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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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51 別世界

 クリスマスが過ぎ、冬休みが始まる。

 熱海の女の子達は期末の点数が悪かったため、5日間の特別補習期間に入った。


「先生も休みたいんだから追試は良い点とってよ?」

「はーい」


 はあ、やっと初日が終わったか。

 ルシルは靴を履き替え曇り空の中を帰路につく。

 寒い、雪でも降るんじゃないだろうか。


 ダンジョン潜りたいけど家に帰ってからも勉強しなきゃ。

 もともとは大学の資金を貯めるために潜り始めたのに、今では生活の一部になってしまった。

 5日間もダンジョンから離れる事に現実味がない。そう感じてしまう。


 三学期の期末は赤点取らないようにしないと。

 でもそうなると日頃から勉強をする時間を捻出する事になる。

 ダンジョン休んで?ないない、あたしにとっては放課後の部活、青春をかけてるんだから。


「なあ、来年度から男子は高校卒業までダンジョン潜れないらしいぞ?」

「マジかよ!俺時々潜ってたんだけど」


 通り過がりに男子の声が聞こえてきた。

 あの子は同級生だったかな?ゴブリンの顔は見分けがつきにくい。

 現在すでに冒険者として活動している未成年男子も来年度からは一時活動停止、高校卒業年齢になるまでは再開出来なくなるらしい。

 変な政策だとは思うけど女子は対象外で良かった。エレナも女子がそうなったらブチ切れるって言ってた。


 うう、寒い。マフラーでもっと顔を覆う。

 どのみちスカート短すぎて生足丸出しなんだけどね。


「長谷川さん!ちょっと話があるんだけど」


 だれ?見知らぬゴブリンに話しかけられた。


「告白?ごめんなさい」

「は、話くらい聞いてよ」


 時間を貴方に?噓でしょ?なんで?どうして?

 貴重な時間を使うつもりはないよ。


「どこが好きなの?顔?」

「え、えっと…」


 なんで出てこないのよ。顔しか知らないからでしょ。

 それなのに人の時間を奪ってくる、こういう人は多い。

 告白に来たのに行き当たりばったり、計画性がない。


「今は誰とも付き合いません。それじゃあ」

「ちょっと待って!」


 腕をつかんできた。何も出来ないくせに、まだ粘るんだ?

 次の瞬間ゴブリンは宙を舞う。

 怪我させちゃ問題になるね。では一回転させて着地。


「へ?」


 キツネにつままれた顔ってこれか。ゴブリンにしては可愛かったよ。

 それじゃあね。


 冒険者と一般人では住む世界が違う。

 去り行くルシルを見つめるだけで、男の子はその場を動けなかった。



 ---------------------



「うん、正月の準備もあるし」


「いや、正月なんだから休みも多めにだな…俺がレベル落ちるって?そうだけどさ」


 GODがミオコとずっと電話してる。

 暇だなー。かまってほしいなー。

 腕を上下に宙を舞わせる。気づいてよー。


「お前はデュランダル手に入れて使いたくて仕方ないんだろうけど」


「ああ、暇ならミヅキと400層潜って来い。今なら余裕だから…ああ…そう…うん」


「500?ヒーラー無しで500は無理じゃないか?…いやそりゃあビキニあるって言っても」


 むーー、いつまで話してるの?浮気?

 ミオコは最近なにかとGODと話したがるし。

 ま、まさか、ダンジョンの話は隠語で密会を…

 400、500は部屋の番号なんじゃ…?


「ああうん、はいはい、じゃあな」

「ぎゅーー」

「うわ!びっくりした!」


 遅いよ!寂しくて死にそうだったよ!

 かまってかまって♡


「ちょっとトイレ」

「あっ」


 ま、まさか、トイレからテレポートし、短時間で事を済ませ、何食わぬ顔で戻ってくる気じゃ…

 ………長いな(1分も経ってない)。


「ふう」


 あ!あのため息は!いつもGODがおかしな事した後に出るため息!これは浮気確定!


「うえーん」

「ど、どうしたの?」

 ………



 なんか、誤解だったみたい。

 そうだよね、GODが裏切る訳ないもんね。


「正月の準備とか何かあったっけ…?」


 なにか独り言を言ってる。

 去年までは奥さんがやってたみたいだから解らないみたい。

 私は正月だからと言って特に変わった事はしないけど…今時年賀状も出さないし。

 GODは大人だから色々気になるみたい。


「家も空けっ放しだからちょっと見てくるかな」

「私も行く。大掃除してあげるよ?」

「はは、助かるよ」


 久しぶりのGODの家。

 今日も念入りに奥さんの痕跡を探さなくては。



「また郵便物が、どうにかならんもんかな」


 家中を隅ずみまでリフレッシュ。

 埃一つ残さないよう念入りに。


「お、マンション建てませんか?か、この辺一軒家少ないし良いのかもしれないな…」


 チラシを見て呟いてる。千代田区で一等地だから不動産屋が放っておかないのだろう。


「この家マンションにするの?」

「ああ、それも悪くないかなって、ただ車はどうしようかな…」


 ガレージには20台も車がある。全然乗らないのでバッテリーを外してある車もあるみたい。

 元々テレポート使えるんだから車の出番なんてないよね。

 あ!車に奥さんの髪とか落ちてるんじゃ!?


