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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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5 招集おじさん

「カミナ、どうしたの?いつものキレがない」


 ただいま動画撮影中。

 企業の依頼を受け、新作の防具の紹介をしているのだが、どうもカミナの調子が悪い。


「だって、GODが見てるかもしれないと思ったら緊張しちゃって」

「あんたあのおじさんの事GODって呼んでるの?」


 この間会ってから意識しまくりで。

 お、おしとやかにした方が良いかなぁ。


「一緒に風呂まで入っといて何言ってんの?」

「きゃああ!それを言わないで!」


 あの時はどうかしてたのよ。

 GODが温泉を所望されている。

 では是非とも、入浴をお手伝いして差し上げねばと思ってしまった。


「入浴介助?」

「お年寄り扱いしないで!」

「はあ、カミナはSっぽいカッコよさが人気なのに」


 まるで恋に盲目な乙女。

 今日の収録は時間かかりそうだなぁ。



 ----------------------



「あれ?受付のお姉さんですか?」


 熱海ダンジョン 49層


「お疲れ様です。皆さんお怪我はないですか?」

「え?一人ですか?ソロでここまで?」


 五人の冒険者たちに挨拶するのは、熱海ダンジョン受付 葉山はやま加奈子かなこ24歳。

 休みの日は時々小遣い稼ぎのためにダンジョンに潜っている。


「ソロでここまでという事はレベルは…」

「86です」

「えええ?」

「お姉さん、受付より冒険者専業の方が良いんじゃないの?」


 確かに収入は雲泥の差だ。

 受付の仕事も普通の仕事よりはお給料は良いのだけど、冒険者と比べてしまうと小銭みたいに感じる。

 それでもやはり冒険者は命懸けの仕事。

 冒険者一本でやっていく気はない。


「もったいない、ウチのパーティに欲しいくらいだ」

「うふふ、ナンパですか?」

「そ、そう捉えてもらっても」


 照れながら頭を掻く冒険者。

 緊張を解くことは出来ただろうか?


「さて、これから皆さんは初めて50層の小ボスに挑むんですよね?」

「え?」

「なんでそれを…」


 見てるからです。

 私は皆さんの成長をちゃんと見ている。

 ひたむきに頑張っている姿を見ています。


「見届けさせてください」

「えと…手伝ってくれるって事ですか?」

「いえ、これは皆さんが乗り越えなければならない壁です。私が手を貸したのでは意味がありません」


 手は出しません…危なくならない限りは。

 それを先に言うことは無いのだけれど。


 誰にでもこんなことをする訳ではありません。

 頑張っているのを見てたから、死んでほしくないと思った時だけ見守ることにしています。


「よ、よーし、行くか?」

「リーダー、落ち着いて」

「う、受付さん、勝ったらデート…」

「リーダー!それ死亡フラグ!」


 落ち着いて、落ち着いて。

 今は小ボスを倒す事だけを考えて。


 熱海ダンジョン 50層 


 50層の小ボスは見た目が猿のような化け物、狒々(ひひ)

