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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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48 デュラハン

「休みだー」


 城崎ダンジョンを制覇し、2日間のお休み。

 今日はとても天気が良い。カミナ、どっか出かけるか?


「ねえ、ミオコがまた話あるって」

「ま、またか?」

「今日は私もいて良いって」


 ここでか?そうか、ならば来てもらうか。

 しかし最近は休みの日まで顔を合わせてる、休んだ気になれないな。

 ミヅキも飛んできた。結局いつものメンツかよ。


「みんなごめん!やっぱりウチも有馬に行かせてください!」


 開幕早々、ミオコが立ち上がり、テーブルに手をつき頭を下げた。

 なんだろう?どういう心境の変化だ?


「シオリの墓前に行く前に、報告することが何もないんじゃ情けない」

「立派にやってるじゃないか。昨日も城崎攻略したし」

「ウチが報告したいのは、『仇を取ったよ』なんです」


 それはみんな同じ気持ちだ。だがお前は怖がっていた。

 フラッシュバックを起こすとも言っていた。


「今は大丈夫と思っていてもな、現場に行けば忘れていた記憶もより戻すし、トラウマが強ければ動けなくなる事もある。自分でもそう言ってなかったか?」

「た、確かに、そうならないとは言い切れませんが」

「だとしたら連れていけない。仲間を危険にさらす行為だ」


 俺は正しい事を言ってるはず。でも他の二人はどう思っているかな。

 こういう時、女子は女子の味方をするケースが多い。

 理屈よりも感情で動く場合が多い。


「ご、GOD,なんとかならないかな?」

「懸念材料を持っていくほうがおかしいんだ。ダンジョンは命懸け、甘い考えは捨ててくれ」

「でも500層の中ボスだよ?ミオコが動けなくなっても、私ら3人で守りながら戦えない?」

「倒せる。余裕だろうな。でもミオコが報告したいのはそんな姿ではないはずだ」

「「「…」」」


 重い沈黙が流れる。

 3人とも、俺の事を冷たいと思ってるかもしれない。

 俺だってこんな決断をするのは嫌なんだぞ。


「むしろ、俺抜きの3人で行け」

「「「え?!」」」

「今のレベルならお前達3人でも余裕で行けるはずだ。だがミオコ、お前が動けなくなったらさすがに中ボスは倒せないと思う」

「だ、だったら」

「仲間を守れって言ってるんだよ!自分の手で!今度こそ!」

「!!」

「シオリさんのリベンジだけじゃない。自分自身へのリベンジをしてこい」


 はあ、厳しすぎるかな。昭和生まれのスパルタ教育。

 時代遅れの熱血指導。俺自身が嫌いだった古臭い観念。


「俺抜きで討伐?カミナが心配だ。カミナのそばにいたい」

「ど、どうしたの?おじさん」

「やば、心配すぎておかしくなりそうだ。自分が言ったことが信じられない」

「「「…」」」

「俺だって苦渋の選択って事だ」

「GOD…解った。成長してこいって事だね?」


 そうだ。乗り越えて成長してこい。

 出来ないならおとなしく待っていろ。


「…わ、解りました。ウチやってみます」

「本当に出来るのか?」

「まだ甘えがあったんでしょうね。どうせ自分が役立たずでも、3人が何とかしてくれるって自分でも計算していました」


 退路を断たれ、決断しなくてはいけなくなった。

 ミオコが自分自身の道を見つけ出すために。


「ねえ、休みのとこ悪いんだけどさ、二人とも今から有馬の500層だけ付き合ってくれない?」

「い、今から行くのか?」

「揺らがないうちに行きたいんです。おじさんはついて来ないでください」


 なんだってー。透明化でこっそりついて行こうと思ってたのに。

 なんでそんな意地悪言うの?仕返しなの?


