52 おめでとう
年が明けた。おめでとう。
去年の冒険者としての最後の活動日にカミナのレベルが800丁度になった。
熱海の受付さんに聞きに行ったら日本の冒険者のレベルTOP200に該当するらしい。
凄いな、頂点行けるんじゃないか?カミナが目指してるのかは知らないけど。
ちなみに、ミオコは783、ミズキが780、俺が現在754だ。
「GOD、初詣は行く?」
「人が多いからな。でもカミナが行きたいなら行くぞ」
「冒険者神社に行こうよ」
冒険者神社?なんだそりゃ。
俺そんなの聞いた事ないよ。
「知らないの?GODが冒険者やめてる時に出来たのかな」
そうらしい。ほう豊洲にあるのか。
埋立地に神社作ったのか。歴史が浅い事がわかる。
「ビキニアーマー着ていくのか?」
「うん、参拝の時は冒険者の装備で行くのがマナーなの」
誰が決めたマナーやら。俺は振袖が見たかった。
仕方ない、俺も冒険者装備に着替えるか。
俺は行ったことが無いのでカミナにテレポートで連れて行ってもらう。
うお!結構人が凄いな!
「今年一年の祈願に全国から来るからね」
三が日で5万人くらいくるらしい。
明治神宮や成田山に比べれば大したことはないが、冒険者総数から見ると結構来るんだな。
「つかカミナ、寒そうに見えるんだけど」
「寒くないよ?肌色の部分までコーティングされるからね」
ダイヤのビキニアーマー、カミナの美しさも相まって滅茶苦茶注目を浴びている。
どうもどうも、俺がカミナの旦那です。
放置してた動画サイトで結婚報告はしたんだよな。その後また放置だけど。
「あ、おじさーん」
「ルシルか、熱海から来たのか?」
クオンとエレナも一緒か。お前らその格好で電車乗ったの?
ちゃんと敷地内に着替える場所もあるらしい。そりゃそうか。
「カミナさん美しい…」
「ぱねぇっすね、おんなじ人間とは思えないっす」
「みんなも可愛いよ?」
女の褒めあいが始まった。こうなると居心地が悪いな。
ルシル、二刀流は順調か?
「うん、スキルレベル4になって最近は魔法より便利に感じてる」
「ほう、剣に魔法乗せる練習はしてるのか?」
「うん、もうちょっとでうまくいきそうなんだけどね」
なるほど、成長してるんだな。
お前らが冒険者初めて7か月だっけ?なかなかの進歩だ。
「おじ様、お年玉!」
「ファイヤーボールで良いか?」
「今年は親父のお年玉拒否してやったんすよね。ショック受けてました」
「あらあら、お父さん可哀そうに」
一年に一回しかないイベント拒否か。
親としての振る舞いを許されなかったのは気の毒だな。
「師匠、今年もよろしくお願いします」
「こちらこそ、お前達の一年に福があらんことを」
「去年はお参りに来てないのに福がたくさんありました。今年はそれ以上を期待していいって事ですかね」
「神様大変だな」
お前は熱海に来る前、別府でちょこっとやってたんだっけ。
学生だし別府にいたら来れないよな。
三人は参拝してくるって。
俺はお賽銭いくらくらい入れようかな。
「GOD、仲良さそうだった」
「またーなんもないって」
カミナは心配しすぎだよなぁ。
俺がそんなにモテる訳があるかよ。
「なんや、見た顔やなぁ」
「おお、チョイスは出たのか?」
「でーへん、そやさかい神頼みやわ」
ギャル達が来た。カミナなんもないからな。
しかしまだ出てないのか。大変だな。
京都からテレポートで来たのか?