 動きが早く、なかなか攻撃が当たらない。


「いて!ちきしょう!」


 長引くと息が上がるわよ。短期決戦に持ち込まないと。


「ぐあ!!こんにゃろ!」

「ナイス!畳み込め!」

「うおおおおおおお!」


 なんとかなりそう。でも最後まで油断しないで。


「やった!」

「やったぞー!」

「やったー!」


 お見事、おめでとうございます。

 さて、私は輪に入るわけにはいかないので先に失礼します。


 後日


「そういう訳で、若者たちの成長を見るのがやめられなくて、受付を続けているんですよ」

「いいねぇ、若いというだけで羨ましいよ。おっさんは逆立ちしても敵わない魅力があるよ」

「そ、そんなことは…素敵ですよ?」


 いやいや、気を使わなくていいよ。

 俺は腹が成長するだけだし。


「人の成長を見守る仕事か。でも大金稼げる仕事だからさ、変わっていく子も多いでしょ?」

「多いですねぇ。素直な子だったのになんでって…悲しくなっちゃいます」

「俺もそうだったのかなぁ、お金はあるけど家庭がうまくいってるとは言えないし」

「お金があるだけで幸せだと思いますが、それが当たり前になってしまうと満たされないのかもしれませんね」


 贅沢じゃないか?と、思ってしまう。

 別にありがたがれって言いたい訳じゃないけどさ。

 何不自由無い暮らしをさせてるんだからハゲとデブくらい許せよ。


「でもおねーさん、レベル86なら今まで相当稼いできたよね?」

「え、ええまあ、あまり大きな声では言えませんが」

「自分でそれだけ稼いでるとなると男に求める条件って何になるの?」


 ええ?なんだろう。

 あまり考えたことは無かったけど、頼りがいとか?


「お姉さん自体が若者達を見守ってるし、頼りになる人でしょ?それにレベル86なら車くらい持ち上げられるでしょ?」

「やった事ありませんけど、おそらくは」


 男に頼りにされる側じゃないか。

 俺も頼っていいかな。


「富と信頼を兼ね備えたスーパースペックな女性か。モテるんだろうな」

「どうなんですかね?車持ち上げる女ってモテますかね?」


 む、確かにちょっと怖いか。余計なこと言ったかもしれない。

 こういうとこが駄目なのかな俺。


 ピーピーピー


 何か警告音のようなものが。

 受付さんが慌てだした。どうしたどうした?


「沖縄で冒険者が暴れているそうです」

「ああ、って事は臨時招集?」


 時々起こる臨時招集。

 冒険者が暴れだすと警察でも手に負えない。

 そういう時はすぐに連絡がつく他の冒険者に依頼が来る。

 そしてすぐに駆け付けなければならないので、現場に近い場所に行った事のあるテレポートが使える冒険者限定の依頼だ。


「レベル168の冒険者が暴れているそうです」

「現地の冒険者に依頼…沖縄はダンジョンが無いんだっけ」


 ダンジョンの数が他国と比べて桁違いに多い日本だが、徳島と沖縄にだけはダンジョンないんだよね。

 なのでこの2県は極端に冒険者が少ないはずだ。

 俺みたいにテレポート使えるならどこに住んでも一緒なんだけどね。


「という事は暴れている奴は旅行者か」

「酔っ払っているそうです」


 冒険者が犯罪を起こすと極端に罪が重くなるのでこういう事はあまりない。

 ただ酒が絡むと時々は起こる。


「すみません、沖縄に行ったことはありますか?」

「あるよ。美ら海水族館とか国際通りとか」

「良かった。国際通りで暴れているらしいんです」


 はいはい、来ると思ってました。

 国際通りのどのヘん?被害出てるからすぐわかる?わかった、取りあえず行ってくる。



 沖縄 那覇市国際通り


 おわあ、建物から煙上がってる。

 なんだよ、戦地かここは?


 警察官のバリケードが見える。その中の一人近づいてきた。


「テレポートして来ましたよね?応援の方ですか?」

「はい、暴れてる奴は?」

「市場本通りの方へ行きました!」


 アーケードの中か、やっかいな場所へ行ったな。

 よし行くぜ。あんたらも少し離れてついてきてよ。


 アーケードの中に入ると遠目からだが女がゆっくり歩きながら魔法撃ってるのが見えた。

 女かよ。昼間っから何してんだか。


 幸いこちらには気づいてないようだ。

 一瞬で近づき後ろから押さえ込む。


「な?!は、はなしぇ~!」

「何やってんだよ、重罪だぞ?」

「うるしゃい!!もうどうだっていいろ~!」


 呂律が回ってない、そうとう飲んでそうだ。

 取り合えずこないだの強盗みたく夢見させて無力化しようかな。

 でもこいつの場合、夢心地でも暴れそう。


「よくやってくれました!おい!ミスリルの拘束具持ってこい!」


 すぐに警察官が来てくれた。

 ミスリルの拘束具で芋虫状態にされる女。ここまでしないと冒険者は安心できない。


「怪我人や被害は?燃えてるトコとかない?」


 あれば魔法で消すぞ。

 さいわい、火事にはならなかったようだ。

 最初に見た煙も消火栓で何とかなったみたい。


「まったく…男にでも振られたのか?」

「!!!…うぇえ~ん」


 くしゃくしゃになって泣き出す女。

 図星かよ!傷心旅行で酒飲んで暴れたのかよ!