「解った、お花買っていこうよ」

「シオリはケーキが好きだったから私買ってくる」


 俺を無視して動き出しちゃった…俺も花たむけたかったんだけどな。

 まあお墓参りで我慢しとくか。


「じゃあGOD、行ってくるね!」

「おじさんは浮気でもしてなよ」

「ミヅキ!!」

「おじさん、必ずカミナを無事に返しますので」

「ああ、頼んだぞ」


 戦地へと向かう3人の女達。

 テレポートで消える前の姿が、とても頼もしく見えた。



 -------------------



「ねえ、余裕だって解ってたんでしょ?」

「ビキニあるからな。ダメージ軽いだろうなとは思っていた」


 有馬の500階層へと向かった3人が晴れやかな顔で帰ってきた。

 現地まではテレポート、そこからカミナのチョイスで一気に500層、中ボスに苦戦する事も無かったとか。

 明日は墓参りに行こうという事で二人は帰って行った。


「ミオコは大丈夫だったか?」

「うん、有馬に着いたときは顔が強張っていたけど…」


 何年か前までは通っていた風景、丁度知り合いがいたらしくミオコは身構えた。

 リベンジをしに来たと伝えるとエールを送られたらしい。

 シオリの事を知ってる者も多く、懐かしむ中で自然に涙があふれ、弔いの意思が固くなっていったとか。


「何か神聖な気持ちになれたよ。いつもふざけているミヅキの表情も真剣で」

「思いは一緒だったんだろうな」


 カミナの表情も変わった気がする。

 聖母みたいな優しい目で見つめてくる。

 今日はおかしな事したいって言いにくい目だ。我慢するか。


「そうだ、アヤカちゃんに会ったよ。よろしく伝えてくれって」

「アヤカ?……ああ、育成の子か」


 道後で育成した江藤えとう 彩花あやか、そういえば有馬に潜ってるんだったな。

 元気だったか?変わりはないか?


「うん、良いパーティを見つけて順調みたい」


 そうか、それは何よりだ。

 まっすぐ育ってくれるといいなぁ。



 翌日、兵庫のとある場所の霊園


「お墓の場所解るのか?」

「わかりません。畑中家で比較的新しいはずなんですが」


 探すか、新しい墓なら端っこの方だろう。

 …これか?畑中家の文字、横に書いてあるのは親の名前かな?

 あ、手前の石碑に畑中汐里の文字が。これで間違いないか?


「間違いありません、シオリのお墓です。お葬式の時はまだお墓が無くて…」


 親が分家なんだろうな。石碑にはシオリの名しか書いてない。

 だが遺体を回収できなかった為、墓の中には何も無いはずだ。


 買ってきた花を供える、誰も何も話さない。

 ただ粛々と準備を進めていく。


 ロウソクと線香に火をつけ、祈りをささげる。

 初めましてシオリさん、突然来てごめんね。

 あなたの無念はミオコ達が晴らしてくれたよ。


「シオリ…来るのが遅くなってごめんね」

「こっちは元気でやってるよ」

「思い人と一緒になることが出来たよ」


 各々思い思いの言葉を口ずさむ、話したい事がたくさんあったんだな。

 場所を譲ろう、会った事も無いおじさんが前にいてもしょうがない。


 冬の空、悲しい色の空だ。冷たい風が横切っていく。

 木々は華やかさを失い、命の灯が消えてしまったかのよう。


 春になれば命は巡り、大地には彩りが戻っていく。

 寂しいのは一時だ。命は循環してゆく。


「おじさん、神戸に寄って行きたいんですが」

「シオリが好きなクレープ屋さんがあるんだよね」

「供養のためにも私達で食べないと」


 いいな、クレープは久しぶりだ。俺はチョコバナナな。


「ええ?おじさんにしては普通」

「おじさん、それじゃあシオリが浮かばれない」

「なんでだよ、チョコバナナ一番美味しくないか?つかサラダみたいなクレープあるよな?あれに挑戦する勇気がない」

「ええ?美味しいのにGOD食べたことないの?」

「ないなー、どうせなら生クリームのやつ選んじゃうなー」


 3人とも食べた事があるらしい。マジか。

 あれって飽きてきた頃にお茶を濁す口直しメニューじゃないの?


「変わった奴らだ」

「クレープはもともと食事なんですけどね」

「お昼にちょうどいいよね」

「マジで?おにぎりみたいなもん?」

「フランスではそうなのかな」


 汐里さんの墓を背に、賑やかに帰っていく。

 本当は俺じゃなく汐里がこの中にいたんだよな。

 この場所を受け継いだ以上、俺が三人を守るよ。



 ------------------



 有馬ダンジョンボス デュラハンの間


 俺達は翌日から有馬の攻略に入る事にした。もちろんミオコも一緒だ。

 カミナ達が500層まで攻略してたので501層から、2日でボス部屋までやってきた。


「左手に持ってる頭以外にダメージは入らない!的が小さいからよくねらえよ!」

「早い!」

「こ、こんなに避けられるなんて」


 華麗に攻撃をかわすデュラハン、まるで闘牛士のようだ。

 ミヅキの槍連射もことごとくかわす。胴体にも当たらない。


「来た!頭を掲げたら目からビームが出るぞ!」

「ビーム?!」


 ビームみたいな魔法だ。これはどこに飛んでくるか解らない。

 目線と関係なく飛んでくる。


「ぎゃー!!」

「ミオコ大丈夫か!カミナ回復して!」

「うん!」

「おじさん、あれどうやって避けるの?」

「飛んできた瞬間避けるしかない」

「えええ」


 700層からはこんなもんだよ。大体理不尽だ。

 クラーケンも滅茶苦茶体力あっただろ?