「GOD、車も綺麗にしてあげるよ」

「お、おお、そうだな。静電気なのか知らないうちに汚れていくんだよな」


 車を一台一台、ドアを開けて外も中もリフレッシュ。

 念入りに念入りにリフレッシュ、リフレッシュ。


「助かるよ。でもこうして見ると、乗りもしないのに持っててもしょうがないのかな」

「私に車の価値は解らないけど…さすがに20台は持ちすぎのような」


 なんだか古い車もあるし、価値が高いのかなこれ。

 これはかっこいいな。今度ドライブに連れてってほしい。


「息子君に一台あげたら?」

「ああ、欲しがるとは思うけど、高級車は維持していくだけで大変だからな。気楽にプレゼントすると後が怖い」


 修理代で簡単に100万くらい飛んでいくんだって。タイヤ交換で50万くらいは当たり前。

 私達には何でもない金額だけど、一般人には厳しいだろうね。


 冒険者と一般人では住む世界が違う。

 免許も持ってないカミナには理解が出来なかった。



 ----------------------



「うるせえバーカ!すぐにお前のレベルなんて抜かしてやるからな!」


 三橋みはし恵令奈えれなが今日も家を飛び出した。

 毎日のように父親と喧嘩、顔を合わせば小言ばかり。

 もう、なんだっていうんだよ。


「勉強勉強って、自分も冒険者だった癖に…」


 勉強した結果が冒険者か?そんな訳ない。

 命を懸けるような仕事に頭のいい奴がつく訳がない。


「へたにお金稼げるから勘違いしちゃうんだよね」


 命懸けの報酬は絶大だ。でないと誰もやらないからね。

 馬鹿でもアホでもお金持ちになれるのが冒険者。

 お金を持てば、偉くなったと勘違いする者も多い。


「…頭悪いから、勉強しろって言うしかないんだろうな」


 嫌味ではない。多分勉強の大切さを教えてくれと言っても、父は説明出来ないだろう。

 そうするのが当たり前という固定観念だけで言ってると思う。


「はあ、でも補習は確かにマズかったな」


 学生の本分は勉強だ。通わせてもらってるんだから勉強で結果を出さなければおかしい。

 冒険者を目指すなら高校もいらないんじゃないか?と思うこともある。

 ならば中卒で良いのかと聞かれると困ってしまう。どこかで恥ずかしいと思ってしまう。

 現に、大学まで行く予定でいる。


「くそ、ウチも自分で学費出そうかな」


 なんか、親に学費出してもらってるのも腹立ってきた。

 なんであんな奴に出してもらわなきゃならないんだ。

 ルシルは自分で大学行くって言ってたっけ。

 見習わせてもらおうかな。


「ねえねえ、大学どこにするの?」

「彼氏と一緒のとこ受けるつもり」

「えー?あんたの彼氏って三流大学通ってるんでしょ?あんた頭良いのにそれでいいの?」


 受験生の会話かな。彼氏に合わせて大学選ぶのか。

 勿体ない気がするけど、本人がそれで良いのなら。


「またすぐ浮気するんじゃない?」

「もう、今度は大丈夫だよ。お前だけだって言ってくれてるし」


 騙されてるね。友達もそんな顔してる。

 頭良いけど恋には盲目なのか。頭良いってなんなんだろ?


 別れてしまった時に、その大学を選んだ意味も無くなってしまう。

 そんな事も解らない者が頭良いのだろうか。


「え?なんで見られてるの?」

「い、いこ」


 あ、自分でも気づかないうちにじっと見てたみたい。

 珍しいものを見る目で見てたかもしれない。


「親の金で大学行くのに意味のない学校を選ぶなんて…」


 理解出来ない。ウチにはそんな事出来ない。

 親に借りを作ってまで意味の無い道を選ぶなんて。

 勉強は出来るのかも知れない。でも馬鹿だ。



 ---------------------



 東京港区六本木


「ば、化け物か」

「そっちがナンパしてきたんでしょ」


 シャワーを浴び、服を着て先にホテルを出てしまう。

 今日も満足出来なかった。


 ガタイのやたら良い男でも駄目だったか。

 やっぱり体力的に彼氏は冒険者じゃないと駄目なのかな。

 ミヅキはため息をつきながら歩きだす。


 それも自分と同レベルの冒険者じゃないと満足出来ないよね。

 そう考えると選択肢が極端に狭まってしまう。

 自分はすでに日本でTOP300に入る高レベルの冒険者。

 同じレベルの男を何人かは知っているが、みんなかなり年上だ。

 22歳の自分とは10歳差とかになってしまう。


「おじさんと一回試してみようかな」


 カミナが怒るから本気じゃないけどさ。

 でも高レベルの男はどんな感じなんだろう?