「やれやれ、後はお任せしてもいい?」

「はい、ご協力ありがとうございました!」


 ふう、迅速に終わって良かったぜ。

 おや、遅れて駆け付けた冒険者っぽい男女が2人ほど。

 装備で解りやすい、アンタらも招集かかったの?


「終わりましたか、有馬から来たんですが」

「私は湯布院から」


 おお、2つとも高層ダンジョンだ。

 テレポート持ちはやはりレベル高い所に潜ってるね。


「被害がそれほどじゃなくて良かった」

「こういう事があると、冒険者への風当たりが強くなりそうで困りますね」


 確かにね、資源を持ち帰ってくる冒険者だが、一部ではすごく嫌われている。

 理由は色々、儲けてるからやっかみもあるし、単純に化け物染みてて怖いからと言うのもある。


「まあ一部を見てそれがすべてだと思わないで欲しいよね」


 これは聞こえるように言った。さっきから周りの一般人の視線が気になる。

 沖縄は特に冒険者少ないだろうから視線が痛いね。


 さて、気まずいから帰ろうかな。

 折角来た2人ともう少し話したかったんだけどね。


「カミナだ!」


 遠くで誰かがそう叫んだ。

 向こうから歩いてくる女が一人。


「カ、カミナだ…」

「うそ、私めっちゃファン…」


 後から来た冒険者2人も息をのむ。

 はて、どっかで聞いたような?向こうから歩いてくるアイツがそう?

 最近目も悪くて何の事だか。


 しゃなりしゃなりとモデルのような歩き方で向かってくる女。

 お、ヒーラーだな、装備でわかる。その女がビタっと止まった。


「ご、GOD]


 ゴッド…?

 あ!こないだ一緒に温泉入った女だ!服着てるから解かんなかった!

 いや、体ばっか見てた訳じゃないけどね!


「け、怪我人がいるかもってぇ↑」

「カミナ声が裏返ってる!」

「クールだと思ってたのになんか可愛い!」


 あたふたするカミナと呼ばれた女。

 2人の冒険者はやんややんや。

 やめたれよw


「悪いね、せっかく来てもらったけど怪我人は居ないんだ」

「そ、そぉ?↑」

「熱海から来たのか?こないだは熱海に潜ってたよね?」

「こ!こないだ!!」


 あ、こないだの事意識させちゃった。

 そうだよな、こんなおっさんと風呂入ってたの知られたくないよな。

 俺はこういうとこが駄目なのかもしれない。


「じ、自宅から、SNSで、れ、連絡来て」

「そっか、休んでるとこわざわざ依頼されるって事は信頼されてるんだな」

「じゃ、じゃあ私はこれで」

「カミナ待って!」

「握手して!あっ!」


 周りの声を無視し、カミナがテレポート。

 なんか顔真っ赤だったな。風邪なのに来てくれたんだろうか?良いヤツだな。


「お、おじさん、カミナと知り合いなんですか?」

「いや?一度ダンジョンの中で会っただけだ」

「それが熱海ダンジョン?私も湯布院やめてそっち潜ろっかなー」


 熱海は500層だぞ?君達には物足りなくないか?