「霧を発生させた!動き回れ!」

「ええ?どこに逃げればいいの?いたっ!」

「ミヅキごめん!ぶつかった!」


 時計回りに逃げるとか約束事を決めておけば良かったな。

 ソロでやってたもんで、てへへ。


「くそ!体でガードしやがって!」

「おじさん、当たるだけ凄いよ」

「後ろから狙っても避けられるんですが」


 視野が広いんだろうな。頭抱えられてるくせに。

 妙なステップを踏みながら剣の突きが飛んでくる。

 危ない!急に伸びてくるような感じだ。トリッキーだなぁ。


「しょうがない、魔法撃つときは止まるからそこを狙おう」

「え?避けなくていいんですか?」


 敵に近いけど避けろ。タイミングはさっきと一緒だから。

 一回食らったんだから撃つタイミング解るでしょ。


「ぎゃーー!!」

「「おじさーん!」」

「GODー!!」


 お、俺が食らってしまった。でも1発入れる事が出来たぞ。

 カミナ回復ありがとう。


「ファイヤーウォール!」

「ナイスおじさん!動きが止まったよ!」

「当てるのは難しいけど足止めは出来るな」


 しかし動きを先読みするのも難しい。

 ミオコが1発当てた。だがすぐその場からいなくなる。

 ミヅキの槍は空振った。


「くそお!」

「霧だ!カミナ風の魔法撃てるか?」

「うん!」


 霧が晴れていく。あ!カミナを狙ってきた!

 走り出すが間に合うか?


「させるか!」

「あ!…ありがとうGOD」

「おじさん、私達も守ってよ」

「お前のほうがレベル高いじゃないか。俺を守ってよ」


 ほれ呑気なこと言ってると次が来るぞ。

 突きが来るぞー!

 …………



 --------------------



「ふう、結局また二時間か」

「ぜっんぜん当たらない!なんなのアイツ!」

「はあ、くたくたです」


 頭に計13発入れたところで攻略出来た。

 4人で13発当てるのに二時間かかった訳だ。


「GOD、あんなのソロでどうやってたの?」

「もっとレベル高かったし、普通に精霊使ってたし」


 ソロの時はそこまで苦労しなかったんだけどな。

 4人だと向こうの攻撃が分散する分動きが捕らえづらかった。

 結構走らされた印象だ。


「なるほど、1対1の方が自分に攻撃来るって解ってるから…」

「もちろん攻撃が集中する分大変なんだけどさ、ビームは避けやすかったぞ」

「私攻撃1発しか当たらなかった、槍は相性悪いのかな?」

「いや、リーチ長いし一点集中だし槍は相性良いはずだ」

「うう、城崎に帰りたい…」


 ははは、まあたまたま運が悪かっただけじゃないか?

 被弾はお前が一番少なかったし、動きは悪くなかったぞ。


 心配ならもう何度か戦おう。どうせ次の700ボスに行くにはレベルアップが必要だ。

 ついでに近いクラーケンも倒せればいいんだけどな。城崎は今ギャルどもが占拠してる。


「あいつらチョイス取れたかなぁ」

「ねえ、レベル上がったら次はどこの700行くの?」

「那須だな。下呂は最後」


 那須のダンジョンボス、フェンリル。

 これまたとんでもない強敵だ。


「こいつも動きが速い、そしてでかい、攻撃力もヤバイ」

「はあ、次から次へと」


 700層なんて強敵しかいないぞ。

 俺達はもう伝説級の相手と戦う場所まで来てるんだ。光栄な事じゃないか。


「おじさん楽しそうですね」

「ああ、ダイエット気分だったけど、昔の気持ちが戻ってきたんだろうな」

「攻略欲求?私はお金が第一」

「ねえ、あれ…」


 ん?カミナどした?…あ!あのドロップ品は!


「聖剣デュランダルだな。名前付き武器だぞ」

「ええ!超超超レアじゃないですか!」

「ミオコいるか?そろそろこれぐらいの剣を持ってもよい頃だ」

「い、いいんですか?」


 その分ドロップ分配は減らすけどね。

 闇を切り裂く剣、デュラハンと相性の良い武器だ。


「おじさんはいらないんですか?」

「ああ、俺も名前付きの剣は何本か持ってるからな」

「デュラハンは持ってないの?それなのによく一目で解ったね」

「昔、人が持ってるのは見たことある」


 その人は死んじゃったけどね。

 最近人の死に触れたばかりだし、これは言わないでおこう。


「おじさん、伝説の槍はいつ頃出そう?」

「うーん、奥飛騨のボスが毒槍ドロップしたような。でも800層だから当分先だな」

「毒槍、私にぴったりじゃん」


 そ、そうなのか、知らんけど。

 800層ともなると魔境だ。相当レベルの底上げが必要だ。

 不死王も800だけど、あいつだってまともに戦うと強いんだからな。


「さて、そろそろ帰ろうぜ」


 残りのドロップ品を拾いダンジョンからさようなら。

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