 私を満足させてくれるだろうか。


 信号待ちで立ち止まる。

 短い横断歩道、この時間は車通りも無い、ほとんどの人が信号を無視して渡ってしまうような場所。


 以前なら私も渡ってるんだけどな。

 でも一度おじさんに怒られたんだよね。

 小さい子が真似したらどうすんだ!って、無茶苦茶怖かった。


「お嬢さん、お小遣いをあげるから食事をどうだい?」


 おじさんと同じくらいの歳の男に話しかけられた。

 お腹も同じくらい。髪はフサフサだ。いやヅラかな?


「パパ活?私冒険者だから金は持ってんだよね」

「冒険者?!き、聞かなかった事にしてくれ!」


 慌てて逃げるおっさん。なんなの?失礼じゃない?

 冒険者でもないただのおっさんなんて、こっちから願い下げなんだけど。


 ミヅキはこの辺で自分がサキュバスと呼ばれている事を知らなかった。



 ------------------



「ごめんねお母さん、補習が長引いちゃって。夕飯遅くなったね」

「そんなのはいいよ。高校も卒業してくれればそれで良いんだからね」


 立花たちばな九音くおんは高校2年生。

 親は離婚し、今は母方の実家に住んでいる。


「じいちゃんとばあちゃんは?」

「町内の新年会の準備があるとかで公民館に行ったよ?」

「こんな時間に?どうせ打ち合わせという名の飲み会でしょ?」


 祖父も祖母も元気いっぱい。

 離婚して母親が戻ってきた時は怒ってたけど、最近はなんだかんだ家の事を任せられるから楽しそうだ。

 祖父は大型バイクでツーリング、祖母はサーフィンを趣味としている。

 60過ぎてるからこっちは心配なんだけどね。


「じいちゃんとばあちゃんも心配だけど、あんたも心配なんだよ?」

「ぼ、冒険者の話?大丈夫だよ、うまくやってるよ」

「そうは言ってもねえ」


 親としては子供の心配をするのは当たり前。

 この話は定期的に母親の口から繰り出される。

 やめてほしいのが本音だと私自身も解っている。


「彼氏でもいればダンジョンなんて潜ろうとは思わないだろうに」

「悪い男に捕まる心配はしないの?」

「というか、アンタは変な本も持ってるし、そこが母さん心配でねぇ」

「…………」


 変な本とはサルエロのエロ本の事だ。母親は私が同性愛者なのかと疑っている。

 私はモテない事はない。現に何回か告白もされている。

 でも今となってはダンジョンに潜る時間を削って彼氏とデートをするなんて考えられない。

 ルシルやエレナと一緒にいる時間を大事にしたい。


「貯金も貯まってきたよ?少し家に入れようか?」

「未成年が何言ってんの。心配しなくても養育費はもらってるし、大学行くならじいちゃんが金出すって言ってるよ」


 いや、未成年のうちは甘えさせてもらうけどさ、大学行くとしたらさすがに自分でお金出すよ。

 じいちゃんには新しいバイクでも買うよう言っといて。

 じゃあ私は勉強するから、追試は絶対合格したいし。

 自分の部屋に行き一息つく。


『お母様の心配もわかりますわよっほーん』

「いや、アンタも原因の一つなんだけど」


 ほら、制服脱ごうとしたら舐めまわすように見るでしょ。

 もう慣れたけど、女の恥じらいがなくなっていくのも複雑だ。


「ねえ、サルエロ、私が死んだらアンタは奥多摩に戻されるんでしょ?」

『…そうですわっねーん。またあの暗く深い山奥に逆戻りですわっふーん』

「受付の人が女が来たのは何十年ぶりって言ってたけど」

『そうなんですのよっほーん、わたくし寂しくて寂しくて…』


 あそこ、サルエロにとっては地獄だよね。

 なんでかなぁ、このエロいオランウータンにもすでに情が沸いてる。

 人間が同じ事やったら犯罪なのに、自分の精霊には容認している。

 あの人の来ない暗くて寂しいダンジョンで、サルエロがたたずんでる姿を想像すると涙が出そうになるんだ。


「お母さんが心配してくれるのも解るけどさ、私は死ぬ気ないしサルエロが守ってくれるでしょ?」

『モチロン、全力で守らせて頂きますわよっほーん』


 心強い味方がいる。頼りになる精霊がいる。

 私はこれからも冒険者として頑張っていく。

 自分の為にも、サルエロの為にも。

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