 でもまあ、色んなダンジョン潜るのも悪くない。

 テレポート持ってるなら行ったり来たり出来るし。

 なんなら俺みたいにダンジョン無い場所にも住める。


「私も普段は博多に住んでます」

「俺は神戸」


 なんだ、最初ダンジョン名で名乗ったのはダンジョンマウントか。

 俺は高層ダンジョンから来たんだぜ、の方が箔がつくと思ってる人は多い。


 さて、今度こそ戻るかな。2人に手を振り、家に帰るか。

 いや、報告必要かな?熱海ダンジョンの方に戻るか。



 熱海ダンジョン 受付


「そんな訳で大した事なかったよ」

「お疲れ様です。後日今回のご協力に対する謝礼があると思います」


 そうなの?また警察表彰とかは勘弁してね。

 馬鹿な冒険者の失態を大袈裟にしたくはないし。


「あの暴れてたヤツどうなるの?」

「被害は弁償、慰謝料も含め莫大な金額を請求されるでしょうね。後は刑罰の方がどうなるか」


 今回は怪我人も無く、建物や商品への被害だけらしい。

 レベル168なら貯金たくさんあると思いたいが…無かったらどうなるの?


「冒険者資格は取り上げなので、極刑かもしれませんね」

「極刑?そこまで重いの?」

「はい、資格は取り上げられても弱くなる訳ではありません。社会に出しても賠償金を稼ぐすべが無いと判断されると危険人物を野放しにしてしまうだけになってしまうので」


 解かっていたけど冒険者に対する刑罰は重いな。

 そっか、自分が捕まえたヤツがそんな事になってしまうってのは、少々複雑だけど、仕方ないのかな。


 後日解かった事だが、捕まった奴はホストに狂ってて貯金あんまり無かったらしい。

 フラれたのもホストだったのかな、疑似恋愛に何を求めてるんだか。


「大金を持つと狂ってしまうんでしょうね」

「うーん、結局その話に戻るのか。お姉さん俺が狂わないよう見守っててね」

「家庭環境がうまくいってないようなので心配ですね…」

「ガーン」


 確かにそうかも…なんてな、分別くらいはあるからな。

 若い子と違って歯止めは効く。暴走はしない。


「と言うか、カミナさんと会いました?」

「うん、なんかすぐ帰っちゃったけど…お姉さんが呼んでくれたの?」


 貴方を崇拝する方だったのですが、何も進展は無かったようですね。

 ちょっと見守るの範疇越えてる気はしたのですが、家庭がうまくいってないのならありなのかなと。

 …やはり出しゃばりすぎたかも、やりすぎた気がしてきました。


「可愛いよな彼女、息子の嫁に来てくれないかな」


 ああ、そっちかぁ。

 さすがに53歳の男性にとっては20歳の女性は若すぎるのか。


「息子さんがいるんですね」

「うん、もう成人して家を出てるけどね。普通の会社勤めしてるよ」

「息子さんは冒険者には興味なかったんですか?」

「ああ、ほんとにちっちゃい頃はなりたいって言ってたけど、嫁が反対したし次第に考えも変わっていったみたい」


 …俺が冒険者をやめたのも、息子が出来たからなんだよな。

 守る者が出き、死ねないと思ってしまった。


 息子が成人したら自分達のやりたい事が出来る、そう思ってた。

 でも実際にそうなってみたら俺達夫婦の間に残ってた物は何も無かったようだ。

 少なくとも妻にとっては息子が全てで、いつの間にかそうなってたみたい。


 …やはり離婚しかないのかな。

 現状は結論を先延ばしにしてるようにしか思えない。

 妻を解放してあげることが、一番の答えなのだろうか。

 解らん、何が正解なのかが本当に解らない。


 ボソ「痩せたところでさ、本当は夫婦仲が戻るとは思ってないんだよね…」

「え?何かおっしゃいました?」

「いや、今日は帰るよ」

「沖縄の件、本当にありがとうございました」


 …何か、思いつめた顔をしていましたね。

 レベルが下がったとは言え別府第一ダンジョン制覇の英雄、彼が闇落ちしてしまったら…

 何とかしてあげられないでしょうか?でも今日は余計な事をしてしまった気がするし…

 私生活にまで干渉するのはどう考えてもやりすぎだろう。


 葉山加奈子は去り行く背中から視線を外せなかった。

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