「せやせや、でないと毎年のように来れんわ」
「なんや毎年何かしら神頼みに来とるなぁ」
「毎年来るって事はご利益あるって事なのか?」
「あかんよ、神さんの前でそない失礼な事」
「バチあたるで」
結構信仰深いんだな。俺はちなみに半信半疑だ。
困ったときくらいしか頼りにしない。普段は忘れて生きている。
二人は参拝してくるって、良いお年をー。
「GOD、男の人の知り合いはいないの?」
「いるぞ?菊池とか及川さんとか」
あいつらは来てないかな?女とばかり話してるとカミナがうるさい。
人が多すぎで解んないな。
『調べましょうか?』
「いや、人間の見分けは難しいんでしょ?無理しなくていいよ」
今日のこの時間に来てるとも限らないからな。来ない可能性もあるし。
こんなことでバク子を消耗させたくない。
カミナの元に女の子の一団がやってくる。
握手を求められ、それに応えるカミナ。
動画サイト休んでるのにまだまだ人気なんだな。
「カミナも女の子に人気じゃないか」
「以前ほどじゃないよ。前なら来た瞬間囲まれてた」
そうだったな。動画サイトの休止、そして結婚。
2つの要素が重なり、カミナの日常は過ごしやすいものへと変わった。
「あけましておめでとうございます」
「ああ、虹谷さんか」
新しい女の登場にカミナの顔が今日一番の険しさを見せる。
なんもないんだけどなぁ。
「任務で一緒だった人だよ」
「旦那様の活躍は凄かったですよ。素敵な旦那様で羨ましいです」
…虹谷さんは気を使って言ってくれたのだろう。
だがカミナは何か違う解釈をしたような気がする。
「それでは」
手を振り、虹谷さんを見送る。
カミナの方を振り返りたくないなぁ。
「GOD、何もないんだよね?」
「もちろんだ、女と話すだけで毎回疑われても困るよ」
「うーん、でも…」
「あの人結構したたかな人だぞ?チョイスで別府の778まで連れてってくれって…」
俺を利用して商売考えてた人だぞ。
今度はそれはそれで許せないとか言い出しちゃった。藪蛇だったか。
「カミナ、あんまり疑われると信用されてない気がして俺も傷つくんだけどな」
「そ、そうだよね。ごめんなさい」
「というか自信持てよ。お前は世界一良い女だぞ?」
「GODも世界一だよ?」
それは同意できない。というか周りが何やってんだ?って顔をしてるからやめよう。
こんなとこまで来て互いに褒めあい、周りに見せつけてバカップルじゃないか。
正月早々こんなもん見せつけられたら俺ならキレる。
そろそろ参拝に行こうぜ。
「あれ?ケイトリンさんじゃないか?」
賽銭箱の前で一心不乱に祈ってる外国人。
あの人宗派が違わないのかな。余計なお世話か。
「あら?その節はどうも」
「まだ日本にいたんだね」
「ええ、申請が大変でしたけど、なんとか延長することが出来ました」
外国人の滞在にはいろいろ制約があったはずだ。
さらにそれが冒険者となると、めんどくさいんだろうな。
「それでは」
結構愛想無く行ってしまった。
あの人俺のファンじゃなかったっけ?まあいいや。
「カミナ、何を願うんだ?」
「元気な子が生まれますようにって」
……………え?
「いつ言おうか迷ってたんだけどね」
「え、えらいこっちゃ、そんな薄着でいちゃダメじゃないか」
「だからこの装備は寒くないの。むしろ衝撃から守ってくれるんだから安全なんだよ?」
そ、そうなのか?というか、え?妊娠?何か月?
「まだ一か月だね」
「そ、そうか、や、やったな!」
「うん、嬉しい」
そ、そうか、俺がまた親になるのか。
やばい動揺してる。嬉しいような不安なような。
俺はまた親として、旦那として、うまくやっていけるだろうか。
…それを願えばいいか。
人生で一番の神頼み。賽銭もはずんでおこう。
お願いします。今度こそ、今度こそ、家庭が成功しますように!
「カミナ終わったか?じゃあ家に帰って安静にしよう」
「う、うん、まだ大丈夫だと思うけど…」
用心に越したことはない。細心の注意を払え。
テレポートを使い、家まで帰った。
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「そ、そう、おめでとう」
「おじさん種まだあったんだ?」
正月早々ミオコ達に来てもらった。
もちろんカミナの妊娠報告の為、これからの事を話すためだ。
ミオコの顔が複雑だ。祝福しなければいけないけど、パーティはどうなるの?が入り混じった顔だな。
ミヅキはヤレヤレといった表情、出来てしまったものは仕方ないよな。
「妊娠1か月…当然冒険者は出来なくなるね」
「そう?まだなんともないけど」
「ダメ、普通の仕事ならともかく、冒険者は絶対ダメだよ。お腹に攻撃されたらどうするの?」
意外とミオコは真剣に考えてくれてる。
知識もあるんだな。自分のシュミレーションしてたのかな。
「おじさんはどうするんですか?」
「俺はカミナについていてあげたい」
「そうですよね…」
経験値アップの精霊持ちが二人抜ける。痛いと思ってそう。
申し訳ないけど自分の生活を優先させたい。
「GODは10日潜らないとレベル落ちるでしょ?ミオコ達と行ってよ」
「え?子供出来たら急に突き放された」
「ち、違うよ、GODが心配だからだよ」
意味は解るけど、同時に不安になった。
また子供中心になり、気持ちが消えていくのかだろうか。
「カミナー、男が浮気するのは妻の妊娠中が一番多いんだよ?」
「ううう」
「ミヅキ、妊婦を不安にさせるような事言っちゃダメ」
ミヅキは相変わらずだ。俺は浮気しないもんね。
でも当分カミナとは出来ないよね。どうしよう。
いやそんな事より今はカミナの事を第一に考えないと。
「さて、カミナはおそらく一年以上休むことになるだろう」
「そうですね。産後の子育て期間を含めれば、もっとでしょうか(復帰しない可能性も…)」
「俺はカミナについていてあげたいけど、加齢によりレベルが落ちるのも事実、なのでカミナを心配させない為にも時々ダンジョンに行くけど今までのようにハイペースでは行かない感じにしたい」
俺の希望はこんな感じだ。
旦那として正当な権利を言ってると思う。
「おじさん、時々はウチらと潜ってもらえるという事ですか?」
「うん、けして無理はしない範囲でならね。俺もカミナを残していけないからな」
「どうせしばらくはレベルアップ期間だったでしょ?去年はハイペースだったし、この辺でゆっくりするのも良いんじゃない?」
そうだな、お前達は去年だけでレベル250以上あがったんでしょ?
