう。



 --------------------------------



「精霊ー--!!」


 宇佐美ダンジョン


「クオンちゃん、叫んだら精霊がビックリすると思うよ」

「パイセンが一番気合入ってるよね」


 そりゃ師匠が5体も持ってるって聞いてしまったら…

 わ、私だって欲しいよ!


「冷静になってみたらさ、冒険者もたくさんいるんだからあたし達みたいな低レベルが手に入れる可能性は限りなく低いよね」

「諦めたらそこで」

「そ、それ以上は言わなくていいよ」

「あ、パイセンが叫ぶから敵が来ちゃったよ」

「うおおおおお!」


 はあ、精霊に会えても気に入られないといけないって話だったような。

 あんなに叫んでる人を気に入るのかな。

 でもおじさんが気に入られたって事はちょっと変わった人を気に入る可能性もある。

 正解が解らないからやめろとも言えない。


「ファイヤーアロー、あ、レベル上がった」


 やった、これであたしもレベル13。

 クオンちゃんは15、エレナは9だっけ?

 なんだかんだレベルは上がるからいいか。


「お金目的だったけどさ、レベルの成長も気持ちいいもんだよね」

「ウチはまだまだ強くならないと、親父を越せない」


 エレナは強くなることが目的なんだっけ。

 お父さんレベルいくつなの?


「さあ、現役時代は400とか行ってたみたいだけど、やめてしばらくたつから落ちてるんじゃない?」

「おじさんと一緒かぁ」

「おじ様は別府覇者でしょ?ベッパーでしょ?」

「ベッパーwww」

「でも実際、現役時代はレベル2000行ってたんじゃない?別府ソロの推奨レベル知ってたんだし」


 途方もない話だ。

 どんどんレベル上がりにくくなるのに2000なんてどうやって達成したのか。


「二人とも真面目にやってよ」

「クオンちゃんが気合入りすぎなんだよー」

「そっすよ。前に出すぎっす。連携とりづらいっす」

「な、なにおー!」

「告白断らないほうが良かったんじゃないすか?男でも作って落ち着いた方が良いっす」


 ブチ

 あ、クオンちゃんキレちゃったよ?エレナ言い過ぎ。


「ほうほう、因みに君達は、今まで何人くらいの男と付き合ってきたのかね」

「え?0だけど」

「ほ、星の数ほど」


 エレナ、バレバレの嘘を…


「では星の数ほど男を惑わせてきたエレナ君にご教授いただこうか」

「は、はい、何すか?」

「奴らは性欲の塊だよな?エレナ君はどうやって受け止めていた?」

「え!!!」


 エレナ、動揺しすぎ。

 もう正直に言っちゃいなよ。


「えとぉおぉお、そのぉおぉお、ち、チッスとかでぇえぇえ」

「ねんねかお前は、しかしルシルが0人は意外だね、モテるだろうに」

「ん?あたしは女の子が好きなの」

「「ええ?!!!」」


 やだ、そんなに引かないでよ。

 別に付き合いたいとかじゃないよ?


「むしろ消去法というか、男ってゴブリンみたいなものでしょ?」

「え?んん?」

「ん?むむ?」

「女の子は可愛いでしょ?比べてみるとどっちが好きか明白じゃない?」

「ぅん?んん?」

「むう、よくわかんない」


 なんで解らないのよ。女の子がエルフで男がゴブリンって事よ。

 エルフの方が良いでしょ。


「その比喩は違うものを想像してしまうから良くない」

「どうしたのクオンちゃん、ちゃんと説明して」

「解った、私が悪かったから勘弁して」

「因みにおじさんはオークかな」

「もうやめて」

「おじ様可哀そう」


 もう、訳の分からない事ばかり言って。真面目にやってないのはそっちでしょ。

 レベル上がったし次の階層行ってみない?


ヒソ「エレナ、ルシルは天然なの?」

「みたいすね、ウチも中学ん時は付き合い無かったんで、知らなかったっすけど」

「あいつ、男をゴブリンだと思ってたんだね」

「おじ様なんてオークすよ?悪気はなさそうだけど…」

「悪気はないって言ってもなぁ、最初にダンジョン潜るの手伝ってもらってんのに」

「オークに手伝って貰ったと思ってたんすかね」

「ひどすぎるwww」

「ちょっと何二人で話してるの?」


 いや、何でもないよ。

 でもどうしよ、師匠に申し訳なさすぎる。

 色々世話になってるのにオーク扱いって、同じパーティメンバーとして恩を仇で返した気分だ。

 天然とはいえさすがに注意した方が良いよね?

 でも、そもそも男をゴブリンだと思ってるような人に通じるのかな。


「エルフの調教はオークに任せればいいんじゃないっすか?」


 結局それかよ!

 エレナ、お前も悪い奴だな。

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