それに加え、600ダンジョン5つ全制覇、700ダンジョン4つ全制覇、頑張ったよなぁ。
「たしかに贅沢は言えないか…解りました、しばらくはゆっくりレベルを上げる感じにしましょう」
ミオコとミヅキは帰って行った。
さて、少しずつ子育ての準備もしていかないとな。
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熱海ダンジョン前広場
「カミナ妊娠したらしいね」
「ハイエルフが…?!」
「ちょ!ルシルのそのスイッチはどんな基準なの?!」
「お、落ち着いて!」
二人でルシルをなだめる。びっくりさせないでよ。
「受付さんがまた言ってたんすか?」
「いや個人用のSNSで発信してた」
「ありゃーコメント欄荒れてました?」
「それほどでもなかったね」
カミナ達は動画サイトをずっと休んでる。
結婚報告はしてたし、当然妊娠も予想できる。
皆の興味も移っていったのだろう。
「今は湯沢のアイドル、立石 奏ちゃんが人気だよね」
「おじ様が育成した子っすね。育成の子みんなSNSに積極的っすよね」
元々見本となる子を育てたいと言う話だった。なので政府に発信させられてるのだろう。
まるで朝ドラの主人公のような爽やかさで人気を博している。
「ウチらもやんなくていいんすかね?」
「あたしは絶対やんないよ?ゴブリンにチヤホヤされたくない」
「ルシルが嫌って言うなら無いよ。エレナ、諦めたら?」
「うう、絶対人気出るのに」
私も来年は一応受験生だし、今以上に背負い込むのは不安だ。
私達はダンジョン探索を頑張ろうよ。
「なので冬休みはこの前考えた作戦を実行しない?」
「セーフティエリアキャンプ作戦っすか?」
師匠からもらった5つのスクロール。
高位の魔法使いが作ったもので、結構な貴重品だ。
これで100層を突破し、101層のセーフティエリアでキャンプ。
何日か泊って102~でレベルアップをはかると言うもの。
「アイテムボックスに食料詰めてさ」
「空気が薄いとかで食料腐りにくいんだっけ?でも5日が限界じゃないっすか?」
「あたし、何日も家を空けれないよ。親が心配しちゃう」
「うーん、確かに私も母親が反対しそう」
「ウチは何日でも平気(無茶苦茶怒られるけど)」
「それに寝泊まりするとなるとゴブリンも心配だよ?」
ルシルの言うゴブリンとは冒険者の男たちの事だ。
レベル100を超えるような者達の通り道でキャンプ。
高レベルになるほど非常識な者は減っていくが、それでもまったくいない訳ではない。
現に高レベルの冒険者犯罪は時々起こる。
「うーん、私達は未成年だし時期尚早かな?」
「そう思うよ、冬休みは普通にがんばろ?」
「泊りが無理となると、ウチの夏休み旅行しながらダンジョン計画が…」
「夏休みはなぜか許される傾向にあるよね」
「そうだね、なんでだろ?」
林間学校とかお盆に帰省とか旅行が当たり前だからかな?
いや、長い夏休み、四六時中子供に家にいられると親も大変だからかもしれない。
なので学生が旅行するなら夏休みが狙い目だ。
「なので夏休み旅行計画は前向きに考えるよ」
「やった!」
「そろそろダンジョン潜ろ?」
旅行は私も楽しみだ。別府と熱海と奥多摩しか知らないし。
それまでに少しでもレベルを上げておかなくては。




